第22話 突然の実戦

相変わらずグレイス団長にぼこぼこにされる日々を送っている最中、いつも来る商隊の人たちがやけに慌てて孤児院に駆け込んできた。俺たちは不思議に思い、全員訓練を止めて孤児院へと戻る。


孤児院前の広場に全員が集まると、じいちゃんと商隊の責任者がちょうど話をしているところだった。


「こちらに商隊で向かっている時にいきなり神殿騎士が襲ってきたんだ。数は二十程度、今は俺たちの護衛が足止めをしているが直に抜かれるだろう。ここには護衛の傭兵がいたはずだろう。早く応援に向かわせてくれないか?」


「応援は出すが、全員を向かわせるのは無理だ。入れ違いにこちらに神殿騎士が来たら全滅しかねん。半数の十名を向かわせる。グレイス団長話は聞いていたな。早急に人員を選択して護衛の応援に向かってくれないか?」


「分かりました。主人の命とあれば従います。魔法部隊は残れ、移動しながらの戦闘には不向きだ。あとは盾持ちも待機、ここの防衛を任せる。それで副団長をリーダーにして向かってくれ。嫌な予感がするから俺はここに残る」


「了解」


そう言って十名の傭兵達が商隊が進んできた道を走っていった。


途端に執事のセバスさんが商隊のメンバーである一人の首筋にナイフを当てていた。


「殺気が隠しきれていませんよ。化けの皮を剥いだらいかがですか?」


そう声をかけるとセバスさんが男の顔にそってナイフを走らせる。顔の皮が切れたと思ったらそれはマスクだった。


セバスさんに押さえられた男が必死で暴れる中、いつも見かける商隊の面々のうち三人がじいちゃんに向かって走っていく。


一人はグレイス団長が木剣で切り伏せ意識を刈り取った。


二人目は傭兵の盾役の人が間に入りこみ、その隙に魔法使いの人が土魔法で拘束した。


三人目は誰も動けずにじいちゃんに到達しようとしていたところで、足元が泥になりこけてしまった。その隙に俺とアインとカインの木剣で殴り掛かり意識を奪い取る。


水魔法を使ったのはここにきて間もない少女でじいちゃんの陰で怯えていた。じいちゃんは驚いて腰が抜けたのか動けないでいる。


少女はメイド長のクリスに抱き着き大声で泣いていた。


グレイス団長は商隊のリーダーに詰め寄り、じいちゃんを襲ったメンバーについて情報を求める。


「わ、私は何も知らない。町に入ると別々に商売をするからいつ入れ替わったのかも分からないんだ。行動に不審な点も見当たらなかったから同じ人物だと思って連れてきたんだ」


じいちゃんの鑑定の結果、諜報、暗殺に関するスキルを持った人物だということが分かった。とりあえずは孤児院で作った縄で笹巻にしておいた。


嫌な予感が当たったグレイス団長は応援に向かった傭兵の団員たちの後を大量の縄を持って追いかけていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る