木と君と僕

カミトスミ

大國魂神社で娘の七五三 大木の記憶

忘れもしない。

でも、勘違いかもしれない。

頭の中の記憶の片隅に、どこか懐かしい、爽やかな風が吹いていた。

俺はようやくたどり着いたのだろうか。

そう思えた瞬間に出会えた。


上京して20年。

東京で家族をもち、いつの間にか都会人みたいな雰囲気にも染まり、ただ、根底にある田舎者気質は抜けきらない、そんな中途半端な親父をしている。

子ども二人にも恵まれ、なんとか仕事も続けられ、家をもち、車にも乗り、一端の大黒柱と呼ばれもする。みんな精一杯、なんとかギリギリで生き抜いているが、戦後世代の父母や、祖父母からすると、てんで余裕な世の中かもしれないが。幸せというものは、いつの時代も簡単には手に入らないのかもしれない。


娘の七五三。大國魂神社はまさに東京ど真ん中。普段入れないとされている奥の社でまとめて払われ、特別感もありながらも、まとめて簡単に済まされてしまう、ザ東京スタイル。

写真撮影も終え、帰り際に鳥居前にある大木が目に入った。いつの時代も人々を見守ってきてくれたのだろう、と、手を付け感謝を伝えた。

妻と出会え、子ども達にも出会え、前から知っていたかのような今のこの瞬間というものを感じた。大木は何も言わない。勝手に感じたから勘違いかもしれない。

今の家族は前世も家族でこれからも家族かもしれない。

今の家族は、3万年を超えてようやく巡り会えた奇跡かもしれない。

今の家族はこの地で偶然が生んだ必然かもしれない。

幸せとは自分自身の心が決めるもの。

今に感謝して生きたい。

大木から、そんな当たり前の事を伝えられた。

また、前を向いて、歩きだした。





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