第21話 まさかの酒乱

 竹嶌さんの顔が近い!そして髪の毛がまだしっとりしている。つまり一度入浴を済ませていた、という事だ。

「さあさあ!ここのお湯って実は温泉なんですよ!」

 おかしい。彼女はこんな性格ではないはず。

 そして・・・・なんだか酒臭い。

 ま、まさかと思うが既に出来上がっている?


 注:竹嶌 一樹たけしま かずきは酒豪です。毎日の食事で水代わりに飲んでいます。酒が生き甲斐です。


「た、竹嶌さん・・・・お酒飲んでます?」

「お酒はいい。全てを忘れさせてくれる。さあ岩ケ谷先生!湯につかりながらのお酒は格別ですわ!」

 そう言って俺の手を取りドンドン・・・・ああ!俺のバスタオルがあ!!俺はまだ水着ではないんだあ!!!


 男湯なのに既に混浴となってしまい、俺は裸のまま男湯へ。

 本来であればしっかり体を洗ってから湯につかりたいが、ここはそのままつかる一択!


 一目散に湯船目掛け、洗面器を何とか手にし、賭け湯・・・だけしてはいる!ふう・・・・まにあ「全て見ておりますから。」・・・・わなかったようだ。

 俺は賭けに負けた・・・・え?掛け湯だって?


 幸い?竹嶌さんは俺を見ていないからいいが、後からついてきたお付きの女性達には、俺の全てを視られた・・・・ようだ。

 なんてこったい!それにだなあ、彼女達は一体いつ水着に着替えたんだ?最初から着ていて服を脱いだだけとか?

 これは恐らく俺の性格を考慮しているのだろう。

 流石に裸で入られたら問答無用で追い出していたはずだ。


「さあ、先生もまずは一杯!ここのお酒って美味しいんですよ!」

 何故か竹嶌さんは既に湯船で一杯ひっかけている。

 そしてここはスキル学校。つまりまだ未成年が学ぶ場なのに、何故酒が常備されている?


 俺は思わずグラスを受け取り飲んでしまった。

 その間竹嶌さんはうつむいているが、視線を追うと・・・・

「こ、これが・・・・」

 と聞こえる。

 どうやら竹嶌さんも俺の全てを視てしまったようだ。


 もうお婿に行けない・・・・と言う事にはならず、この後何とかお付きの女性達に竹嶌さん酔っ払いを回収してもらった。


 俺には刺激が強すぎる・・・・


 そして俺は油断をしていた。そう、全ての女性がこの場を去った訳ではなかったのだ。


 俺は慣れない酒を湯につかりながら飲んでしまい、酔ってしまったようだ。


 湯船で飲むのは危険すぎる!


 俺はバランスを崩した。

「危ない!」


 咄嗟に支えられ、事なきを得たが、

「無理をしてはいけません。」

 はあ・・・・諦めるか。俺はまだ女性がこの場に残っていた事を不覚にも気が付かなかった。

 そしてお陰で何とか転倒せずに済んだので、感謝しないといけないな。

「すまない。それよりもう大丈夫だから、呼ぶまで俺から離れてくれ・・・・理性が持たない。」


「好きにしてもいいのですよ。」

「それをすれば、翌日俺は人生を後悔する事になる。」


 俺の強い意志に、流石にお付きの女性は離れてくれた。勿体ないがこれでいい。


 その後何事もなく無事に入浴を終えた俺は、何とかベッドに辿り着き、起こされるまで熟睡をしていた。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・



「おはようございます。おや?顔色が悪いですね!カードですっきりしますか?」


 そもそもの元凶である竹嶌さんからの提案。


 湯につかりながらの飲酒は危険すぎだ。

 有り難くカードのお世話になった俺は、この後食事を終え、再び作業を開始した。


 結局3日で完成した。

 まだ時間があるなあ・・・・竹嶌さんも3日で終えたようだし、帯野さんは1週間後でないと来れないと言っていたし、ここは・・・・チェンジで!

「竹嶌さん、お互い実行する作業を変えないか?」

「先生どうしたのですか?私は構いませんが、帯野さんの意志に反しませんか?」

 俺は思った。

 帯野さんは俺達に実験をしてもらうという名目で・・・・実際には成功するのだろう・・・・そして俺達が帯野さんが【抽入】したカードを【複製】する事で、帯野さんもまた1週間この作業を行える事になる。

 スキルホルダーは、カードへスキルを注入するのは義務だと言っていたし、それをすると、恐らくは暫く何もできなくなるのだろう。

 だから時間を得る為に、俺達にもメリットがある実験をしているんだろう。


 流石の俺も、帯野さんに全くメリットがないと逆に怪しんだからな。

 お互いwin-winになるのだからこそ信用できると言うものだ。

 只より高い物はないと言うからな。



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