第3話 暴走


 どのくらい寝てただろうか、気付けは外は真っ暗だった。起き上がり、髪を掻きまわしながらリビングに行くと、美味しい匂いが漂ってきた。


「お父さんただいま! 大丈夫? 体調」


 冬真は康介に抱き着き、見上げながら父の様子を伺っていた。


「あぁ、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」


 康介は冬真の顔を眺めながら言うと、百合が「ご飯ですよ」とご飯をテーブルの上に乗せながら二人に言った。


 ご飯を食べながらも、康介はなんだか不安が高まってきた。何せ2日続けて樹と碧斗が無残に殺された。もし次に殺されるとしたら誰だと思うと、どうしても頭から離れない。


 その後、康介はご飯を食べ終えると冬真と一緒にお風呂に入って行った。


 熱いお湯に浸かった後、康介はビールを飲み、冬真はお水を飲んだ。その後に百合もお風呂に入って行った。入っている間、冬真は眠たくなったのか目を虚ろにしている。


(そろそろおねむさんだな)


 康介は察して冬真を部屋で寝かし、再びリビングに向かうと百合が同じくお酒を飲みながらテレビを見ていた。


「あっ、あなた。冬真を寝かしてくれてありがとう」

「大丈夫だよ。もぉグッスリだ」


 康介は百合の隣に座ると、百合はお酒を目の前に置いて康介に聞いた。


「ねぇ、あなた。陽さんもどうだったの?」


 百合の言葉に、康介は首を横に振った。


「そう、お気の毒ね」

「あぁ、でも、一番悲惨なのはその親なんだよ。息子の姿を見て、発狂した後に倒れたんだ」

「そんな、それ程酷かったのね」

「あぁ」


 康介はそう言うと、悲惨な姿になった陽の姿が頭に浮かび、吐き気を覚えた。


「けど心配だわ。お父様の方は?」

「いや、あいつのお父さん、今北海道での単身赴任中だから、きっと連絡が今頃着ていると思うよ」

「そう。けれど大丈夫かしら。お母さんの方は。だって息子さんの死体を見て発狂するレベルってことはそれほど破傷が酷いってことでしょ? もしあのまま家に帰されて、一人だなんて考えると、何をするのか」


 百合はそう言うと、「世の中は残酷ね」と口にしてビールを飲み干した。言葉に康介も同じだった。あんな姿になった息子を目にして、火葬をしたとしても生成頭の骨と肩しか出来ないだろう。


「でも、あのまま家に帰すはずはないだろう。きっと父親が息子の死体を確認すると同時に母親も引き取るかもしれない」

「それならいいけどさ、それ終わったらまさかとは思うけど単身赴任するんじゃ」

「それもないはずだ。奥さんの精神状態を見たら上司に頼み込んで休むかもしれないしさ。何せ、息子の遺体を見たら絶対に母親と同じくなるかもしれないしさ」


 康介はそんな話をしながらも、父親も息子の元の姿を見た時はきっと発狂だけでは済まされない話した。自分の冬真もあのような姿を見たら、発狂だけでは済まされない。


 康介は大きく息を吐き、冷蔵庫の中に入っているビールを一つ取り出し、一気に飲んだ。


「それにしても、犯人は酷いわね。立て続けに二人も残酷に殺すなんて」


 百合は話しながら険しい顔を見せた。康介はそうさせたのは自分だと、心の中で口をした。

 


 直美は町の風景が見える警察署の屋上で煙草を吸いながら目の前の光景を眺めていた。本来は禁止だがちょくちょくここでこっそり吸っている。禁煙場所ではこのようにきれいな光景が見られないからだ。


 直美は真斗が飲み物を買っていることを待ち続けながら今日のことを振り返った。


 無残に切り刻まれた陽、猫を半殺しした康介。どれもが胸糞悪すぎて吐き気がするし、胃の中がむかむかしてきた。真斗も同じだった。


 二人になると五人の愚痴を永遠と吐いていた。


 あの時、会議の時に虐めのことを黙ったことに心底後悔をした。


(こんなひでぇ内容なら、虐めのことを話すようにすれば良かったよ。あっ、煙草が切れかけてきたな)


 煙草がきれそうになったのを見て、直美は最後にもう一回吸い込んで煙を吐き、踏みつぶして、もう一つの煙草を取り出そうとすると後ろから猛烈な殺意が感じた。


 振り返ると、突然みぞおちを殴られた。


「がはっ」


 直美は強烈な痛みに思わずその場に崩れてしまった。息を整えながら見上げると、暗くてあまりよくわからないがボサボサ頭がハッキリわかった。


「直美、久し振り」


 聞き覚えがある声、晴馬が目の前に立っていた。


「どうして、私が警察署で働いていることが」

「……陽の美容院の時に知ったんだよ。俺、あそこの現場にいたんだ。どうゆうな表情を見せるかなって思ってね。そしたら、現場の建物ないから出てきた直美を見つけて、警察署で働いているんだなって言う事がわかったんだ。それにしてもすごいね。君は昔から人見知りなのに、女子にも男子にも人気な君が警察だなんてとてもお似合いだよ。でもね」


