第12話
準一さんは私の話に時折驚く顔をしながらも最後まで話を聞いくれた。
「ごめんね」
そして謝った。
その謝罪はどういう意味だろう。
私は準一さんが何を話すのか待った。
「僕はまだ結奈ちゃんを全て信じることはできない、だってミーが見えないからね」
と悲しそうに笑った。
「でも君がそんな事で嘘を言う子にも思えないんだ」
「ありがとうございます。この話を聞いて全否定しなかったのは準一さんだけですよ」
私は嬉しかった。
「それで美琴にもそういう……幽霊ってのが見えてたんだ」
「美琴ちゃんは私ほどはっきり見えなくてなんとなくいるっていうのがわかる程度でした。私といるとそういう影も寄ってこないとも言ってました……でもあの時怒って離れた時に何かあったのかも」
美琴ちゃんの手をもう一度握りしめる。
あの時すぐに追いかければ良かった。
後悔しているとミーちゃんがそばに寄って慰めるように見上げてきた。
ミーちゃんの瞳は綺麗な緑色で私の手をひと舐めした。
「ミーちゃん?」
「ミーが何かしてるの?」
「いえ、なんか手を舐めてきて……」
そしてその後すぐに準一さんに近づくと同じように手を舐めた。
「え?」
すると準一さんが舐められた瞬間に手をビクッと動かした。
「なんか今ここが濡れた気がした……」
「ミーちゃんが舐めてましたよ」
こんな時なのに少し笑ってしまった。
「ん~……」
すると美琴ちゃんの意識が戻り声をあげた。
「「美琴(ちゃん)」」
私達は美琴ちゃんの顔を覗き込むと……
「わっ!二人とも近いよ!」
美琴ちゃんはびっくりしている。
いつも通りの様子に私は気が抜けて椅子に座り込むと準一さんは美琴ちゃんを思いっきり抱きしめていた。
「わ、私先生呼んで来ます」
私は立ち上がると急いでナースステーションへと向かった。
その後美琴ちゃんは先生に診察を受けるがやはり問題はなくなぜ意識を失っていたのかわからないようだった。
美琴ちゃん自身もなぜ意識を失っていたのか分からないという。
悲しくなってあの場に行きそのまま眠ってしまい気がついたら病院にいたそうだ。
今日は大事をとって病院に泊まる事になり、明日も問題なければ退院出来ることになった。
そして私達のあの会話が勘違いだと聞いてホッとすると怒鳴った事を謝ってきた。
私は気にしてないと美琴ちゃんと仲直りして二人で笑いあった。
「今日ここに泊まらないとダメ?」
美琴ちゃんは病院に一人で泊まるのが嫌なみたいで準一さんに何度か聞いていた。
「先生がその方がいいって、寂しいなら父さんも泊まろうか?」
「お父さんより結奈さんがいいな……」
美琴ちゃんはチラッと私を見る。
「それは……幽霊を見るからか?結奈ちゃんといると見ないってのは本当に なのか?」
「え!なんでそれを……結奈さんお父さんに言っちゃったの!?」
美琴ちゃんが驚いた顔で私を見つめた。
「美琴、結奈さんは悪くない。父さんが問い詰めたんだ。美琴が居なくなってみんなで心配して探したんだぞ」
「美琴ちゃん、ごめんね。美琴ちゃんが見つからなくてミーちゃんに聞いたの」
「ミーちゃん……」
美琴ちゃんが声をかけるとミーちゃんがスっと現れた。
「ミーちゃんありがとう」
美琴ちゃんがお礼を言うとミーちゃんは得意げに美琴ちゃんのベッドに横になった。
「本当にミーがいるのか?」
準一さんはじっと目を凝らしてベッドを見つめる。
「お父さん、言えなくてごめんね。きっと信じて貰えないと思ったの……それに私もハッキリミーちゃんが見えるわけじゃなくて結奈さんに見てもらってミーちゃんだって確信したの」
「そうなのか……でもな……」
準一さんは私達の顔をみて悩んでいた。
そうすると私達の微妙な空気を壊すようにミーちゃんがベッドの上でお腹を出してゴロンと寝転んだ。
「え!」
その姿に私は驚いて声をあげた。
「「どうしたの?」」
美琴ちゃんと準一さんに心配されて言おうか迷ったがここまできたので言うことにする。
「準一さん、ミーちゃんってオスなんですか?」
「え?違うよーミーちゃんはメスだよね」
美琴ちゃんが笑って否定する。
まぁ三毛猫のオスは希少だから勘違いかもしれないが……
しかし準一さんは驚いた顔で口を手で覆っていた。
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