第10話

「最近美琴と仲がいいね」


お店のお客さんが一通り居なくなり片付けをしていると準一さんが嬉しそうに話しかけてきた。


「美琴ちゃんが頼ってくれてるみたいで嬉しいです。なんか年の離れた妹みたいで……いや親子かな?」


「そんな事ないよ、十分妹に見えるよ」


冗談で言ったら真剣な顔で否定された。


「あ、ありがとうございます」


なんと答えていいのか恥ずかしくなり熱くなる顔を隠すためにテーブルを拭きに行った。


「でも本当に嬉しいよ、結奈ちゃんが来てから美琴もなんか元気になった気がするよ」


「それなら良かったです」


「しかし結奈ちゃんはこんな店にずっといていいの?もっといい就職先があったら気にしないでいいからね」


「そうですね……」


でも……この店と仕事が気に入っている。


と答えようとすると


「え?」


美琴ちゃんの驚く声がした。


私達が振り返るとちょうど二階から降りてきたようで私達の話を聞いていたようだ。


「美琴」


「美琴ちゃん」


声をかけようとすると美琴ちゃんが悲しそうな顔をした。


「うそつき!結奈さんずっといてくれるって言ったのに!」


「美琴!」


美琴ちゃんは私を睨むとお店を飛び出してしまった。


「美琴ちゃん!」


私が追いかけようとすると準一さんに止められる。


「大丈夫だよ、美琴のわがままだからね。だから気にしないでね。美琴が帰ってきたらよく言って聞かせるよ」


「でも、私このお店が好きです!少しですがお金も貯められるし……辞める気なんてありません」


「そっか、ありがとう。美琴が帰ってきたら伝えるよ。それで機嫌も直るだろ」


しかし美琴ちゃんは暗くなっても帰ってこなかった。


そのうちに準一さんも心配になりソワソワと外を見ている。


「準一さん、お店閉めて美琴ちゃんを探しに行きましょう!こんなに暗いと……」


幽霊を見たりするし心配だった。


やはり幽霊だけあって夜になるも行動も活発になるのだ。


「そうだね……皆さんすみませんが……」


準一さんが店内のお客さんに声をかけた。


みんな常連さんが多く、お店はいいからすぐに探しに行くように言ってくれた。


「俺達が店を見ておくよ!CLOSEにしときゃお客はこれ以上入らないだろ。美琴ちゃんが帰ってきたら連絡入れるよ」


「ありがとうございます」


お店は常連さんに任せて私と準一さんは外を探しに行った。


「美琴ちゃーん!」


「美琴!」


店の近くを左右に別れて一周するが美琴ちゃんはいなかった。


「何処に言ったんだろ……」


不安そうな準一さんに心当たりはないのか聞く。


「美琴が行きそうなところ……あっ!」


心当たりがあるのか準一さんが走り出した。


「この先の山にずっと家で飼っていた猫を埋めたんです。もしかしたらそこに……」


それってミーちゃんの事?


「ミーちゃん!」


私はミーちゃんの事を思い出した!


ミーちゃんなら美琴ちゃんのいる場所がわかるかもしれない!


「ミーちゃん!美琴ちゃんがいるとこわかる!?」


私は立ち止まって大声を出した。


そんな私に町の人達や準一さんが驚いた顔で見つめるが今は気にしていられない。


「にゃーん」


「ミーちゃん!」


すると待っていたミーちゃんが姿を現した。

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