 晴馬は笑顔で語り掛けると、直美の頭を掴み、自分の顔に近づけた。


「どうしてあいつらを助けるの?」


 怒りが伝わるほどの低い声に、直美はぞっとした。昔の晴馬は意見を言えないほどの弱々しい声だったが今は違う。


 復讐心しかない瞳が直美を睨みつけてきた。


「お前の事情は聞いた、私だって助けたくない。けれど、これ以上お前の手が薄汚くなるのはもっともごめんだ。そんな風になるんだったら、あいつらを助けたほうがいいだろ」


 直美がそう言うと、晴馬は大きく舌打ちをし直美を立たせ、首を掴みながら柵を背中に強く押し付けて、いつでも落とすように腰を強く掴んだ。


「それはありがたい。けど、そんなに俺の復讐を止めるようなら、殺すよ。本当だ。だって、邪魔する奴なんて、あいつらと一緒にしか見えないからね」


 晴馬は首を強く握り、直美は苦しくなってもがこうとした。


 だがその前に晴馬は直美を捨てるかのように床に放り投げた。直美は咳き込みながら前を見ると、そこに晴馬はいなかった。


(早く、伝えなきゃ) 


 立ちあがろうとしても、強くみぞおちを殴られてすぐには立ち上がれなかった。


「ただいま戻り、直美さん! どうしたんですが!」


 ちょうどよく飲み物を買って帰り終わった真斗が両手に缶コーヒーを持ちながらきたところだった。


 直美の姿に真斗はコーヒーを落としてすぐに駆け寄った。


「何があったんですか?」

「奴が、晴馬がここに」

「えっ! あいつがここに!」


 晴馬は驚きを隠せないでいた。


「あぁ、お前、すれちがなかったのか?」


 直美はそう言うと、晴馬はハッとしら表情を見せた


「もしかしたらさっき、清掃員の格好をした人ですか?」

「あぁ、そいつだ。早く皆に伝えろ! 叫びながらでもなんでもいいから」

「はっはい!」


 真斗は駆け足で屋上を出て行った。

 


 康介はあくびをしながらベットを降り、リビングに行くと既に冬真と百合が既にいた。


 気が付いた百合は笑顔でご飯をテーブルに置きながら笑顔で挨拶をした。


「おはようあなた。もぉご飯できたから食べてください」


 百合はそう言うと、再びキッチンの方に戻って行った。康介は冬真がいつものように笑顔で抱き着いてこないので肩を叩いて、声を掛けた。


「おはよう、とう、どうしたその顔?」


 冬真の目の下には薄っすらと隈が浮かび上がっていた。


「どうした? 何かあったのか?」


 康介がそう言うと、冬真はゆっくりと口を開いた。


「夜中ね、少し起きちゃったの。でね、目を開けたら僕の部屋にボサボサ髪をした男の人が立っていたの」


 ボサボサ髪、男。康介は息子から出た言葉に動揺を隠しきれなかった。


「そいつは何していたんだ?」


 康介は声を振り絞りながら冬真に言った。


「ただ僕のことをジッと見ていたよ。とても、怖い目で」


 冬真は目を擦って言うと、キッチンにいた百合がお弁当を包みながら康介に言った。


「そのこと、貴方が寝ている間に聞いたんです。涙目で部屋に来ていて、夢だとは思うんですけどね。だって鍵はしっかりと閉めていますし、窓も穴も空いていませんからねぇ。まぁ、一緒には寝たんです」


 百合はご飯をテーブルに置きながら言った。康介は晴馬が自分の部屋に入り込み、自分の息子を眺めているなんて一体全体どうしようと考えていたのだろう。そう考えると寒気が体中に走った。


「百合、今日、少し残すかもしれない」

「えっ。それは別にいいんですが、どうしてなんですか?」

「ちょっと体調が悪いんだ。本当に、すまない」

「いえ、いいんですよ。でもそれなら、おにぎりだけにしますか? お弁当。その調子だと昼食もいつもの量で食べるのは難しいと思いますし」

「あぁ、ありがとう」


 康介は百合に申し訳ない気持ちで言った。いつもなら手作り弁当は体調が悪かった時以外はいつも作ってもらっていたら貰っていたが、今の弁当の量は胃に入らない。今だってあまり食力が沸かないが、無理やりでもご飯を食べ終わろうと考えた。


 朝食を食べ終わり、会社に出掛けた康介は周りを警戒しながら会社に出勤した。着くと周りの同僚と後輩に挨拶をして自分の席に座った。


 その同時に後輩の聡が笑顔で挨拶をした。


「おはようございます先、どうしたんすかその顔! めっちゃ真っ青じゃないっすか」


 聡は康介の真っ青な顔に聡は驚きの声を出した。


「ちょっとここの所あまり寝付けなれなくてね」


 誤魔化しながら言うと、聡はコーヒーの缶を置いて言った。


「まぁ、あんなことが立て続けに起こったら体調とかわるくなりますものね。ですが無理をしないでくださいよ。そのままでやっていたら仕事ができなくなる体とかになってしまいますからね」


 後輩の気遣いに康介は「ありがとう」と感謝の言葉を言った。


 その後朝礼が終わり、皆はそれぞれ自分の仕事をし始めた。コピーしたのを渡曽置ている人、会議などの声や出張に行くと告げて出ていく人の声などが聞こえてくるが、康介は仕事をしながらも晴馬の声が頭に残っている。


