乱雑な方程式

岸亜里沙

乱雑な方程式

数日前、私は親友の佳苗かなえの家にお邪魔してきました。数ヶ月前に、無事に女の子を出産したので、そのお祝いを届けに行ったのです。

ちょうど予定が合ったので、友達の陽葵ひまりも一緒に行く事になり、私たちは電車で桜木町へと向かいました。


その道中、陽葵が私に話しかけてきました。


琴音ことね、宇宙人っていると思う?」


「えっ?」


「琴音の意見を聞かせてほしいな」


「さあ、正直分からないわ」

突然オカルト的な会話を振られ、私はビックリしました。


「じゃあさ、UFOは見たことある?」

陽葵はお構い無しに話しを続けます。


「いや、私は無いわ」


「私は何回かあるの。だからUFOは確実に存在してると思うの」

陽葵はハッキリと言いました。


「確かに私もUFOが存在しないって、言い切る事は出来ないけど・・・」

私はたじたじになりました。


「ちょっと前に、アメリカで空軍パイロットが撮影したUFOの映像を、アメリカ軍が正式に本物だと発表したしね」


「そうなの?」


「ええ。でも正直言うと、私は宇宙人に関してはいないと思ってるの」


「えっ?UFOって宇宙人の乗り物でしょ?」


「UFOイコール宇宙人と結び付けるのは、間違ってると思うの」


「じゃあ陽葵が考えるUFOって一体何?」


「乗り物よ」


「えっ、何?どういう事?宇宙人じゃなかったら誰が乗ってるの?地球人が乗ってるわけ?」


「その前に、この写真見て」

そう言うと陽葵は、自分のケータイを私に見せてきました。


その写真を見た時、私は驚きのあまり全身に鳥肌が立ちました。


そこには自撮りしたであろう陽葵が写っていたのですが、陽葵の後ろにボンヤリと、叫び声を上げるかのような女性の白い影が写っていたのです。


「何これ?心霊写真?」

私は尋ねました。


「そう!初めて撮れたの」

陽葵が嬉しそうに話すのに驚きました。怖がってはいないようで。


「陽葵は怖くないの?早く写真消しちゃいなよ」


「嫌よ。私、宇宙人はいないと思うけど、霊はいると思ってるの。なかなか姿を見せないだけで。幻のポケモンみたいな感じって思うの」


ポケモンと結びつける辺りは、ゲームフリークの陽葵らしいと思いました。

しかし、語っている内容が突拍子も無い上、仮に霊魂が存在するとするなら、霊魂をポケモンに例えるのは不謹慎かなと私は感じましたが、陽葵は更に話を続けました。


「でね、さっきの話だけど、きっとUFOって死者の霊魂を運ぶ乗り物なんじゃないかって、私思ったの!」


「えっ?!」


「高速で移動したり、レーダーに映らなかったりするでしょ?だからUFOって絶対、霊的なものなの。だって霊体になったからって空を飛べるって事はないと思うし、私たちみたいに移動するには、乗り物がどうしても必要よ」


陽葵の言い回しに、私は若干その話を信じかけました。

そして一瞬、明菜あきなの事が脳裏をよぎりました。もしかしたら明菜も、UFOに乗っていったのかも。そしてそのUFOに乗って、また私たちに会いに来てくれるのではないかと。

そんな事をふと考えました。


「陽葵の話、凄く興味深いわね。もし良かったらこの話、小説にしてもいいかしら?」

私は陽葵に尋ねました。


「琴音の小説読んだよ!『パンドラの薬』も『歪な波長』も良かったわ。私の話なんかで良ければ、いつでも使って」

陽葵はニコニコしながら答えました。


「でも佳苗には、さっきの心霊写真とか見せないでね。佳苗、そういうの苦手だから」


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乱雑な方程式 岸亜里沙 @kishiarisa

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