第4話 謁見?

「儂から説明しよう」


 これまで黙って俺達のやり取りを見守っていた王様が口を開く。短い言葉の中にも威厳を感じさせる声の持ち主だ。そして、スリスリと顎髭を摩りながら話を続ける。


「先ずは自己紹介から行うのが礼儀かのぉ。儂はフェザーリスト王国二十七代目国王であり、其の方の召喚を命じたワルセム・フォン・フェザーリストである。此度は此方の都合による一方的な案件ゆえ思う所もあるだろうが、是非とも最後まで話を聞いてもらった上で協力を請いたい」


 驚いた事に、王様はゆっくりと頭を下げる。

 周りの王侯貴族・兵士達も同様だ。


「先程の話に戻るが、確かに魔王討伐を目的として勇者を召喚した過去があるのは王家の記録でも確認済みじゃが、今回はそうではない。サイス、例の物を此処に持って参れ」


 そう言うと、目線を俺達から巨体の兵士へと移した。サイスと呼ばれた男は軽い会釈をした後、左手にある大きな扉から姿を消し、直ぐに大きな箱を持って帰ってきた。


「魔導具と呼ばれていた物じゃ」


 ほぅ……これが。何て言うか、その……

 昭和時代の電化製品みたいな……


「これは、以前に召喚された者がもたらした知識を元にして付与術師が作製した物じゃよ。三百年近くも前の話じゃがの」


 ほぅ……それは。何て言うか、その……

 物を大切にする事は素敵ですよ。

 って言うか、世界に名を馳せる日本製品をも吃驚させる耐久性ですな。


「この数年間で、次々と本来の効果は無くなり、魔導具とは呼べぬ只のガラクタになっておる。『形ある物は必ず壊れる』ではないが、寿命と考えるのが一般的じゃろ「ちょっ」うな」


「ちょっといいかな?何となく話の展開は読めたんだけど、それなら新しく作れば済む事でしょ?勇者召喚とかなら理解できるけど、付与術師なら別にこの世界には沢山いるんじゃないの?」


 お〜い、美咲さんや。

 王様のお話し中にカットインするのは問題行動ですよ。不敬罪に該当するかも? まぁ、この王様は良い人っぽいから大丈夫な気もするが。


「ん、付与術師ってレア職じゃない。わざわざ異世界から召喚なんて面倒な事しなくてもよい」


 お〜い、夏鈴さんや。

 君も自由に発言するんだね~。言ってる事は分かるけど、軽く俺をディスってるよ。自覚ある?


「そうじゃな。基本職である付与術師は少なくない人数が確認されておるし、実際に魔導具の作製にも携わってもらっておるの。但し、冷蔵庫等の日用品レベルの物に限られるのじゃがな」


 成程、何となく分かってしまった。

 俺は目の前にある箱に入っている地球儀の様な形をした魔導具に意識を向ける。


 『鑑定』


 心の内でそう念ずると、頭の中に様々な情報が流れ込んでくる。意外と簡単だな。

 そして、確信となった。


「王様、話に割り込む非礼をお詫びします」


 俺は一言断りを入れた上で話を続けた。


「属性の問題なのではありませんか?付与術師は沢山いても複数の属性持ちがいない。或いは、聖属性や空間属性の適性がないとか?」


 俺の言葉に王様を始め一同皆驚きの表情を隠せない。図星だったようだ。


「な、何故に分かったのじゃ?」

 

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この世界は勇者より付与術師をお求めです @yami1103

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