第20握利 つばさおねえちゃんは今でも優しかった

「マジかよ……」


 龍平りゅうべえは項垂れた。

 初恋の相手“つばさおねえちゃん”が、あの一門いちもん椿つばだとすると、色々まずいからだ。

 最初の「クソジジイ」を含む、自分の言動が。


「だぁー! くそっ!」


 龍平は考えるより先に体が動く人間だ。

 “つばさおねえちゃん”が椿佐だとわかった今、確認したいことがある。だから、アルバムを手にして、玄関に行きスニーカーを履くと、部屋を飛び出した。














 十六時過ぎの『にぎめし』。


立宮たてみやじゃないか、息を切らせてどうしたんだい?」


 暖簾を中に仕舞おうとしている椿佐の所に龍平がやってきた。


「はぁ、はぁ……。聞きてぇことがあんだけど」


「聞きたいこと? ああ、何だい」


「……はぁー」


 龍平は大きく深呼吸した。


「お前は、あの、“つばさおねえちゃん”なのか?」


 そして、アルバムを開き、幼い自分を叱る椿佐の写真を見せた。


「ああ、そうだけど」


「何で早く言わねーんだよ!」


「いや、あんたもわかってると思ったから」


「わかるわけねーだろ! これがこれになるなんて!」


 龍平はアルバムの写真を指すと、椿佐を指した。


「人に指差しちゃダメだって、園長先生が言ってただろ?」


「そういう場合じゃねー! じゃあお前は! いつから俺がこいつだと気づいていた!」


「え? 最初にみちさんと一緒に来た時」


「本当に最初じゃねーか! はぁー……」


 龍平は坊主頭をがしがしと搔いた。


「……心の中でバカにしてたんだろ」


「え?」


「オレがお前をジジイ呼びして、気づいていないことを」


「バカにしてるわけないじゃないか。バカにしていたら」


 椿佐はまえけのポケットに手を入れると。


「まだ大事に取っていないさ」


 “りゅうくん”が作ってくれたピンクのシュシュを取り出し、嬉しそうに笑った。


「なっ! そんなもん捨てろよな!」


「捨てるわけないじゃないか。時々使わせてもらってるよ。体を動かして汗をかきそうな時とか」


「はぁー……」


 龍平はまた豪快に頭をがしがしと搔き。


「とにかく、改めて、色々と悪かった」


 深々と頭を下げた。


「また“つばさおねえちゃん”って呼んでくれないのかい?」


「誰が呼ぶか!」


「ははっ。しかし、“りゅうくん”はでっかくなったなー」


「その呼び方やめろ!」


「はははっ」



−−−−−−


 あとがき。


 久しぶりの更新ですいません! そして、またしてもおにぎり出てこないですいません!


 次回、新章にて、ついにあの人が出てきます。


 よければ、フォローなど、ポチしてくださると、今度こそ、椿佐がおにぎりを握るかもしれません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る