第25話⁂オードリ姫の真実⁂




 それでも…時の流れとは異なもので、少女だったオードリ姫も、十年も経てばもう少女では無く妖艶な一層光り輝く美しい女性に変貌を遂げていた。


 トム王子は、夢にまで見たオードリ姫にやっと会えた事で、この夢がまた壊れてしまわない内に、この夢が終わらない内に、あの時あれだけ後悔した言葉を言っておかないと、また……泡のように、この現実が弾けてしまいそうに思い、必死で自分の思いを告げた。


(あれだけ苦しい日々を送っていた事を思えば、どんな事も容易い事だ。たとえどんな結果が待っていようと、告白せずに終わるくらいなら死んだ方がマシだ)そんな思いで告白した。


「ウウウウッ(´;ω;`)ウッ…ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭!アアア嗚呼……アアア嗚呼……やっと会えてこんな嬉しい事はない……申す……申す……私は……私は……あの時、姫が余りにも美しいので……本当は……今日こそは……今日こそは告白しようと…いつも……思っていたが、勇気が無く告白できなかった。まさか……あんな今生の別れが待っていようなど……思いもしなかったのだ。ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭今なら言える。たとえどんな結果になろうとも、突然、私の前から居なくなる苦しみから思えば、たいした事ではない。オードリ姫……君を愛している。結婚して下さい!」


「まぁ~:*:・'°☆💖嬉しいお言葉💛💛💛わたくしだって……トム王子を心から💞愛しておりましてよ~💋」


「アアア嗚呼……💘😚*・゚゚💕アアア、愛しておるブッチュ💋」


「嗚呼……王子様……:*:・'°☆💖わたくしだってブッチュ💋」


 ◆▽◆

 あれだけネバーランド王国の為に尽力して、勇ましい限りの英雄だったトム王子なのだが、最近はまるで別人のように浮足立って、異常な光景が度々目撃されている。


 歩くたびに、城の鏡という鏡に、また城のガラスというガラスに、自分のお姿をお映しになり何やら……ぶつくさ独り言。


「嗚呼……美しい顔💛💛💛うっとりするわ~!ああああああああ!だが……?何だ~このお腹の出っ張りは~?これでは折角会えて結婚の約束まで交わした、ウッフッフッフ~!*:・'°☆💖愛するオードリ姫に嫌われてしまう……何とかしなくては……?お~い!美容、エステ担当の者はおらぬか~?」


「ハイ!トム王子ご用件は?」


「オオオ、オードリ姫に愛想を尽かされない様に、美しく……美しくなりたい」


「トム王子は、十分に魅力がおありです」


「そうか~?それでも~?オードリ姫がまた居なくなったら困る。……それでは尋ねるが、この海底都市で一番美しい王子は誰だ?」


「アクア王国の王様もなかなかのイケメンですが、もうご結婚されていますし……少し中年の域に達しておられるので……だから…トム王子の方が若い分イケメンです。でも……?マリン王国の王子キアヌ様が一番かと?」


「何々~?私が一番では無いのか?聞き捨てならぬ……嗚呼……それから……年は幾つだ!年は……」


「ハハ——ッ!誠に申し訳ありません。トム王子と言いたい所ですが……それが……どうも…マリン王国の王子は、千年に一人の逸材と言われるほど才知に富み、美しい王子だと聞いております。ですから……誰もが…一瞬で魅了され…どうも…特に女性は一瞬で…虜になってしまうらしいです。更には、若さみなぎる二十三歳との事です。それでも……トム王子の方が、容姿はキアヌ王子よりも劣るかも知れませんが、愛、愛情で結ばれているのであれば、オードリ姫がキアヌ王子に狂う事は無いと思います」


「まぁ~そう思うが?」


 ◆▽◆

 ある日トム王子が、いつものようにオードリ姫と海底を浮遊していると、前からお供を連れた今まで見た事も無いほどの、イケメンとすれ違いそうになった。


 すると……何とも精悍な、今まで有った事が無いほどのイケメンが、オードリ姫の美しさに魅了され、その精悍をつくろった顏の仮面が一瞬にしてはがれて、フヌケ顔に変わってしまった。

 ”デレ デレ デレ~”


 少しムッと来たトム王子だったが、でも……それで済んでいればトム王子も、美しい姫を従えて居れば、男たちの注目の的になるのは致し方のない事と、諦めが付くのだが、何と……その時…オードリ姫が、事も有ろうに、余りにもイケメン過ぎて、いけ好かないと思ってピリピリしているにも拘わらず、そのイケメンに話しかけたのだった。


「後から家に、遊びに行くから……」


 ”ギェッギェ————————ッ!”


 ナナ ナント・・・・????恐ろしい言葉!一番有って欲しくないこのシチュエ-ション、こんな恐ろしいまでのイケメンと、さも恋人同士の様な、馴れ馴れしい会話に完全にブチ切れた。


 そして…早速、あのイケメンを調べさせた。すると……ナント……その男こそ、この海底都市一のイケメンで、キアヌ王子だという事が判明した。


「エエエエエエ————ッ!一番恐れていた事が起こってしまった」


 この恋路の邪魔になる存在は抹殺するしかない。あれだけ勇敢で正義感に溢れた王子だったのに、まるで別人の悪魔が乗り移ったかのような人柄に様変わりしてしまった。


「ああああああ!あの憎きダイアナ妃の弟だな。あのダイアナ妃め!欲深い女だ。嫁いだアクア王国にもブラッド王を色仕掛けで散々領土を奪っておきながら、ダイアナ妃の生まれ育った、あの貧乏国で有名なマリン王国にも、ブラッド王におねだりしてネバーランド王国の重要な拠点を奪ったらしい?このままでは、あのマリン王国にオードリ姫と領土を奪われてしまう。嗚呼アアア嗚呼……許せぬ!許せぬ!許せぬ!あのキアヌ王子を殺せ!」



 ◆▽◆

 だが……オードリ姫が何故海底都市一のイケメンキアヌ王子に、さも馴れ馴れしく話しかけたのか?オードリ姫は本当は、とんでもないアバズレだったのだろうか?


 実は…オードリ姫はこの時はまだ存命で、ケビン王と地上の美しい森の宮殿で生活をしていた。という事はこのオードリ姫は誰なのか?


 ……それは……実は…何とも……恐ろしい事に……このオードリ姫は……まやかしのオードリ姫で、あの恐ろしいダイアナ妃が乗り移っていた。


 ダイアナ妃は類まれな透視能力や、色んな生き物に化ける事も出来る恐ろしい魔女だった。


 だから…家族である弟にまで魔力を使う必要が無い。

 他人にはオードリ姫に映っていたが、血の繋がった弟にまで無駄な魔力は使わなかったので弟キアヌ王子には、ありのままの姉ダイアナ妃に見えていた。

 

 だから…弟キアヌ王子も、気が抜けてフヌケズラになり、姉ダイアナ妃も姉弟非常に仲が良いので「後から家に、遊びに行くから……」と気楽に話してしまった。


 それを勘違いして、オードリ姫に近づく憎き男キアヌ王子と思ってしまった、トム王子。


 だが……話はまだ終わらない。

 オードリ姫に化けたダイアナ妃に、夢中になるが余りにトム王子には、悲惨な末路が……⁈


 








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