「先輩、資料を確認してくれませんか?」


 聡は思慮のコピーを見せて言った。受け取った康介はコピーを確認し、よしと許可を得ると同時に電話が鳴り出した。


「すまん。ちょっと電話に出てくる。あとそれもぉ出して良いからね」


 康介はそう言うと、駆け足で今度は屋上に向かった。前みたいに晴馬の電話だったらトイレで叫んだらますます同僚などに変な目で見られてしまう。


 屋上に着き、電話を見てみると直美からだった。出てみると、直美はそっけない声で挨拶をした。


「あ、康介おはよう。今、話せるか?」

「あぁ、15分ぐらいならなんとか」

「そう、単刀直入に言うわ。私、晴馬に襲われたわ」


 直美の言葉に、康介は叫んでしまった。


「はぁ! どこで?」

「警察署でよ。襲われた理由は、お前らのことでおまけに殺されかけたわよ。これ以上俺の邪魔するならお前を殺すって。もぉ、あいつは完全に昔のおとなしい奴じゃあ無くなっている。むしろ、今は復讐心しかない人間だ」


 電話口から直美のため息が聞こえた。


「大丈夫かよ。でもなんであいつ、お前の働いている場所なんか」


 康介はそう言うと、直美は「殺人の現場にいたんだ」と言った。


「現場、まさか美容院なのか? それとも」

「そうよ。その後に真斗が来たから誰でも良いから伝えてくれって言って、伝えたら大騒ぎよ。警察署内、近隣の所をあちこち探し回ったけどどこにもいやしない。相当逃げ足は早かったわ」

 

 電話の方から直美のため息が聞こえた。

 

 康介はその話を聞いて、どれだけの特訓を育んでいたかが想像できるほどだった。


 すると、直美が「それと」と言って話し出した。


「あんたと別れたあと、もう一度、軍隊の先生から電話があったんだ。昔、変な噂があったことを思い出したんだって」

「変な噂?」

「えぇ、あいつ時々、自分の部屋で呪文のようなことを小さな声で早口で話していたんだ。心配した仲間が時々心配の声をかけたんだが、いつも静かに微笑んで何もありませんと言うばかりなんだ。宗教にでも入っているのかって言う噂だったけど、他の皆はあいつを怒らすのに怖がってそれ以上は聞かないようにしたんだ。まぁそれだけだから、また何かあったら連絡をする。じゃあね」


 直美はそう言うと電話を切った。康介は晴馬の噂に少し考えた。


 呪文のような言葉。直美が言っていた三つ、陽と大輔の罪を入れて入れたら5つ。その言葉を繰り返しいいながら削っていたのではないのだろうか。


 そのことを考えていると、再び電話が鳴り出した。


 見てみると、碧斗からだった。


「もしもし碧斗。仕事は?」

「あぁ、大丈夫。お前は」

「俺も仕事だけど大丈夫。あのさ、大輔は?」

「あいつ、家に着いたら倒れるようにベットに入ったよ。それから晴馬が怖かったのか、家に泊まってって頼んできたからさ、今日大輔の家に泊まったんだ」

「そうか。あっ、あと」


 康介は直美のことを話すと、碧斗も碧斗と同じく驚きの声を出した。


「マジかよ。あいつ、直美のことを殺そうとしたのかよ」

「もぉ、晴馬は俺達を殺すことで頭が一杯なんだよ。邪魔する奴は誰でも殺す、絶対あいつはその頭しかねぇよ」


 頭を抱えながら言うと、碧斗も「そうだな」と一言言った。


「もぉ、俺達逃げられないんじゃないのかな」

「はぁ! 何言ってんだよ碧斗。警察が」

「確かに、警察が捕まえてくれれば俺達は助かるけど、捕まえればあいつはなんて言う? 俺達にしてきたことを洗いざらい話すかもしれないんだぜ。その話が警察内ならまだしも、マスコミなんかに嗅ぎ付けられたら、ネットに広がって俺達の写真かなんかが乗せられるんだぞ。おまけにその中には制裁だとかで家に落書きとか色んなことをするかもしれない。そうなった以上、俺らの人生がおわりなんだぞ!」


 碧斗の声が微かに涙ぐんでいることが電話から伝わる。


「じゃあなんだよ。俺達はこのまま晴馬に殺されたほうがいいのかよ」

「そんなこと言ってねぇよ。ただ怖いんだよ。あいつの恐怖と今まで順調になって、幸せな日常をこのまま壊されるかもしれない恐怖に」


 電話から叫ぶ碧斗に、康介は掛ける言葉が見つからなくなった。


「もぉ、仕事出るから。無事でいろよ」


 碧斗はそう言うと電話を切った。


 スマホを下ろし、康介は碧斗の言葉を心の中で呟いた。


(全てが壊される)


 全て、家庭に会社。それが全て壊されると思うと怖くなってきたが、何よりも心配なのは家族の方だ。


 このことを知った親は百合に冬真、親族は一体どんな顔を康介に向けるのだろうか。


 そのことを考えると、恐怖が沸き上がった。


「……いやだ」


 康介は情けない声で言うと、駆け足で建物内に入って行った。

 


 直美と真斗は以前働いていた居酒屋に向かっていた。場所は渋谷区の居酒屋、最初は友達の家に行き、その翌日に行こうと思っていたが康介がやったことに腹を叩ててそれどころではなかった。


「ねぇ。本当にいいんですか? 犯人にみぞおちを殴られた挙句に、あんなクズどもを助けているせいで殺されかけるなんて俺心配ですよ」

「いいんだよ。そんなの、さっさと調べるわよ」


 他の皆には虐めのことが伝えていないため、怪しい人物を見かけていなかったかを探している。


 数分間歩くと、その居酒屋に付いた。


(ここか)


