2022/12/16 第16話
映画部の部室はあっという間に先生を囲んで、和気あいあいと話声が飛び交うようになった。
「てかファルコンいいな~! 先生めちゃイケメンじゃん! 永遠に見てられる……」
と言うのは
反対に物静かでカチッとした雰囲気なのが
「大寅間くんと馬刷間さんが、今のうちの看板って感じだよね」
南井くんがそう言う通り、彼にも何かしら受賞歴があるようだ。そもそも部室の棚には、いくつもの盾やトロフィーが並んでいる。
「うちの映画部ってけっこう有名なんだよね~。OBに有名な監督とかいるんだっけ~?」
ファルコンが口を挟む。部長が「まぁ、結構長いことやってるしね」と言った。
「本当に残念だなぁ。馬刷間さん、これからすごいことになる人だと思ってたのに」
南井くんが腕組みをしてため息をついた。大寅間くんも浮かない顔で「ですね」と応える。
「まさかあんな才能があるとは思ってなかったっすねー」
洞田くんが言う。「いや、来美さんってどっちかっていうと俳優寄りだったじゃないすか? まさか脚本で賞とるとはな~」
「作品自体はまだ荒い感じだったけど、それでも賞とったのはすごいことだよね」
南井くんが言うと、ほかの部員たちも一様にうなずいた。どうもアイディア勝ちというか、ストーリーの秀逸な展開がウケたようだ。感染症の流行などがあって撮影はまだのようだが、それだけに部員たちには馬刷間さんの死が悔やまれるらしい。
「本当に残念だよ。新作とかどんどん書いてほしかったんだけどなぁ」
「部長も路線変えたらすごいとこ行くと思うんすけどね……」
「いや、僕は撮りたいものを撮る。僕にとってはそれが映画と真剣に向き合うということなんだ」
南井くんが真面目な顔でそう言った。きっとすごいZ級映画を撮っているのだろう……。
ともかく、こんな具合で歓談しながら、先生は馬刷間さんをはじめとする部員たちの情報を聞き出していった。過去の作品集を借り出し、「必要だったらいつでも来てください!」と皆の連絡先まで手に入れてしまったのだから恐れ入る。
「てか先生、学内で祈祷とかするんすか? だったら声かけてくださいよ~」
洞田くんが目を輝かせて尋ねる。先生は「まぁ、もう少し馬刷間さんのことを調べてからかな」と答えた。
「どうも馬刷間さんは、私に自分のことを知ってほしいようだからね。それを疎かにしてお祓いなんかしても、彼女のためにはならないと思うんだ」
「ふふっ、なんかわかる」
青井さんがぼそりと呟いた。「来美ちゃん、自己顕示欲めちゃ強だったもんね」
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