昨今の若者の性の乱れ / 男子



あの日、沙耶香の浮気現場を見てしまった俺達は、俺は佐々木に、そして美玖は沙耶香に

それぞれさり気なく探りを入れることにした。


そうして現在、佐々木と2人でファミレスにやってきたわけなのだが──



「おいおいどうしたんだよ西条。

お前、なんか今日おかしいぞ?」


「い、いや、なんでもないよ?」


「そうか?桐島と何かあったんじゃねえのか?大丈夫か?」


「あぁ、大丈夫だ、問題ない」



はい、俺氏、絶賛へたれております。

いやいや、言えなくない!?

「あなたの彼女浮気してますよ」なんて。


ちなみに佐々木君や、

実は美玖は浮気してるぞ。

問題しかないんだなこれが。



ふう...。



俺は正直、迷っている。

浮気とは、知らない方が幸せなパターンもあるからだ。下手に知ってそれであっさり別れられるならいいが、俺みたいに未練がましくズルズルと引きずってしまう可能性もある。

俺には美優さんがいたからまだ生き残ることができているが...。



「そういうお前こそ、最近彼女とはどうなんだよ?」


「別に普通だよ。仲良くやってる」


「そっか」


軽いジャブから入ってみたが、

やはり何も知らないみたいだ...。



く、やむを得ない。

もう少しだけ踏み込んでみよう。


「なぁ、佐々木。最近──」


「あれ!小次郎ちゃん?わぁ、偶然だねぇ!」


何か割り込まれた件。


「うっ、恋歌レンカ...」


──小次郎の知り合いか?

声がした方を向くと、ギャルがいた。


ギャルとは言ってもキツめではなく、

若干の幼さを持った可愛い系のギャルだ。


しかし、小次郎ねぇ...


「知り合いか?」


「あ、あぁ...」


「ちょっと小次郎ちゃん!酷くない?

ちゃんとって紹介してよ!」


「ばっ、だからそれは──」


「あ、小次郎ちゃんのお友達さんですか?

初めまして、彼女のヤナギ恋歌です!

いつも小次郎ちゃんがお世話になってまぁす」


ふええ?


「おい恋歌!」


「もーそんな怒んないでよ〜!

外堀から埋めようとしてるだけだって〜!」


「だから今はやめてくれ!」



あー...これは、あれか?あれなのか?


ギルティなのか?



...うん。



お前もかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

いやまじどうなってんの!?

怖い!俺は怖いよ!

若者の性の乱れ!!!!

風紀委員呼んで!!!!!



「とりあえず!俺は今友達といるから!」


「はぁい。またえっちしようね?」


「ばかばかばか!」


「あははー。ばいばーい」



俺が心の中で絶叫している内に、どうやら嵐が去ったみたいだ。

──爆弾発言と共に。



「なぁ、佐々木君や...」


「な、なんだい...?西条さんや...」


俺の問いかけにギギギッとロボットのように

首を動かす佐々木ギルティを見る。


うわ、汗やば。顔真っ青やん。


「ちょーっとお話お聞かせ願いましょうか?」


「も、黙秘権の行使は?」


ええい!問答無用!

続きはムショで聞かせてもらおうか!


俺は満面の笑みで首を横に振った。



◇◇◇



「で、なんでそこからこうなったわけ?」



さて、ここまでの容疑者の供述を話そう。


佐々木と恋歌ちゃんの出会いは今年に入ってから、つまりまだ数ヶ月も経ってないようだった。

佐々木は最近アルバイトを始めたのだが、

去年からそこで働いていた恋歌ちゃんが

同い年として佐々木の教育係についたらしい。



「いや、これには深い理由がありまして...」


「なんじゃい。言ってみそ」


「いやぁ、アルバイト先でさぁ、飲み会があったわけよ」


「ほうほう」


「んでさ、勿論高校生組は飲酒禁止だったんだけどさ」


「まぁそりゃそうだわな」


「いや、それが恥ずかしい話...。

俺、本当に酒がダメな体質だったみたいで」


「は?結局飲んだの?」


お巡りさん?


「いやまじで飲んでないんだけどさ、ちょっと事故が起きて、頭からビールをかぶっちゃったのよ」


「はぁ...」


「それで酔っちゃったみたいでさ。恋歌が教育係として介抱してくれたみたいなんだけど...」


「けど?」


「その、先に抜けて、家まで送ろうとしてくれたみたいなんだよ」


「なんて良い子」


「で、俺が途中で帰りたくないと駄々をこねたみたいなんだ」


「うわめんどくさ」


「何も言えねぇ。それで困った恋歌ちゃんが俺を近くのホテルまで連れてってくれたんだよ」


「なんて良い子」


「だよな〜。そんな子に、俺は...」


「お、お前、まさか...?」


「いや!待て!早まるな!」


「なんだよ?」


俺は既に犯罪者を見る目で佐々木を見ていた。既にいつでも110番できるぞ?ああ?


「それでさ、その、どうやらその時に恋歌に襲いかかったらしいんだけど...」


「あ、もしもし警察ですか?」


「ちょっ!待て待て!最後まで聞いてくれ!」


「ああん?もうお前はクロだぞ」


「だから最後まで聞いてくれって!

それでな、恋歌は俺のことを憎からず思ってくれていたみたいで...」


「まぁお前、顔だけはいいもんな」


そう、こいつはムカつくことにイケメンなのだ。


「だけって...。まぁいいや、それでさ、恋歌がこう言ったらしいんだよ」


「なんて?」


「 「私、彼氏としかシないよ?付き合うってことでいいの?」って...」


「で、その返答は?」


「わかった付き合う!って言ったらしい...」


「はいギルティ」



なんちゅーベタな...。



「はぁ〜。ん?でもさっき外堀がどうとかって」


「覚えてないから無効って言った」


「このクズが」


このクズが。


「ひでえよ!」


「黙れクズ。で、沙耶香はどうすんだよ?」


「いや、だから困ってんだよ...。

沙耶香と別れる気はないし、かと言って俺のしたことを考えると恋歌を蔑ろにもできないし...」


おまっ、最低だな!


「ふーん。で、恋歌ちゃん怒ってないの?」


「あぁ、無効って言ったら、

「じゃあこれからもっと私を知ってもらうね」

って...」


「なんて良い子」


なんて良い子。


「もう、ちゃんと彼女がいることを言えよ。

それで一夜の過ちってことでどうにか終わらせてみればいいじゃん。勿論ちゃんと謝り倒して」


そう、当たり前のことを俺が言ってやると

佐々木は一転、真剣な顔つきになる。

な、なんだってばよ....?


「それが...」


「それが?」


「3回」


3...何かの暗号か?

ってんなわけないよな


「は?」


まさか、こいつ...!!


「既に3回、シてしまいました...」


「この下郎がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



あ〜もうめちゃくちゃだよ!

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