 直美は扉を開けると店長らしき男が頭に巻き、店の服を着てテーブルを拭いていると、直美の姿に気が付いたのか手を止めて声を掛けた。


「あっ、お客様。まだ営業ではないのですが」


 直美は警察手帳を見せると、男性の店員は顔色を変えた。


「捜査一課の吉田と申します」

「同じく石田です」


 警察手帳を見た男性の店員らしき人は少しだけ険しい顔を見せた。


「あなたが店長ですか?」


 直美が質問をすると、男性は頷いた。


「えっ、えぇ。私がそうですが何か」

「以前ここで働いていた山内晴馬について少しお伺いしたいのですが、良いですか?」


 真斗がそう言うと、店員は横にある個人の席に勧め、直美と真斗が座り、店長は横に座った。


「それで、何が聞きたいのですか?」


 店長は顔を見ながら言うと、真斗はポケットの中に入れていたメモ帳とペンを取り出して言った。


「彼のアルバイト風景です。何か変なこと起こしていませんでしたか?」


 直美は丁寧に言うと、店長は「んー」と言いながら説明しだした。


「えっとですね、とくに何も悪いところはないですよ。彼は熱心に仕事をしていましたし、ずる休みなども一切しない子です。ですけど」

「ですけど?」

「休憩時間とかの間に、動画でナイフの使い方、動物に関するのをよく見ていましたねぇ。あの子、暗い割にはサバイバル系の事が好きなんだなって、皆思っていましたよ」


 直美は店長の話をまとめながら「なるほど」と言った。


「その他は?」

「えー、その他ですか? 確かノートに何か書いていましたね」

「ノート、ですか?」

「えぇ、計画って書かれたノートです。なんの計画だかはわかりませんけど、きっと生活でのことだと思いますけどね」


 一昨日に聞いた晴馬の親しい人から聞いたのと同じことを店長は言った。


「あと一応なんですが、彼の写真見ますか? 何か役立ちそうならなんですが」

「それはありがたいです。是非とも拝見させてください」


 直美がそう言うと、「ちょっと待っててね」と言って席を立ち上がり、カウンター内に入って奥の部屋に消えていった。


 待っていると、奥から店長が一枚の写真を持ってきた。


「はい。これは私と撮った晴馬君の写真です」


 直美はお礼を言いながら受け取り、真斗と一緒に写真を見た。晴馬は昨日会った時とは変わらずボサボサ髪で暗い顔をしていた。


「彼、真面目なのは良いのですが、暗すぎるのと、威圧感が少し怖くて皆あまり近づけなかったんですと」

「威圧感とは」と真斗

「なんて言うんでしょうか、こう。何かをため込んでいるようにも見えましたね」


 店長は笑いながら直美に言った。


 直美は怖がれて当然だ。何せ元いじめられっ子、虐めた奴らを復讐するために元軍隊に入ると嫉妬をして虐めてきた奴らを素手で攻撃をして、入院させたのだからと心の中で思った。


「これ、お借りしても良いですか?」

「あぁ、良いですよ。あっ」

「はい、どうしましたか?」

「後なんですが、彼、時々誰かと話していたんですと。相手は分かりませんけど、よく店の裏でコソコソと。月に何日か」


 直美は一瞬軍隊での友達かと思ったが、その友人は晴馬が学校を去って以降会ってもいないし電話などもしていないことを思い出した。


(じゃあ、一体誰が晴馬と連絡をしているの?)


