第22話 九条龍星という男 〜紗理奈と水希視点〜(1)

ありがたいことに3.8万PV達成することができました!!


それに加えて、週間25位も達成でき、正直ここまで読んでくださるとは思っていなかったので、作者としてとても嬉しく思います。



これからも自分のペースでやっていきますので、ご理解と応援のほどよろしくお願いします!!


では、本編をどうぞ!!


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(水希視点)


龍星が幼馴染と自宅で遊んでいる頃………



私は、紗理奈ちゃんを連れて隣街にある、若い女性たちに評判の高いカフェに来ていた。



私と紗理奈ちゃんはそれぞれお店で大人気のチーズケーキとショートケーキのセットを頼み、お店の中でも個室感がある席に座った。



頼んだものが運ばれてきて、最初に一口アイスティーを飲み、本題に入った。


「…………それで、悩んでることってもしかして先日龍星くんとのお出かけが関係していたりする?」



私がそう言うと、紗理奈ちゃんは黙ったまま、カフェラテを一口飲み、静かに頷き、


「………………私さ、にぃにと一緒にどこかに行くってなんだかんだ、小学生ぶりだったの。」


「…………うん。」


「…………それでさ、いざにぃにとお出かけができるってなって本当に嬉しくなっちゃって、どうにかしてにぃにが楽しいって思ってくれる一日にしたかったの。」


「…………うん。」


私は紗理奈ちゃんの言葉を真正面で受け止め静かに相槌を繰り返す。



「…………でも、いざ当日行ってみたらさわかっちゃったんだよね……」



と、言うと彼女はそれまで俯いていた顔をあげて私を見て、




「にぃにの中で私はいつまで経っても面倒を見ないといけない『妹』でしかないって。」



「…………どういうこと?」



彼女の言葉の真意を図りかねて、思わず聞いてしまう。

「にぃにはさ、本当に本当に優しいんだよ。動物園に行った時も、本当は車椅子に長時間座っているから相当腰ら辺が痛くなっているはずなのに、涼しい顔して、私を見ながら楽しいね!って言うんだよ…………」



「それは…………」


私が口を挟もうとすると、彼女は首を振り話を続ける。



「…………だから、私はちょっとにぃにを試してみたんだ……。


途中、トイレに向かうフリして物陰からこっそりにぃにのこと見てたの……」



「…………もしかして……」

私は、ずっと彼の側にいたからわかる。

ずっと我慢していたなら、周りに人が居なくなってからする彼の行動が。


「…………水希ちゃんの思っている通りだよ。

私がいなくなった途端、とっても苦しそうな顔をして腰や足ら辺を擦りながら、苦痛の声を我慢してたの……。



それを見てさ、あぁやっぱりにぃにからしたら、私はやっぱり守るべき『妹』でしかないんだなぁ、って思ったらなんか涙が止まらなくなってきて……。」



そういう彼女はケーキを食べようとフォークを手にしていたが、それが適わぬほど震えていた。



「………………それでも、にぃにがそこまで私に苦しんでいる姿を見せたくないなら、って思って午後のまわる時間をできるだけ減らそうと思ったんだ。」



(それは、兄の優しさと身体を守るために紗理奈ちゃんが考えた当たり前の行動だろう。)


そう思って、

「…………そうなんだ。」


「……うん、でもにぃには私がまだ回りたそうにしていたと思って、結局動物園全部回ろうって言い出してさ……。」



「……なんとも龍星くんらしいね。」


「…………挙句の果てにお土産屋さんで私がちょっとにぃにをからかおうとして取ったペンギンのぬいぐるみを私にプレゼントしてくれたんだ……。」


その言葉を言う彼女の表情には嬉しいと心躍るような感じは一切なかった。


「しかも、にぃにはそのプレゼントは一日楽しませてくれた私へのお礼っていい出すんだよ。」


紗理奈ちゃんはそう言うと、そっと唇をかみ締めて続ける。


「…………その時から、私はにぃにの顔をまともに見れなかったの。」


話が終わり、私はそっと彼女に

「……それが、紗理奈ちゃんの悩みなの?」


と言うと、紗理奈ちゃんは首を横に振る。

「………………それもあるけどね、一番はにぃにが私を見てすらないって気づいたことかな。」


「……そんなこと、彼はしてな……。」


水希が言いきる前に、紗理奈は持っていたフォークをテーブルに叩きつけ


「水希ちゃんにはわからないよ!!!



にぃにはね、本当に怖いくらいの優しさを持つ善人なの。



その優しさを向けることは、にぃににとっては他人に向ける慈悲みたいなものなんだよ!


その意味が水希ちゃんに分かる?」



紗理奈の言葉は決して水希を責めたてるようなものではなかった。

ただ、知らないことを言うな、と遠回しに忠告するような感じだった。


その迫力に水希は、黙ったまま横に首を振る


それを見て、冷静になったのか、紗理奈は大きく深呼吸をして、席に座り

「にぃにはね……、普通の人と決定的に命の価値がかけ離れているの。」



その言葉に、私はあの日の出来事を思い浮かべる。

「…………それってどういう……」


「昔、にぃにには内緒で心理カウセリングをパパとママが受けさせたの。



そこで、言われたのがにぃには『マインドサイコパス』って診断されたの。」



「マインド……サイコバスって?」


「『マインドサイコパス』っていうのは一般的に言われるサイコパスのような異常犯罪者の事じゃないよ。


簡単に言ったら、自分を含めてあらゆるものに興味を持てない人のこと。」



「興味を…………持て……ない?」


「……そう、にぃには昔から何一つ好きな物も嫌いな物もない人なんだよ……」



「でも、日頃から由里子さんの料理をおいしいって言ったり、前の花見だって楽しそうに笑ってたよ?」


「…………それが、にぃにのすごいところでもあって同じくらい怖いところなんだよ。


にぃには、全てのことに一切の興味を示さないけど、人からの視線や感情はすっごい敏感なの。」


「それって…………つまり……」


「…………そうだよ、少なくともお花見の時に笑ってた、にぃには………………







全部演技だよ。」


紗理奈ちゃんの言葉に私は言葉がでなかった。

「……」

それでも、どうして分かるの。と不思議な気持ちを抱いていると……


「どうしてわかるのって顔してるね……。

だって私はにぃにと物心ついた頃からずっとずっと一緒にいるんだよ?


にぃにが演技して笑っているのなんてすぐに見分けられるに決まってるよ。

もちろん、パパとママもね。」



「……まさか、私をあの時助けてくれたのは……」



「……そうだよ。あの事故の時水希ちゃんを助けたのは、道端で小銭を拾って交番に届けるみたいに簡単だけど、誰もやりたがらないと感じる感覚でにぃには助けたんだよ……




そこには、多分あなたとにぃに自身が助かるかどうかなんてそもそも考えていないと思うよ。」



「…………でも、彼は目が覚めた時心の底から泣いていたよ。」


「…………うん、それが唯一にぃにが持つことが出来たものに関わっていたからだよ。」


私は、その言葉を理解するのに少し時間を有した。

「龍星くんが持つことが出来たって……」


紗理奈ちゃんは、少し息を整えてから私の目を真っ直ぐ見つめて、


「水希ちゃんも聞いたことあるとおもうよ………………。









それは、中学の担任の先生との約束だよ。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ちょっと長くなってしまうので、ここで一旦区切られていただきます!



いかがでしたか?


次回、龍星の秘密がついにわかるかも。


面白い!続きが気になる!って思ってくれた方は、応援、フォロー、☆☆☆などなどよろしくお願いします!


ではまた次回、お楽しみに!

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