【漫才】cat.ショップ

キザなRye

cat.ショップ

「catショップ?ペットを売ってるお店かな。入ってみよ。」


カランカラン


『いらっしゃいませ〜!ただいま全品2割引セール実施中です!』

「すみません、ここって犬は買えないですかね。」

『買えないですね。ここcat.ショップなんで。』

「じゃあ、ネコ見せてもらってもいいですか?」

『生死確認したいんですか。お客さん、通ですね。』

「そんなにミクロな世界観の話ししてないよ。ペット買いたくて生死確認させるのはシュレディンガーもびっくりだよ。」

『だってお客さん、ネコを買いたいだなんておかしなこと言うから。』

「catショップでネコ買いたいは至極真っ当でしょ。」

『お客さん、ちゃんと看板見てくださいよ。』

「うわっ、catの後ろにピリオドついてるし。」

『ピリオドつけてもらってます。』

「ってことはまさか……catalyst(訳:触媒)の省略か!」

『左様でございます。cat.でやらせてもらってます。』

「こんな店、需要あるのか。」

『今だと鉄を入れた袋を作ってる会社からの需要が大半で……』

「使い捨てカイロな。使い捨てカイロの触媒は食塩とか水とか活性炭だろ。絶対そこまでの需要ないだろ!」

『お客さんにおすすめの触媒があるんですけど……』

「絶対ろくでもないの出てくるよ。」

『チーグラー・ナッタ触媒とかいかがでしょうか。』

「いや、すごいの出てくるな。カイロの触媒と同じ店とは思えん。」

『100g売らせてもらってます。』

「四塩化チタンと有機アルミニウム化合物が混合されてるから相当な値段だろ!」

『値引き前で6.02214076 円/1gです。』

「絶対安いよな。しかも小数点以下がおかしいくらいあるな。よく見るとアボガドロ定数になってるしな。」

『ご購入されますか。』

「安いし買ってやるよ。」

『ありがとうございます。お支払いは有効数字5桁でお願いします。』

「あれだけ桁述べといて使わないのかよ。」

『すみません。』

「しかも100gで602.21円ってなんだよ。2割引でも481.77円だよ。どうやって払うんだよ。」

『あっ、小数点以下は切り捨ててください。』

「厳密さが担保されてないな、この店。100gの質量の保証がなさそうだな。」

『うちの店では有効数字5桁の保証付きです。』

「値段で既に破られてるよ。」

『そんなこと言わないでくださいよ、今いるの文系なんですから。』

「よくここまで会話できてな、シュレディンガーのネコの返しとか。」

『マニュアル通りです。』

「マニュアルあるんだ。他にはどんなパターンのマニュアルがあるんだよ。」

『有効数字の保証が出来ていないのが露呈したときの対処法とか……』

「保証できてないこと前提でマニュアル作るなよ。ちなみにバレたらどうするんだ。」

『全力で話を逸らす。』

「マニュアルの意味なさすぎだろ。しかも逸らせてなかっただろ。他にはマニュアルに何が書いてあるんだ。」

『他には硫酸が手にかかったときの対処法とか水酸化ナトリウムの濃度の合わせ方とかpHメーターの使い方とか……』

「なんでマニュアルに実験をする上での注意が書かれてるんだよ。必要なさすぎるだろ。」

『バックヤードで触媒を作ってるんで。』

「あっ、ここで作ってるんだ……ここには文系しかいないって話じゃなかったか。」

『中学までで理系科目の記憶がストップした人たちで回してます。』

「molは分かるのか。」

『なんですか、その不可解な言葉は。』

「どうやって触媒作ってるんだよ。」

『材料を適当に混ぜてます。』

「よく触媒専門店としてやっていけてるな。」

『触媒の専門店じゃないので。』

「他に何やってるんだ。」

『理系科目の廃止運動です。』

「二足のわらじが両極端だな。」

『本音としては触媒とかいらないんで。』

「なんで採用されてるんだよ。求人の仕方見直せ。」

『求人にはちゃんと“理系大募集!文系お断り”って書いてあるんで大丈夫です。』

「じゃあ、なんで理系いないんだよ。」

『熱烈に理系語ったんで集団で採用されました。』

「何の話したんだよ。」

『プログラミングについてです。』

「採用担当がおかしいな。」

『採用担当も文系ですから。』

「むしろ店にいる誰が理系なんだよ。」

『お客さんです。』

「うん、今いる中だったらそうだな。今いなくても誰が理系なんだ。」

『お客さんがオーナーなのでお客さんです。』

どういうことだよ。」

『外から見たら入ってみないと誰がオーナーかわからないのでお客さんがオーナーです。』

「それは上手いけど、誰も理系いないのかよ。」

『cat.ショップをペットショップと勘違いする人が多くてオーナーも店長も辞めていきました。』

「じゃあ、早く改名しろよ。」

『しましたよ、catショップに。』

「おい、楽するな。ピリオド消すだけは楽しすぎだよ。しかもこれじゃあ、ペットショップになったじゃないか!」

『それが先代のオーナーの願いです。』

「オーナー狂ってるな。店の系統変わりすぎだよ。」

『先代オーナー、私です。』

「お前かい!」

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【漫才】cat.ショップ キザなRye @yosukew1616

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