第26話⁂午前零時⁂



 

 オードリ姫に化けたダイアナ妃に夢中になるトム王子は、余命いくばくも無いと言われていたオードリ姫が、永らえられている事が嬉しくて仕方ない。


「オードリ姫、地上でお目に掛かっていたあの頃は、死期が迫っていて……いつも嘆いておられたが、それでも…よく永らえることが出来ましたね?良く効く新薬でも飲んでおいでなのか?」


「そうなのです。周りに勧められて医術師や祈禱師、更には占い師に診てもらい、特効薬や健康になる道しるべを教わり、永らえる事が出来ました。あぁ~それでも……私も……トム王子と結婚すれば……この海底都市で生活しなくてはなりません……でも……海底都市でしばらく生活を送ってみないと……もしかして……容態が急変する事だってありますから?……だから…トム王子と結婚したいのは山々ですが……?私……私怖い!」


「オードリ姫僕に任せてください。姫の為に海底都市一環境の優れた場所をご用意させて頂きます。嗚呼……それから……他に必要なものを言ってください」


「本当に良いのですか?……申し訳なくて……?」


「僕はオードリ姫の為だったらなんだってします」


「あら~本当に?……じゃ~……きれいな空気の広~い土地で休養がしたいわ。……それから……ホ-ムシックになるので、地上の星だと分る、満点の星が海底に映る場所を探して欲しい……」等々


 この様な会話からも分かる通り、愛するオードリ姫の為なら、このネバーランド王国を全てオードリ姫に譲っても惜しくない、そんな心境のトム王子。こうしてチビリチビリと、オードリ姫名義の海底都市が増えて行った。


 ◆▽◆

 ある日の事だ。

 オードリ姫に夢中のトム王子は、日に日にオードリ姫の住む夢のような可愛いお城オードリ城に、長居をする機会が増えている。その為……王子としての公務にも支障が出てきている。


 トム王子は、オードリ姫に身も心も奪われ完全に溺れ切って、一分一秒たりとも離れられない、そんな心境なのだ。


 それでも……二人の間には重要な約束が交わされていた。

 ……その重要な約束とは、午前零時までには絶対にこのお城オードリ城を去る事。

 

 あれ~?どこかで聞いたフレ-ズ。そうそうシンデレラ……?

 まぁ~そこは……ご勘弁を!😜


 だが……愛するオードリ姫との時間は、あっという間に過ぎて行く。


「オードリ姫:*:・'°☆💖ブチュ💋いつ……?いつ?結婚出来るのだ?💛💛💛アアア嗚呼……💘😚*・゚゚💕アアア、愛しておるブッチュ💋」


「嗚呼……王子様……:*:・'°☆💖わたくしだって~💛💛ブッチュ💋うっふ~ん💋もう少し💋💋もう少し💋💋💋お待ちください*:・'°☆」


 トム王子はいつものように、オードリ姫と幸せな時間を過ごし、時の経つのも忘れてしまった。

「ああああああ……大変だ!もう直ぐ……もう直ぐ……午前零時だ!」


  慌ててオードリ城を出て、待たせてあったサメに乗り家路を急いだ。

 だが……その時ふっと悪魔の囁きが・・・・⁈


(アアア嗚呼アアア嗚呼……俺は……こんな事……我慢ならぬ!何故愛するオードリ姫と一夜を共に出来ないのだ!……『重要な約束、午前零時までには絶対にこのお城を去る事』何だよ……この約束……意味が分からない?……『午前零時までには絶対にオードリ城を去る約束』これって何?……そうだ……!こっそりオードリ城に戻ってその理由を探ってみよう?)


 こうしてオードリ城に戻ったトム王子は、裏手の門からこっそり城の内部に侵入

した。

 そして…更に……いつもオードリ姫と過ごす、応接室に忍び込んだ。だが、変わった様子は見受けられない。


 更には…二階の寝室に向かった。

 そして…早速、忍び足で寝室の扉を開けた。


 こっそりベッドに近付き、愛するオードリ姫を一目見ようとベッドに近付くと、何やら……一瞬……月明かりに照らされたカーテンが…ゆらゆら ゆらゆら…揺れて……怪しい……不気味な……黒い影が?


「ゲゲゲ! ゲゲゲゲ!!! ゲゲゲゲゲ!!!! だだだ ダダダダ ダダダダダダ 誰だ————ッ!オッお前は————ッ!」


 月明かりに揺れた、カーテン越しに現れたのは……何とも……不気味な……長~いしゃくれ顔に、ワシ鼻?カギ鼻の?……シワシワのシワだらけの……鋭い目をギラリと光らせた老婆が……黒い三角帽・黒マント姿で現れた。


「ウッフッフッフ~!ワッハッハッハ~!午前零時以降は、このオードリ城に立ち入ってはならぬと、あれほど言ったではないか?クックッホッホッホッホクック~!私の秘密を知ってしまった以上、このまま返す訳には行かぬ。ウッフッフッフ~!今……今……息の根を止めて楽にしてやるわ~!ワッハッハッハ~!ア~ッハッハッハッハ~!」

「キッキッキ キサマ!……貴様は誰だ———ッ!?オードリ姫……私の愛するオードリ姫をどこへやった!」


「ワッハッハッハ~!オードリ姫など……元々この城にはいない。フッフッフ~!お前が見ていたオードリ姫は、あれは……只のまやかし……透視で分かった事だが……どうも…私が思うに……あのオードリ姫とやらは、地上に生きているらしいが……もう命の灯火が消えそうだ。それでも……もう直ぐ……死んでしまうオードリ姫とやらと……かりそめにも……愛し合うことが出来ただけでも……私に感謝して貰わないと……ワッハッハッハ~!」


「一体どういう事だ?まやかしとは……それから……キサマが言っている、地上で生きているとは、どういう事だ。言って見ろ!」


「オードリ姫は、この星フラワーフェアリー星の地上を一つに束ねている凄腕のジョニー王のお妃様なのだ。だが……もう余命いくばくも無いと、私の透視では出て居る」


「エエエエエエ————ッ!結婚していたってどういう事?」

 残酷な真実を知って倒れ込むトム王子。


 今まであれだけ「愛している:*:・'°☆💖」と言っていたオードリ姫の言葉が、全てまやかしだったとは到底思えないトム王子。

 

 トム王子がはショックで打ちひしがれているが、一方の魔女はこの城の真実を知られてしまい恐ろしい目でトム王子を睨み付けている。

 

 トム王子は生きてこのオードリ城を出ることが出来るのか?


 更に…この魔女は一体何者なのか?












 

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