 晴馬は人見知りな性格なため、友人などは一切いない。


 疑問に考えながら写真を眺めた。


「でも刑事さん、彼一体全体何したんだい? 何か悪いことでもしたのかい?」


 店長は顔を見ながら言うと、直美は内ポケットに写真をしまい込んで言った。


「悪いことと言うより、過去の怒りが爆発しただけです」 


 誤魔化しながら言ったが、店長は「はぁ」と訳が分からないでいた。直美は頭を下げ、他のアルバイト場所に向かった。


「誰かと連絡ってことは、まさか共犯者!」


 真斗は大声を出すと、直美は思わず腹を殴った。


「うっ!!」

「バカ、こんなところで大声で叫ぶな。確かにそれもありゆる可能性もある。でも、月に何回か連絡ということは、うーん。探偵も一理あるということか」

「えぇ、ですが探偵って雇うにも結構金がかかりますよ。そう長くは雇えないはずです。それに、軍隊の友達は彼とは卒業して以来に連絡なんてとっていません」

「そう。その二つ。なら、康介たちに同じく虐められて、普通に同じ気持ちを持った共犯者?」

「ですが彼らは犯人のみをいじめたと言っていましたよね」

「それなら、一体その人物は誰なの?」


 直美と真斗は悩みながら再び足を動かした。



 康介は任された仕事をしていると、聡が肩を叩いた。


「先輩、お昼の時間すけど。お弁当は?」


「あぁ、おにぎり二個だけ持ってるだけかな」


 そう言いながら康介はおにぎりを二個取り出して見せた。


「先輩珍しいっすね。お弁当がおにぎり二個だけだなんて」

「あぁ、ちょっと食力があまりなくて百合がわざわざ減らしてくれたんだ」

「めっちゃ優しいっすねぇ。それなら、外で食べませんか? 外の空気を吸いながらでも気分を和らげましょうよ」


 聡の提案に少しだけ断り掛けたが、二人でいれば大丈夫だろうと思い、その提案に乗った。


 お弁当をお互い持ち、二階にある外で食事が食べられるスペースに向かった。行くと、何人かのOLの女子が楽しく自分達で作った弁当を食べている。


 空いているベンチに座り、弁当を食べ始めた。


「それにしても、この事件いつまで続くんですかね」


 聡はパンを食べながら言った。


 康介はさぁなと一言言うと、おにぎりにかぶり付いた。


「だって警察は犯人はわかっているのにいまだに捕まえられていないんでしょ。相当逃げ足がはやんですね」

「そうだな」


 康介はそう言っていると、後ろからコソコソ話す声が聞こえた。なんだろうと思い、振り返ったが同時に話していた女性の同僚がすぐに顔を伏せた。


 その行動に気になった康介は、隣にいる聡に声を掛けた。


「なぁ聡」

「なんですか?」

「なんか、コソコソ話されていないか? 俺?」


 そう言うと、聡は何か察したのか「あぁ」と声を漏らした。


「なんだ? 何か知っているのか?」

 

 康介は強気で言うと、聡は康介に近づいてコソコソ話をさせられている理由を話してくれた。


「実は最近康介さん警察の人に呼ばれているじゃないですか。おまけに知り合いが殺されていることで、皆、犯人に何か恨みを買われているんじゃないかってそれぞれ口にしているんですよ。先輩がいない時とかに」


 聡は言いにくそうにしながら説明した。康介はまさかここまで影口が広がっているなんて思いもしなかった。


「そうか。でも、仕方ないか」


 康介はそう口にすると、ご飯を食べ続けた。


「ちょっと失礼なことを言うんですけど、康介さん。なんかあったんですか?」


 智の言葉におにぎりを食べるのをやめてしまいそうになったが、


「何もやってない」


 と、言うと再び食べ始めた。食べ終わり、仕事場に戻った康介は ため息を吐き、背伸びをしてからキーボードを叩いていると電話が鳴り出した。


 電話を持ち、駆け足で一目に気にしながら屋上に行き、見てみると大輔からだった。


「もしもし」

「あぁ、康介。昨日はごめんな取り乱して」

「いや良いよ。誰だってあれを見れば取り乱すさ」


 康介がそう言うと、急に電話から大輔の涙ぐんだ声が聞こえてきた。


「うん、それから言わなければならないことがある」

「ん? なんだ」

「……すまない」

「は? 何言ってんだよ大輔。何謝ってんだよ」


 康介が疑問に思っていると、電話が切れた。


(どうしちまったんだよあいつ)


 康介は酷く取り乱しているなと思っていた。


 仕事場に戻り、残りのを終わらせると丁度定時になっていたためすぐに支度をして会社を出た。いつもはゆっくり歩くが、今はそんな歩きではよくない。いつ襲ってくるかわからないため速足で家に向かった。


「ただいま!」


 家に着くと、冬真が笑顔で父親に抱き着いた。


「おかえりなさいお父さん」

「あぁ、ただいま冬真」


 康介は冬真を抱き上げて笑顔で言った。


「おかえりなさいあなた。夕飯もう少ししたら出来ますからね」

「あぁ、ありがとう」


 康介は冬真を下ろし、リビングに行ってなさいと冬真に言った。


 コートとカバンを百合に預け、リビングにあるソファに倒れ込んだ。

 

 ふと聡が昼に話した内容を思い出した。


『皆、犯人に何か恨みを買われているんじゃないかってそれぞれ口にしているんですよ。先輩がいない時とかに』


 思い出すと、思わず大きなため息が漏れた。


「お父さん、大丈夫?」


 冬真は康介の頭を撫でて言った。


「あぁ、心配をしてくれてありがとう」


 康介はお礼を言うと、百合は思い出したかのように手を叩いた。


「あっ、そうそう貴方」

「ん? どうした」


 康介は顔をあげると、百合は真剣な表情で話しかけた。


「実は今日の夕飯を買いに言ったときね。誰かに見られているような感じがしたのよ」

「えっ。誰にだ?」


 康介は思わずソファから起き上がった。


「分からないんだけど、帰る時も付けられているような感じがして、だから今日思わず、近くにいるママ友の家に少しだけ隠れていたの」

「そうか、警察に連絡は?」

「したわ。それで警察官が着いた時に色んなところを見てくれたけど、その人物が見当たらなかったから、気のせいか勘違いだと思われますって言われて、まぁ家には帰ったけど」


