元最強魔術師の別荘開拓スローライフ

社屋

出会いの話

プロローグ 退役、そして

「ハザード先生!」

黒いローブに身を包んだ男の元に一人の青年がやってくる。

シャキとしたスーツを身に着けた青年は息も絶え絶えに酸素を求めて喘いでいる。

「どうした?メイザース」

黒いローブの、ハザードと呼ばれた男は青年の方に体を向け首を下に傾ける。

「風の噂でハザード先生が退役なさると聞いたのですが...これは本当なのでしょうか?」

ローブの男、ハザードはメイザースをじっと見つめて、やがて口を開く。

「...ああ、本当だ」

「それは予備役に移動なさると、そういうことなのでしょうか?」

「いいや、私はもう軍務から一切離れる、予備役含めて軍務に携わることはもうないだろう。」

「何故です?確かに...確かに先生は現場で働く軍人としてはもう十分に高齢です。」

「ですがあなた持つ知識と技術は本物です。」

「研究職に移ったりとか、そういうこともなさらないんですか?」

「ああ」

「理由をお聞かせ願えますか?」

「簡単な話です、年寄りは若い人たちに道を譲っていくものなんですよ。」

「私ももうすぐ還暦です。」

「いくら知識と技術があるからと言っても、こんな年寄りもう邪魔なだけでしょうから。」

「それに...」

「それに?」

「安心して後任を任せられる優秀な部下もいますしね。」

「それって...」

ローブから見える顔を崩して、ハザードはメイザースに微笑む

「勿論、あなたの事ですよ。」

「でも...私はあなたほど技術も知識もありません...」

「貴方は自分のことを低く見積もりすぎですよ、悪い癖です。」

「でも...」

「ほかならぬ私が言ってるんですから、大丈夫です。」

「分かりました...ハザード先生は、退役されたらなにをされるんでしょうか?」

「実はそれが決まってなくてね、一応、私の祖父が持っていた別荘で余生を過ごそうと思ってます。」

「そうですか...ハザード先生、今までありがとうございました。」

「気が早いですよ、あと泣きそうな顔しないでください、辞めずらいでしょう?」

「すいません。」

「...期待してますよ、メイザース。」

その後一週間ほど後にハザードは軍隊を退役し、日々激しい戦いと過酷な研究が繰り広げられる軍務とは一転、豊かな自然と穏やかな日差しが包み込む自然の中の別荘へと移ることになった。

この物語は軍務を離れ、人里離れた広大な別荘へと移り住んだ魔術師ハザードが、魔術の力を借りてスローライフを送る物語である。

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