第2話 田舎
家に帰りじいちゃんが最初にしたことは爵位の返納であった。これには宰相様も驚いていたが、継がせようとしていた孫の神技が合成だったという一言を聞くと潔く返納は受理された。
「じいちゃん。これからどうするの?」
「爵位を返納したから貴族街にはおられんのぅ。何もかも売って田舎で土地でも買おうかの」
そうたやすくいったかと思うと本当に屋敷や調度品を売り払い、屋敷の人たちにも退職手当を出して身軽になった。ただ執事とメイド長、庭師だけは受け取らずじいちゃんについていくと譲らなかった。
じいちゃんは聖王国の首都を出ると、東に向かって馬車を走らせる。馭者をしているのは庭師のジョーンズであったが・・・、
「じいちゃん。何で東に向かうの?」
「東は他の国と面しておらんからの。戦争の心配が少ないのじゃよ。その分よそ者も少ないからルークにはつらい目に会わせるかもしれんがの」
聖王国では神技絶対主義であり、神技の位が高いほど何もかも優遇される。ルークの得た合成と言う神技は一般職よりも下の位のため生活に困るレベルなのだ。
この話を聞いてルークはじいちゃんに感謝した。じいちゃんがいなければ死んでいたであろうことがなんとなくわかってしまったからだ。
「東に行くのはなんとなくわかったけれど何をするの?」
「そうじゃのぅ。金ならあるし孤児院でもやってみるか。困った時は宰相にでも連絡すれば助かるじゃろ」
何とも計画性がなく、他人だよりな言葉を頂いたが執事のセバスとメイド長のクリスは頷いていた。
七日の時間をひたすら東に進んだところでとある村にたどり着いた。馬車は貴族だったころの物を使っていたため、村長に歓待の準備をされたが今は一般人だと説明して準備は中止された。
「この村の離れに開いている土地はないかのぅ?」
じいちゃんが村長に尋ねると、孤児院をしていた場所が一件あるという。空いている建物はそれだけだという。
「ならその孤児院を売って欲しいのじゃがいくら必要かのぅ」
そうじいちゃんが言うと村長はきょとんとした表情となる。いつまでたっても現実に戻ってこない村長へじいちゃんは金貨一枚を握らせてとりあえず一泊してみることとなった。
孤児院へ到着すると床は抜けそうだし天井は落ちそうで所々穴が開いているといった丈太であった。
「これはルークの修行にもってこいの物件じゃのう」
じいちゃんの発言に驚いた俺はじいちゃんの顔をじっと見つめる。
「大丈夫じゃ。金ならある。失敗しても建材さえあれば何度でも挑戦すればええ」
その言葉には感動したが先行きには不安しかなかった。
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