 勘違いなわけないだろと、康介は心の中で叫んだ。


 康介には百合の後を追っていた人を何となくわかっていた。晴馬だ。何をするか分からないがきっとそうに違いない。


 百合は「本当なのになぁ」と思いながら再びキッチンの方にむかった。





 碧斗は仲間が書いた服を見ては、アドバイスのコメントを書くのを繰り返ししていた。


 建物内は結構凝っており、仕事場には一個だけシャンデリアがある。周りには衣装のサイズを図るメジャー、頬歳道具にパソコン。布などが置かれていた。


 何枚か書き終えていると、仲間の女性の一人が顔を出した。


「あの」

「ん? 何?」

「大輔さんと言う方が来ているのですが、上がらせてよろしいでしょうか?」

「あぁ、いいよ。あと君はもぉ帰っていいよ」

「わかりました。お疲れ様です」


 仲間の女性がそう言うと、入れ替わりで大輔が青い顔を出した。


「おぉ、大輔。大丈夫か」

「あぁ、なんとかな」

「仕事の帰り?」

「いや、休んだ。部長が、しばらくの間は休めってさ」


「そうか。今、お茶入れるからその場に座れよ。あっ、この資料はバラまくなよ。俺の大事な物だ」


 碧斗は大輔にそう言うと、空いている席に座らせてからコーヒーメイカーのスイッチを押した。


「碧斗」

「なんだ?」


「ごめんな。本当に」


 いきなりの謝罪に碧斗はこの前のことを悪く思っているのだな思いながら「気にすんな」と一声掛けた。コーヒーメイカーが鳴り、自分用と大輔用のコップに入れた。


 振り返ると、突然大輔は何処から持ってきたのか小さめのハンマーでで碧斗の頭を殴った。頭を撃たれ、思わずその場にコーヒーと一緒に倒れ込んでしまった。


「だい……すけ、お前」


 碧斗は頭を押さえながら大輔を見ると、大輔は体を震わせて震える声で謝り続けている。


「ごめん、本当にごめん、ごめんごめん」


 すると、男性の声がハッキリと聞こえてきた。


「おいおい、死なない程度に殴れって言ったろ。今の一撃、きっと命に係わるもんだったらどうするんだよ」

「ひっ、ごめんなさい晴馬」

(晴馬?)


 碧斗は声がしたほうに顔を向けると、そこにはボサボサ髪の晴馬が現れた。


「へぇ、碧斗お前、結構良い所で仕事してんじゃん。クズのくせに売れやがって」


 晴馬は周りの風景を見て、碧斗に言った。大輔はただ体を震わせて黙っているだけだった。


「本当、昔とは大違いだね。これぞ立場逆転」


 晴馬は見下ろしながら言うと、テーブルの上に置いてあった裁ちばさみを持つと、勢いよく碧斗の足に刺した。


「うぁぁぁぁぁぁぁ」


 思わぬ激痛に叫んでしまうと、晴馬は碧斗の首にスタンガンを押し付けた。


 気絶をした碧斗に晴馬は大輔に顔を向けた。


「さて、大輔。早くこのゴミをガムテープで縛って、トランクの中に入れてくれるかな」

「はっ、はい」


 大輔は横にあったガムテープを取り、大輔の両手両足を縛り付けた。


 その間晴馬は碧斗の周りを壊していった。布、碧斗が考えた服のイラストに作品の作りかけを破り、パソコンをハンマーで叩き割り、机などをひっくり返して踏みつけた。


 椅子も壁に叩きつけた。


 大輔はトランクに詰め込みながらも、晴馬にビクビク怯えていた。


「お、終わりました」

「ん? あぁ、本当」


 大輔の言葉に晴馬は暴れるのをやめ、トランクを大輔と一緒に抱えながら車の中に入れた。


「さて、ここで君も少しだけ寝てくれ」

「えっ」


 訳が分からずにいると、晴馬はハンカチに睡眠薬を仕込んでのを口元に強く押し付けた。


 少し暴れたが、すぐに暴れるのを止めて、その場に倒れた。


 晴馬はオノを取り出し、中指を切り落としてクーラーボックスの中に入れた。助手席に大輔を乗せ、車を運転させた。



 どのくらい寝たのだろうか、碧斗は足の痛みを感じながらも起きると手足に感覚がある。


 見てみると手足には針金が肉に食い込まれていた。


「おい! 話しが違うだろ!」


 叫び声に顔をあげると、そこには扉が透明な棺桶の中に入れられている大輔が自分の目の前に立っている晴馬に怒号をぶつけていた。


「あ? なんで虐めた奴を助けなきゃならないんだい? あれは単に嘘。君だって付いていたじゃないか?」


 以前の晴馬とは違う口調に碧斗は少し怖がっていると、起きているのに気が付いたのが晴馬は振り返り、不気味にニヤリと笑った。


「おぉ、おはよう碧斗。それと久し振り。丁度開始しようとしていたところなんだ。それにしてもこれ凄いでしょ。知り合いに頼んで作ってもらったんだよ。結構値段もかかったんだよねぇ」


 晴馬は不気味にニタニタ笑って言ったが、碧斗はすぐに謝罪の言葉を入れた。


「すまない晴馬。お前に、沢山の酷いことをしたことを心から謝罪する。本当だ。君の欲しいものを何だってやる、だから」


 次の瞬間晴馬は拳で碧斗の顔を殴った。凄い力に驚いたが、晴馬は髪を掴んで耳元で囁いた。


「今更遅いんだよ馬鹿」


 晴馬の低い声に情けない声を出すと、体の向きを変えて大輔に顔を向けた。


「おい! 俺は協力したんだ。だから助けてくれよ」


 大輔は助けを求めたが、晴馬は「うるさい」と怒鳴り付けた。


「お前らの声を聞くと反吐が出るんだよ。最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪反吐が出る反吐が出る反吐がでるへどがへどが」


 晴馬は髪を掻きまわしながら繰り返して言葉を言っている。二人は正常じゃないと感じていると、晴馬は冷静になって大輔に顔を向けた。


「それにさ、お前ら俺のことを散々ひどい虐めをしてきたよね。それなのに助けてくれって、都合良すぎるんじゃないかな?」


 晴馬の正論の言葉に二人は何も言えなくなってしまった。


「さて、大輔は僕に苦手な虫を与えたね。お前が嫌いなのは……蜘蛛とアリだよね」


 軽々と苦手なのを当てた晴馬に大輔と碧斗は驚いた。


 大輔に苦手なのを知っているのは俺達五人とその他の友人のみだった。まさか、その他の奴から聞いたのかもしれないと思っていると、晴馬は今度は大きめの硬い布に包まれた二つ棺桶の横に置いた。


