国立スキル学校

第5話 国立スキル学校

 俺が治療を受けていたのは国立スキル学校の医務室だ。


 通常俺達は入れないのだが、今回は学校を守ったからと特別に入る許可が下り、医務室で治療を受け得る事が出来た。


 ぶっちゃけ何処の大病院だよって言う立派な設備と綺麗な室内。

 まあ大部屋なんだがな。

 俺はてっきり男女混同で治療を受けていたと思ったが、どうやら裸で俺達同様治療を受けている女性ハンターはいなかったようだ。参加率が低かったのが幸いしたか?


 しかし酷い目に遭ってしまった。


「あ、気が付きましたか?」

 男の声だ。俺は起き上がると、ずいぶん若い青年が目の前に居た。学生か?

「ああ、すまないな。何の役にも立てず申し訳ない。あの蛇はどうなったんだ?」

「無事仕留められましたよ。幸いな事に皆さんの足止めが功を成し、最後は竹嶌さんが仕留めてくれました。仕留めた蛇の体内に魔増具が残っていましたが、これは貴方のですか?」


 目の前に居る少年・・・・きっとここの生徒なのだろう。今回参加したハンターで10代はいないからな。


「今回のリーダーが俺の、いえ、私の警告を無視し、頭を攻撃したんですよ。なんとか被害を最小限に食い止めようと咄嗟に武器を投げましたが、口の中にありましたか?」

 俺は毒を浴びるのが確定してしまい、回避不能だからと自分の可能性を信じ武器を投擲した。


「これは貴方専用の武器ですね。名が掘ってある。」

 俺がハンターとして28歳まで生き残れたのはこの武器のお陰だ。

 分類的には薙刀なのか?

 特殊な加工がしてあり、柄の部分は刃と逆方向に1つと真ん中にある。

 刃は片側が切れ、もう片側はぶった切る。

 西洋と日本の融合みたいな?そして刃の先端は突く事が出来る様になっている。

 因みに柄の部分、真ん中を扱う事で投げと回転させる事で攻撃が可能だ。

 もう1つの柄は鈍器だな。

 ぶっちゃけ重い。だがスキルカードのお陰でこいつを難なく扱える。

 カードは2か所刺せるようになっている。

 取り回しの邪魔にならない部分にあり、今時珍しいカードを差し込んで使用するタイプだ。

 こいつの特徴は投げても戻って来る事だ。

 スキルの中にそう言うのがあって、【返却】スキルというのを応用している。

 たまたまこの武器に付与できた。

 投擲しても物理的に問題なければ、投擲した者の手に勝手に戻ってくる。

 但し今回みたいに蛇の口に突き刺さって飲み込まれてしまえば、それは無理なのだが。


 しかし目の前に立つ少年、俺の得物が俺の所に戻ろうとしているのを力ずくで抑えているようだが、どれほどの力があるんだ?


「申し遅れました。私は帯野 海智おびの かいち、ここの生徒です。」

 うわ、やっぱりスキルホルダーか!しかし・・・・礼儀正しいのは何故だ?


「これはスキルホルダー様。先に名乗らせてしまい申し訳ありません。私は 岩ヶ谷いわがや 俊也としなりと申し、御覧の通り任務を全うできない無能なハンターです。」


「そうでしょうか?貴方の武器が蛇に突き刺さっていなければあそこまで竹嶌さんが素早く仕留める事は出来なかったと思います。自己評価が低いのは否定しませんが、必要以上に卑屈になってはいけませんよ?」


 誰この美少女。まだ若いな。彼と同じスキルホルダーか?しかし珍しいな。確率的に美少女がスキルホルダーになれるのだろうか?

「そうですわ。竹嶌 一樹たけしま かずきさんも蛇の口に何かが刺さっているのを確認してから攻撃していたもの!私と美心も気が付いていたわ。」

 うわ、2人の美少女を従えるとかスキルホルダーって羨ましすぎる!

 それと・・・・竹嶌一樹って俺の教え子じゃないか!

 やっぱりあいつが仕留めたのか?まだ20歳ぐらいだろうに、あいつはこの辺りで活動しているハンターでは実力が抜きんでているからな。

彼女・・は俺の元教え子なんだ。また差が開いてしまったようだな。」

 俺はここでしまった!と思った。あいつは男として振る舞っている女性ハンターだ。

 素顔を見た事は無いが、恐らく美人なのだろう。

 随分スキルホルダーを嫌がっていたからな。

 それにうまく隠しているが、どうしても所作に男と女の差が出る。

 骨格の違いだから分かるんだが。

「あ、いや、彼はその・・・・」


「心配しなくてもいいですよ。こう言っては何ですが、一樹さんも毒を浴びたので、一度裸になってもらっていますから。」

 ・・・・スキルホルダーとハンターってどうしてここまで差が出るんだろうな。

「まそういう事で、お久しぶりです岩ケ谷先生。」


 もう1人現れた!3人より少し年上に見えるが、俺からしたらずいぶん若い。

 しかし誰だ?こんな美少女見た事が無い。声も聞いた事が無いしな。

「す、済まないが君は誰?まさかと思うが竹嶌君か?」

「あ、これは失礼。【お久しぶりです。私は竹嶌一樹です。】これでどうですか?」

 どうやら喉元に魔道具を付けて声帯を変化させ、男の声を発するようだ。


「あ、ああ・・・・君が男性として振る舞っているのは知っていたからわからんでもないが、君の素顔は初めて見たはず・・・・女性とカミングアウトしていいのか?」

「はい、2年の間彼の庇護下に入りました。尤も彼は私に手を出すつもりはないようですが。」


 スキルホルダーが女性を庇護下に置いたという事は、つまり【パートナー登録】をしたという事か。

 そうなれば他のスキルホルダーと言えども手を出せない法律が存在している。

 しかし俺にこの状況でどうしろと?

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