ギャルな許嫁は俺のことが大嫌い…?

立花レイ

プロローグ ギャルな許嫁は俺のことが大嫌い

 ブーっと響くバイブ音で目が覚めるいつも通りの朝。

 まだ寝ていたいと渦巻く思考を遮断するようにムリヤリ体を起こす。


 「あ~~眠い……」


 目をこすりながらカーテンを開けば、まだ目覚めきっていない体には十分すぎる程の旭光きょっこうが一直線に射し、引きずりおろされるように意識が明瞭化していく。

 

 ぐーっと伸びをしながら階段をおり、洗面所へと向かうと、普段は点いていない灯りが光行としている。


  「ゲッ、バカ崎もう起きてきたの。せっかく早く起きたのに最悪」


  鏡越しで俺の気配を察知した途端、眉間みけんしわをよせ、あからさまに嫌そうな表情を見せるのは同じ高校の校章を見に纏う女子高生。電気で反射した透明感のあるブロンド色の髪を丁寧に櫛で梳かしている行為とは裏腹に、がさつな言葉で挨拶をしてくる。

 洗面所には化粧品が至る所に散乱しており、もはや俺が使えるスペースなど何処にもなく、出ていけと言われているようだった。

 どうしたらこんな汚くなるのかと、思わず口から零れてしまいそうになったが、今の最悪な関係を考えると理性が効いた。


 「俺はいつもこの時間に起きてるんだ」


 「はいはいエライエライ。でも今日は私の方が早いんだからはやくあっちいって」


 「……」


 彼女の態度はいつもこうだ。事あるごとに文句ばかり垂れ、主導権を握ろうとしてくる。当然、損するのは毎回俺で、気遣いを悉く罵詈雑言で返される度に反吐が出そうになる。


 ついこの間までは、自由気ままな生活が送れていたというのに、まるで世界線が変わってしまったのではないかと今でも疑ってしまうくらいの飛び跳ね様だ。


 どうしてこんなワガママなギャルと同棲しなきゃいけないんだ。どうせするならが良かった。


 頭に血が上る度に、そう考えてしまう。


 だが実際、願望交じりの理想を考えたところで時間の無駄なのは当たり前の事。いくら足掻こうが、粘ろうがこの現実から目を背けることなど不可能と言える。俺はタイムリーパーでもなんでもない。今考えるべきことはそんな生産性のないことじゃない。


 今後、どうこのかだ。


 口うるさいギャルなんかと結婚してたまるかってんだ。


 何としてでも許嫁解消してやる。

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