「……何だよそれ」


 大輔が言うと、ホースを取り出して言った。


「カニ風呂って知ってるか?」


 晴馬は二人の顔を伺いながら言うと、二人は横に首を振った。


 強く舌打ちをし、晴馬はめんどくさそうに説明をした。


「カニ風呂は、反社の中で一つの拷問。じゃあ、俺の中で考えられた話でわかりやすく言うよ」


 晴馬は話しながらホースを棺桶の下に付いている丸に取り付けた。


「あるヤツは、恨みを買った組織に捕らえられ。散々暴力を振るわれ、その後に」


 取り付けると、碧斗を大輔の目の前に置いた。


「丸缶を用意し、そこにぐるぐる巻きした奴を放り込み、ホースを丸缶の中に入れた」


 晴馬は一つ目の袋の穴にホースを取り付けた。何だろうと思っていると、大輔は悲鳴をあげた。


「うわぁぁぁぁぁぁ! くっ、蜘蛛が」


 大輔と叫びと共に足下から大きめの蜘蛛が見えてきた。その横では晴馬が笑った。


「ハハハ、言っとくがそいつらは噛む蜘蛛だぞ。気よ付けろよー」


 晴馬は手を叩いて、子供の様にはしゃいだ。次々と何十匹の大きい蜘蛛大輔の上半身まで来た。必死に棺桶から出ようとしているがピクリとも動かない。


 碧斗は目を逸らそうとしたら、晴馬ははしゃぐのをやめて、持ってきたアイスピックを首に当てた。


「目を逸らしたら殺すよ」


 晴馬の声に碧斗は目の前の残虐を見なければならなかった。大輔は周りの蜘蛛を殺そうとしているが、蜘蛛達は大輔の体から離れようとしていない。


 すると、晴馬はニヤニヤしながら後ろから何かのスプレーを取り出した。棺桶の横からスプレーについていた細い棒を差し込んで押した。


 スプレーを押した瞬間、中にいた蜘蛛達は暴れ出した。


「やめてくれ、痛い! 痛いぃぃぃぃぃぃぃ」


 大輔は体中を掻きむしりながら叫んだ。きっと、暴れ回る大輔に敵意をした蜘蛛達が噛みついたんだろう。


「助けてくれーー」


 その言葉を言うと、晴馬は大きい声で言った。


「俺がいったときは止めてくれなかったよねぇーーーーーー」


 甲高く、過去に聞いた晴馬の声とは違って寒気が際立った。


 碧斗は目を閉じたくてしょうがなかった。閉じたくても、隣にいる晴馬が許してくれない。


 晴馬は分厚い手袋をはめて、叫んでいる大輔を無視をしながらホースを丁寧に抜いた。多少蜘蛛達が出たがすぐに晴馬は足で踏みつぶした。


「一様この蜘蛛達、闇の売買で買ったんだ。樹の金を引き落とすの結構大変だったんだよ。十万以上だったら詐欺に合われているって思われるしさ。何件もまわったよ。でも結構金あったからあのクズには感謝ね」


 晴馬はそう言いながらもう一つの袋を側に移した。


(まさか、今度はアリか?)


 碧斗は袋を見つめながら思ってると、晴馬は「さて」と一言言った。


「ここからラストスパートだよ。これからはドンドン痛みがますよー」


 そう言い、再びホースを差し込んだ。


「うぁぁぁぁぁぁ、今度がアリが入り込んで来やがった!」


 蜘蛛のせいであまり見えないが、小さく黒い物体が棺桶の中に入り込んでいるのが見えている。


 晴馬は大輔の苦しんでいる顔を見ながら言った。


「今お前の棺桶に入れたのはブレット・アント、通称弾丸と言われているアリだよ」


 ブレット・アントは口にクワガタのような形をしており、そこに毒があるが、その毒はスズメバチ以上の威力を持っている。痛みは弾丸を撃たれたような感覚が二十四時間続くと言われているアリだった。


「うあぁぁぁぁぁぁぁ、いてぇ、いてぇよ。助けてくれ碧斗!」


 碧斗は大輔の顔を真面目に見れなくなっていった。顔の頬は赤く腫れ上がり、ブツブツと湿疹の跡が浮かび上がってくる。


 すると大輔の口から泡が出てきた。


「うわっ、きったねぇなぁ」


 碧斗は大輔がドンドン衰弱していくところを見て、そろそろ潮時かと思ったのか晴馬はガスマスクを取り付けて棺桶の頭らへんにホースを差し込むと沢山の煙が入れられ、大輔の姿が見えなくなった。


「なっ、何してんだよ」


 碧斗は震えながら晴馬に言うと、「強力な毒ガス」と言った。


「だって、このまま出したら俺が死んじゃうんだもん。そんなのは嫌だよ。まだやり終わっていないし」


 すると、棺桶から血が吹き出され、赤い雫が地面に流れて行った。顔辺りから噴射し、晴馬はついに死んだと言った。
 晴馬は碧斗の横にある机に何か書くと、テープで棺桶に張り付けた。


