第6話 ~自動音声案内~

2022年11月29日の日記


習い事を終えて子供たちを公園に連れて行った。もう辺り一面が落ち葉の絨毯になっていた。見事なくらい葉っぱで地面を覆い尽くしている。大きなもみの木がある。赤色、朱色、橙色の葉が色鮮やかだ。イチョウの木もまっ黄色で光が当たっている部分は黄金色に輝いている。そんな公園には沢山の子供たちが走り回ったり、遊具でせわしなく遊んでいる。何処かの有名な画家が描きそうな風景画の中にいるようだった。他の家族のパパ、ママが子供たちを遊ばせに来ていた。どのパパ、ママも楽しそうに子供たちの遊んでいる様子を仲睦まじげに見ている。私の妻は今日の夕方から一人で美容院に行くことになっていた。最近はいつも二人別行動。週末二人そろって何処かに出かける事は皆無になっていた。今年の夏に寝室で妻のラインをこっそり覗いた。やり取りをしていた男とはいまだに連絡を取っているのだろうか。ふと妻の顔を思い出した。

公園での遊びを終えて帰る。その時、子供たちに聞いてみた。「パパさあ、悩みが多くてさ。どうやったら悩まなくていいと思う?」。すると幼稚園年長の次男が無邪気に「考えなければいいんだよ」と誇らしげに言った。いつの間にかこんな事が言えるようになっていたのかと感心した。

家に帰ると郵便配達の不在連絡票がポストに入っていた。昨日話を聞いていた両親からの現金書留だ。この数か月、両親から生活援助を受けている。不在連絡票を見ながら再配達をするために音声ガイダンスに従って電話機の数字のボタンを押していると、配達日の番号を打ち間違えてしまった。1126と打つところを1129と打ち間違えてしまった。音声ガイダンスは次の配達時間に進んでしまっている。配達日に戻って打ち直したいが戻れない。戻り方が分からない。イライラしてきた。妻が私の所へやってきた。イライラしている私に気付いた様子で「私が代わりにやるよ」と言って、受話器を置き、また最初から音声ガイダンスに従って再配達の手配をしてくれた。私はこの手の音声ガイダンスのもどかしさが一番腹が立つ。先ほども受話器を叩きつけそうになった。数か月前だったら確実にそうしてた。しかし、精神科を変え薬が変わったせいか、認知行動療法の本を読んでイライラの対処法を勉強して実行できているせいか、自分を客観視できるようになっていた。先ほどもイライラをしたが「まずい」と思い、このままでは妻の前で受話器を叩きつける事になると予防本能が働いて妻にやってもらった。正しい判断だった。これは私の中では進歩なのだ。以前の私なら変な責任感が働き最後まで自分でやろうとした。結果、イライラが消えずにイライラを何処かにぶつけていた。しかし、問題は会社だ。会社でも同じような事が起きる。以前の職場でも納期を確認するために依頼している通関会社に電話しても、自動音声案内が流れ、なかなか担当者に繋がらずイライラして受話器を投げつけそうになった。さすがに会社では受話器を叩きつける事はできないから我慢をしたが、音声ガイダンスが苦痛でしょうがない。私はイライラをすぐに抑える頓服薬のリスペリドンを飲んだ。

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