第35話 三つ巴の話し合い その2

 話し合いの途中でふと思った。

 そう言えば帯野さん達スキルホルダー3人の実験。


 アレって情報流出をしていない?

 もしそうだったらうっかり喋る訳にもいかないし。

 結局俺の思った通り、まだ帯野さん達の事はバレていないようだ。

 後は今回俺と一樹の行動。

 これの発端が帯野さんだという事もバレていない。

 これもバレると色々ややこしい。

 特に帯野さんだ。

 彼は俺に、実践してスキルホルダーになった・・・・抽出スキルだっけ?あれを得るのにコーヒーを1週間に1000杯淹れたとか言っていた。

 それがなければスキルホルダーになっていたかどうかわからないらしいからな。

 もし帯野さんが件の事を実践してスキルホルダーになったとしたら、一般人が挙ってスキルホルダーになろうとする可能性もある。

 だがそもそも金がかかるし、元手がないと厳しか?

 やはりここは静観して黙っておくのが吉だな。


 結局何故俺がここにいるのだとか、そういう話もして、俺と帯野さんの出会いはたまたま門付近に居た帯野さんが俺を見ていた事、そして俺が蛇の口を地面に縫い付けた事で状況が変化、そして俺の後に駆け付けた一樹が動けなくなった蛇の首を落とした・・・・こういった状況で俺と一樹に目が留まったようだ、と伝え、その後個人的に話す機会があり、昔の都市伝説を語ったりしながら、ふと同じ事をしたらどうなる?という考えになって、じゃあ俺が試そうとなり、1人ではなんだからと一樹も加わった、みたいな流れにしておいた。


 一応信じてもらえたと思うが、何せ他にも色々あるからな。

 きっと今日は突っ込まれる事もないだろう。

 だが、

「では同じ事を彼女にさせたいのだが、どうだろう?」

「え?一寸!あれ本気なんですか柊木課長!」

「当然だ。君が終われば次は私がやろう。」

「柊木課長が先にやって下さいよう!」

「では君が部長に報告をするのかね?」

「・・・・私がいたしますう。」


 これは困った。果たして彼女にスキルホルダーが発現するのだろうか。

「ではこちらでも人選して数人一緒にさせてみます。私のパートナー2人は条件に適っています。」

 帯野さん、養護教諭の天樹 真瑚さんと職員の藤記 果南さんにもやってもらう気だな。

「え?私が?」

「そもそも私は職員だから駄目なんじゃ?」


 2人とも乗り気ではないようだ。

「あー、そこは校長権限で何とかしよう。」

 反対意見は受け入れられなかった。

 一旦ここで場が止まった。

 すると今度はハンターギルドの局長が・・・・俺が拠点としている街の・・・・挙手をした。

「ハンターからも数人出しても宜しいかな?」

 俺が即答した。

「人選して頂き、まずはハンターが抜けても問題ない程度、数人規模でお願いします。喜び勇んで全員が同じ事をしてしまえば、大型生命体が大暴れしていても、誰も仕留められる人が居なくなるのは困りますからね。」

「それはそうです。一応男女5人ずつぐらいを考えておきます。」


 人柱的な人選を行い、日程を調整した・・・・早くて明日から行う事となった。何せ実験に付き合う人のうち、既に3人はこの場に居るんだから仕方がない。

 そして次に、実際どんな行動をすればどのスキルになるのか、という事になったが、

 俺と一樹のスキルは、


【複製】スキル

【修復】スキル

【総合武術】スキル

【抽出】スキル

 こんな感じで同じだ。

 何せ各々修復スキル目的と、複製スキル目的で試していたのが思ったより早く終わり、じゃあお互いの行動をとっかえこしよう、となって入れ替えてやっていたんだよな。

 で、更に時間が余ったので、2人で色々な武器を使っての戦闘訓練。

【総合武術】スキルに関してははっきりと分かっていない。

 俺と一樹がハンターだったからスキルが顕現化した可能性もある。

 これに関してはどうなるか分からない、と説明しておいた。

【抽出】スキルは全く心当たりがないと伝えた。

 過去にカードで大型生命体を仕留めるのに活用した事があるのは間違いはないが1000までは使っていなかったからな。


 そして問題は、1週間の間に大量のノルマをこなす必要がある、という事実だ。

 最初の2日まではいいんだが、慣れないと3日以降がきつい。俺は幸い一樹が近くにいたから何とかなったが。


 こうして帯野さん達のやらかしを隠し通したまま、この場での話し合いを終えた。

 スキル庁の柊木課長は凄まじい勢いで帰って行った・・・・もう1人の女性を置いて。

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