2022/12/11 第11話

「えっ、マジすか? マジで勢いっていうか成り行きっていうか、その」

 事務所に戻った先生を問い詰めると、先生は、

「だって、あのままだと俺が頼りないせいで人死んだみたいな話になりそうじゃん?」

 と言ってデスクチェアにふんぞり返った。

「実際インチキじゃないすか……」

「バレなきゃいいんだよ! まぁ、何とかなるだろ」

「強気だなぁ……」

「柳が弱気すぎるだけだ」

 まぁこのくらいの図太いメンタルがないと、インチキ霊能力者なんてやってられないのかもしれない。正直うらやましい。

「で、どうするんですか?」

「まぁ、聞き込みでもするかな。大学名はわかってるだろ」

「はぁ、国際院振園査大学こくさいいんふるえんさだいがくですよね。確か都内の私立大学じゃなかったかな」

「それそれ。金持ちが行く感じのとこだったな、うーん……」

 先生はスマートフォンを取り出してなにやらぽちぽちやっている。と思ったら「明日の午後一時半、院振大行くぞ」と言った。

「はい?」

「話を聞けそうな在学生がいたから、会う約束を取りつけた」

「すげぇ! よくいましたねそんな知り合い……」

 さすがコミュ力モンスターである。

「そういうわけでこの件は明日まで保留な。柳、応接室の掃除しとけ」

 で、先生は別の案件に取り掛かってしまった。年末は霊能力者も忙しいのだ。インチキだけど。


 というわけで翌日の午後一時半前、先生とおれは国際院振園査大学のキャンパスを訪れた。在学生でもない奴がホイホイ入れるものなのだろうか……と心配したが、カフェテリアや構内の広場なんかは近隣の人々にも開放されているらしい。とはいえ、

(うおお、目立つな……)

 おれは肩身が狭かった。おれではなく先生が目立っているのだが、一緒に歩いているのでついでに視線を浴びることになる。仕事着の着物だと悪目立ちするというので今日の先生は普通に洋服だが、結局何を着ていても他人が振り返るレベルのイケメンには違いない。目立つ。一方先生は安定の鋼のメンタルなので、周囲のリアクションは気にせずスタスタ歩いていく。

 待ち合わせ場所だというカフェテリアに行くと、窓際のテーブルにいた女の子が立ち上がってこっちに手を振った。

「せんせ~! うぇ~い!」

「おっいたいた。ファルコ~ン」

 うわ、マジで知り合いがいた。おれにも見覚えのある顔だ。

 

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