ep.5 宮崎さんと街角探検隊①


 初恋というのは実に儚いものだ。

 一般的に初恋の人とゴールインする確率は1%程しかなく、思い出として語らうような出来事なのではないだろうか。

 少年少女の時代の初恋を大人になって思い出し、”あの子のこういうところが好きだったんだよな”とか、”こういう振られ方をしたんだよな”とか、思い出話の定番としてよく話題に挙がるのではないだろうか。


 拝啓大人になった僕へ、僕の初恋はまだ覚えてますか?

 いや、きっと忘れてないんでしょうね。

 だって、こんなにも刺激的でドッカーーン!!って感じの恋をしちゃったんだから。



―――――


「宮崎さん、君にはいろいろと話さないといけない秘密があるんだ。」


 僕は高鳴る胸の鼓動のまま、そう切り出した。

 宮崎さんにこの秘密を隠しておくことは、もうできない。


「私も、坂東君に隠してること、あります。お互いに何か人には言えない事情があるんですよね。」


 そういえばそうだ。

 宮崎さんはあんな爆風を受けた後なのに、傷一つついていないどころか、制服にホコリ一つとてついていないようだった。


「とりあえず宮崎さんには来てほしいところがあるんだ。僕の秘密について詳しい人がいるところなんだけど・・・・」


バタン!―

 僕が宮崎さんにそう提案をしていた時に、勢いよく図書館の扉が開く音がした。

 扉の先には、おそらく爆発音を聞いて急いで来たのであろう、汗だくの森川先生がそこに立っていた。


「二人とも無事か!さっき図書館でクッソデカい爆発音が聞こえたぞ!」


 森川先生は、僕らの方を見たのち、周囲の様子をひとしきり眺めて、いったい何が起こったのか整理がつかない様子でいた。

 

 宮崎さんは森川先生の姿を捉えたのち、慌てた様子になって、森川先生の前に向かって手で拳銃のポーズを作った。


「わ、忘れろビーーーーム!!!」


!!―

 彼女の指先から電撃のようなビームが発せられ、森川先生に直撃した。


「うびびびびびび!!!!」


 森川先生はその場に倒れ込んだ。


 そしてすぐさま、宮崎さんは手のひらを大きな穴の開いた壁へと向ける。

 すると、まるで念力でも働いているかのように壁が元の形へと戻っていく。

 続けて同じように図書館中の本棚や床に対しても念力を働かせて修理させていった。



 目の前で繰り広げられる光景に僕はただ唖然とした。


「あの、宮崎さんの秘密っていうのはその・・・」


「はい、実は私、超能力が使えるんです。」


「え、えぇーーーーー!!!!」




 僕がそう驚いた声を上げると、その声で森川先生が目を覚ましたようだった。


「あれ、なんで俺はここに?あ、二人とも、仕事は順調?」


「は、はい、今ちょうど終わったところなんですよ。」


 宮崎さんは少し焦った様子だったが、ごまかすようにそう言った。


「そうかそうか、それじゃ今日はもう帰ってもらって大丈夫だぞ。二人ともお疲れさん、また明日な。」


 森川先生はそういって図書館から出ていった。

 本当に何も覚えていないような様子だった。

 彼女が”忘れろビーム”って言いながら発した光線の影響を受けているのは疑いようがなかったし、その内容についても察することができた。


・・・・・・


 先ほどまでの喧騒から、今度は静寂の間が訪れた。

 いろいろなことが一斉に起こったことで、まず何から話すべきなのか整理がつかず、お互いに戸惑ってしまう。


 


 宮崎さんと二人きりだという実感、宮崎さんの下着、そしてキスしたあの瞬間と凛々しい表情などなどが徐々に思い出されてきて、ありえないくらい緊張してきた。

 落ち着け、僕が緊張してどうするんだよ!

 宮崎さんだってなんで爆発したのかとか僕が何者なのかとか意味わからないはずだろ!

 ここは僕がリードしなきゃいけない場面のはずだ。



「宮崎さん、とりあえず帰りましょっか。」


「は、はい。」


 考えた結果、とりあえず今日は帰ることにした。

 帰り道で琴姫のいる神社へと寄り道することを彼女にも伝え、了承してもらった。

 

 宮崎さんは徒歩通学だそうで、途中までは僕と同じ道を通るそうだ。


 帰路で宮崎さんから僕の秘密について聞かれたが、自分の口で説明するのがどうも恥ずかしいので、その義務は琴姫に丸投げすることにした。


 僕からも宮崎さんに一つ質問をした。


「宮崎さんはどうして超能力が使えるの?」


 宮崎さんは、少し黙った後、照れながら答え始めた。


「えーっと、説明するのは恥ずかしいんですけど、聞きたいですか?」


 超能力を使える理由が恥ずかしい?

 はっ!もしかして僕、宮崎さんにHなことを聞いてしまったのか!?

 ”Hなことをして魔力を補充する”なんて設定のバトル漫画はよくある。

 宮崎さんもそう・・なのか?


 僕は男としてそんなことを答えさせてもいいのか!?

 ましてや好きな人に!

 いや、ダメだろ!?


 僕の心は揺れ動いていた。

 悪魔『宮崎さんはおそらく僕のことを好きなはずだから気にしなくてもいいぞ。』

 天使『だめだぞ。そうだとしても、紳士として女の子を恥ずかしめるようなことはやめろ。』

 悪魔『そもそもHなことだって決めつけてる雄輔が童貞思考すぐなんじゃね。』

 天使『確かにそれはそうだな。』

 雄輔『やかましいわ』


 僕は一番無難な返答をした。

「いや、じゃあ遠慮しとくよ。また話せるタイミングになったら話してね。」


「は、はい。そうですか。」


 そうこう会話をしながら歩いていると、神社に着いた。

 そろそろ本題について話し合うときが来たようだ。



  

 

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ドッカーーーン!!って感じの恋物語 晒音なつ @sarashine

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