第7話 我が家とケイ

 今、借りている部屋は1LDKだ。


 西武池袋線ひばりヶ丘駅徒歩三分のマンション三階の角部屋だけど、なんとお家賃が六万円でペット可なのである。


 なぜか?


 事故物件だからだ。


 過去の入居者が、とっても大きな事件をおこした犯人で、部屋に○○を隠していて、その腐敗臭で隣人が通報して……説明したくもないことがこの部屋で行われていたようなのである。


 俺の前に、三人ほどの猛者が入居したけど、皆、一週間ほどで退去したという。


 事故物件界のキングと異名を勝手につけたのは、俺の上司で霊感が強いから幽霊を見てしまうという織羽オバネ部長だ。


 だから、住むところがなくなり困った俺は、ここなら審査が落ちることがないと思い速攻で申込んだのである。自社管理物件だったので、織羽部長がオッケーといえば問題ないのだ。


 そして、覚悟して部屋に入った初日、どよどよと淀んだ空気は霊感ゼロの俺でもわかった。


 とてもおかしな匂いが漂い……不気味な音が連続的に聞こえた……んだけど、ケイが俺に続いて部屋に入って「ワンワン! アオー!」と吠えた直後、空気が一変してとても清々しく感じられるようになったのである。


 幽霊? でない。


 怪奇現象? おきない。


 超お得物件に生まれ変わった!


 そんな室内に、俺はペットのお留守番を見守ることができるカメラを設置した。


 徒歩一〇分の通勤というすばらしい環境とはいえ、ケイと会えない仕事中はどうしても寂しい思いをさせてしまう。


 どんな様子か、確かめたいのが親心というもんだろう。


 スマートフォンを操作すると、ケイの様子を知ることができるのだ。


 昼休憩の時、さっそくアプリを起動してみた。


 あれ?


 ケイがいない。


 カメラを寝室に切り替えた。


 いた。


 ケイは、俺が脱ぎ捨てたパジャマを顔にかけて、俺のベッドの上で寝ている。


 かわいぬぅ……。


 動画の中の、ケイが顔をあげた。


「キューン……」


 キョロキョロして、寂しそうに鳴くと、また伏せる。


 俺は耐えられず、職場から家へと走る。


 家の鍵を取り出しながら、マンションのエレベーターに乗った時、画面の中のケイが尻尾を振りながら玄関へと移動してるじゃないか!


 いつも、玄関を開けたらそこで待ってくれていたのは、俺が帰るタイミングを察知していたのだ!


 玄関を開け、ニッコニコでおすわりする大きなワンコを抱きしめた。


 顔を舐められる♪


「ケイちゃん、ただいまぁ」


 ケイは、ニコニコで俺に頬ずりしてくれる。


 かわいぬぅ♪


 最高のかわいぬぅ!!

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