「さぁてと、次は君の番だ」

「すっ、すまない。ごめんなさい、虐めて、虐めてごめんなさ」


 碧斗が言いかけると、晴馬はいつの間にか持っていたハンマーで殴りつけた。


「うるさいなぁ、ごめんなさい、ごめんなさいって。ねぇ、変な事を言い続けるなら家族にも手を出すよ。君の働いている場所を知っている以上、家族の居場所も知っているよ」

「やっ、止めてくれ。両親は関係ねぇだろ」

「うん、だけと、虐めをしてはいけないという教育をさせなかったのがあの人たちなりの罪かな。これを殺される前に言ったら、結構恨むだろうなぁ。君の生みの親は碧斗のことを恨みながら死ぬだろうなぁ」


 晴馬は微笑みながら碧斗を見下ろしていた。
 言い返そうとすると、再び首元にスタンガンを当てた。


 晴馬は手書きを棺桶の表面付け、碧斗をある場所に向かった。


 晴馬は次に目を覚ますと、そこはプールだった。周りを見わたしてみると学校があったためここは学校のプールだということがわかった。


 そして変わったのは、口にガムテープが二重に巻かれている。きっと、周りの家にバレないようにだと思ってつけたのかもしれないが、一応声をあげたが全然出はしない。


 暴れたりもしたがおまけに針金が肉に食い込んでいく。


 すると、後ろから靴の音と鼻歌が聞こえてきた。振り向くと、晴馬は大きい四角箱を台車に乗せて持って来た。


「いやぁ碧斗。さて、君が僕にしたことは溺死だよね。確か昔学校の裏でホースを蛇口に突っ込んで、水を俺の顔にかけ続けたよね。息が出来ないって言っても止めなかったよね。あっ、ここにいる学校の人は今全員ガスで眠らせてるよ。だから誰も来ない」


 耳元で囁く晴馬の声に、秋なのになぜか碧斗の額は汗が滲んでいた。


(助けてくれたすけてくれたすけてくれたすけてくれ、死にたくないしにたくないしにたくないしにたくない。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!)


 碧斗は心の中で呟きながらでいると、突然晴馬は髪を掴んで引き寄せた。


「今頃お前は心の中で助けを求めているようだがだめだよだって僕が何回も止めてっていってもやめなかったよねそれなのになんでいまごろになっておもうのかな意味がわからないよ」


 晴馬は早口で囁いた。恐ろしく、見開いた目に思わず碧斗は恐怖が沸きだった。


 もぉこいつは昔の晴馬じゃないと碧斗は思っていると碧斗はその四角いのに近づいて言った。


「ただの溺死じゃないよ」


 そう言うと、その四角いのをプールの中に入れた。


 見てみると暗闇で分かりずらいが何かが泳いでいるのが見えた。


「これはね、ピラニアだよ」


 ピラニア、南アメリカやアマゾン川の熱帯地方に住んでいる肉食の淡水魚であり、何でも食べてしまう奴だ。


「これも闇の売人から買ったんだよ。結構苦労したんだよ。でも君達の恨みを晴らすために沢山働いて買った奴なんだ」


 碧斗は暴れ回ったが針金が強いせいで動けない。すると、晴馬は椅子をプールの傍まで近づけた。


「んーー! んー!」


 碧斗は叫んだが、小さすぎて晴馬に馬鹿にされた。


「ハハハハ、だーかーらー。誰も気づかないって。本当にお前らどこぞの奴らより頭悪いんじゃないか」


 そう言うと、晴馬は目の前に泳いでいるピラニアを見つめて言った。


「でもさ、普通じゃあダメなんだよ。普通の殺しじゃ。俺にとっては史上最強、お前らが死んでも記憶の中に残し続けることが良い。ちなみになんだが、こいつらもサメと同類の肉食関係の仲間だからさ」


 髪を掻きむしり、晴馬は持っていた小型ナイフで碧斗の足の平たいに傷を付けた。切り傷から血がツーと伝っていく。


 痛みがジクジク感じていると、晴馬は碧斗の横でニヤリと笑った。


「血の匂いを嗅いだら」


 そう言うと、椅子の両面を掴んで足下だけ水面に付けた。


 すると、血の匂いを会だピラニアは碧斗の足に食らいついた。


 想像絶する痛みに碧斗はガムテープ越しでも叫んだ。


「こんな風に興奮するんだねぇ。面白いよねぇ」


 晴馬は笑顔で言うと、椅子をあげた。


「うわっ。グロっ。骨とか見えてんじゃん」


 晴馬はケラケラ笑いながら、ボロボロになっている足を見せつけた。


 足からは血が止まらない。ドクドクと血がプールに広がって行く。


「おぉー。すごい広がって行くね。ねぇ見える? 君の血でピラニア達が興奮しているよ」


 晴馬は碧斗の頭を掴み、前の光景を見せて言った。


「うぅぅぅ」


 涙を流し、失禁をしている碧斗を見て舌打ちをした。


「もぉ、そろそろ楽にしてやるか」


 そう言うと、晴馬は碧斗を突き落とした。水しぶきを立て、さっきまでの散らばっていたピラニア達が一斉に碧斗に集まって行った。


 そしてすぐにプールは血の池になった。


(汚い血)


 そう言うと、横にある網でプールの中に入れてすくった。網の中にはちぎれているが手が入っていた。


 置いてあったクーラーボックスの中に入れて、その場を去った。

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