#2 生贄

(いつの頃からだろうか、数百年にはなるだろうか。

私の下へ若い娘が生贄として捧げられるようになったのは。)


魔王はゆったりと玉座に腰掛け、記憶を辿り思い出そうとしていた。


漆黒のスーツを身に纏い、黒い大きなマントで覆われている。

ワインレッドのシャツがどす黒い血を連想させる。


赤い目は、赤い事がわからないほど闇色をしており、

絶大的な魔力を擁する事がわかる。


天界と魔界の絶え間ない争いのせいで、人間界にも少しずつ影響が出始め、

天変地異と呼ばれるものが度々起こるようになった。


魔族の仕業だと決めてかかる人族は、魔王に生贄を捧げるようになったのだ。


(人間は変わらぬな。何か悪い事が起こると魔族のせい。

そしてそれを宥なだめるために若い娘を生贄に捧げる。)


魔族は人族の憎しみや悲しみ、恐れ、妬み嫉み・・・

そういったドロドロした負の感情を糧としている。


そのため古の時より、魔族を恐怖の対象と捉える者が

人族の中では圧倒的多数を占めている。


しかし、魔族は人族の負の感情無くしてはその存在を維持できないため、

実際は天変地異などを起こしてまで人族の大量殺戮を考えるような愚か者はいない。


むしろ、古の時より因縁のある天族を憎む者の方が多い。


(少数の者が憑りつかれたように、享楽のため人族に多少の危害を加えてはいるようだが。。。)


そして今また、新たに若い娘が生贄として捧げられたのだ。

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