第8話
「その前に……ミーちゃん」
美琴ちゃんは私の話を遮ると誰かの名前を呼んだ。
「ミーちゃん?」
すると「にゃーん」とあの声がしてあの幽霊猫が現れた。
私はその瞬間ビクッと肩を鳴らす。
「やっぱり……結奈さんミーちゃん見えるでしょ!」
「し、知らない。何も見えないよ……美琴ちゃん何言ってるの?」
私は猫を見ないように美琴ちゃんに笑いかけた。
「嘘!絶対に見えてる!猫のミーちゃんがそこにいるでしょ!」
「美琴ちゃん……」
美琴ちゃんは必死に猫のミーちゃんを指さした。
その姿を見ていて、私は自分と重なった。
自分にしか見えない物を人に言うとみんな同じ反応をする。
最初は冗談だと笑い、そのうちに可哀想な子を見るような目で見たり、引いたりするのだ。
私は美琴ちゃんに自分がされた同じような目をしたくなかった。
「うん、可愛い三毛猫のミーちゃんが見えるよ……ミーちゃんよろしくね」
私はミーちゃんに向かって笑顔を見せた。
「にゃーん」
ミーちゃんはよろしくと言うように返事をする。
「やっぱり……ミーちゃんいたんだね!」
「え?美琴ちゃんミーちゃん見えないの?」
私は美琴ちゃんの反応に驚いた。
「なんとなく何かいるのはわかるの、でもハッキリとは見えない」
悲しそうに俯くとミーちゃんはそんな美琴ちゃんを慰めるように擦り寄った。
「ミーちゃんは美琴ちゃんを心配そうにスリスリしてるよ。ちょうどその足元らへん」
私はミーちゃんの仕草を伝えてあげた。
「やっぱりミーちゃんが守ってくれてたんだね」
美琴ちゃんは嬉しそうにしている。
「私ねなんとなく黒い影みたのが見えるの、最初それがお化けなんて分からなかった。お父さんに言ったら目の病気かもしれないって連れてってくれたけど異常はなくて……他の人にも言ってけど誰も信じてくれないし、そのうち美琴は嘘つきだって……」
美琴ちゃんは悲しそうに声を弱めた。
「大丈夫、美琴ちゃんは嘘つきじゃないよ。私が保証する」
私はそんな美琴ちゃんを抱きしめた。
美琴ちゃんは我慢してたものが溢れたのか私の腕の中で泣き出した。
私は美琴ちゃんが落ち着くまでずっと抱きしめてあげていた。
そして美琴ちゃんが落ち着くと自分が幽霊を見えるようになった事や、同じようなめにあった事、会社をクビになった本当の訳を話した。
「だから美琴ちゃんの気持ちよくわかるよ」
そういうと美琴ちゃんはホッとしていた。
「昨日はその黒い影に追われて、家まで来ちゃったの。たまにそういう事あったけどいつもミーちゃんが助けてくれてたの」
「ミーちゃんすごいね!」
私がミーちゃんを褒めると誇らしそうに鳴いていた。
「でも昨日はミーちゃんでもダメで……そんな時結奈さんが来たら平気になったの。しかも今日帰りにあの影がいたんだけど全然そばに来なかったの!」
「へー、なんでだろうね?ミーちゃん何かしたの?」
ミーちゃんに聞くと知らないと言うように毛ずくろいを初めてしまった。
「ミーちゃんじゃないみたい」
私がそういうと美琴ちゃんは私の手を掴んだ。
「結奈さんのおかげだよ!昨日結奈さんに温めて貰ってからお化けを全然見てないんだもん!なんか結奈さんに温めてもらった体がずっとポカポカしてるの」
「え?私?」
私は違う違うと首を振る。
「違くない!だって結奈さんずっとキラキラ光ってるんだもん」
「へ?」
美琴ちゃんの言葉に私は自分の手を見つめた。
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