第14話 領主館

「誠に申し訳ない。」


「……。」


 あの後、狐の幼女に案内される事三時間。案の定道に迷ってしまい領主館に到着したのは指定された二時間を過ぎて一時間も遅れた後だった。


 着いた後どうしたらいいか困っていたら領主館の門前に執事らしき人が来て、事情を説明したらこうして部屋に通されたので第一声に謝罪した。


「……伝言を頼んだロム・シレタにしっかり伝えられていたはずだが。」


「確かに伝えられてはいる。しかし俺はこの迷宮都市に初めて来た為、そもそも場所を知らなかったのだ。」


「それならロム・シレタに案内させれば良かろうに。」


「それなのだが……。」


「けっかてきにたどりついたからヨシ!」


 一人納得しているのか、頻りにうんうんと頷いている隣のケモ耳幼女を見て俺は溜息を吐いた。


「このウル・アシュレットという幼女が自分が案内すると聞かなくてな。不安ではあったものの案内して貰った所、案の定道に迷ってしまいこうして遅れてしまったのだ。」


「ぴーす。」


 見られてることに気づいたのか、いきなり領主に向かってピースし始めるケモ耳幼女。やはりこいつに案内させたのは間違いだったか……。


「ロム・シレタは何を考えてウル・アシュレットに案内させたのか……しかもよりによって代償によって幼女化しているこの状態で……。」


 頭に手を当てながら溜息を零す領主。というか領主にすら溜息を付かれるとか一体何をしてきたのだろうか、このケモ耳幼女は。


「というかお前たちは私に向かって敬語は使わないのか?これでも一応この都市の領主なのだが…。」


「む。領主は寛容だと聞いたのでな、もし不快であったならば言葉使いを改めよう。」


「つかうひつようはない!」


「……はぁ、まあいい。元から期待していなかったからな。全く、何故こうも強い者は傍若無人な性格な奴ばっかりなのか……。」


 どうやら聞いた通り寛容な領主の様だ。とても俺を化け物呼ばわりした奴とは思えん。……後半の言葉については敢えて黙秘するとしよう。このケモ耳幼女と同じだと思われたくないのでな。


「ゴホンッ。だいぶ話が逸れてしまったが、そろそろ本題について話そうと思う。ムロ・シレタからある程度は聞いているな?」


「うむ、なにやらヘルベアーの報酬が貰えるらしいな。それも結構な額を。」


「額について話した覚えは無いんだが、一体どこから聞き付けたのだ彼奴は……。まあ、概ねそれで合っている。報酬については後で話すとして、先ずは感謝を。」


 どうやら報酬の額についてはムロはどこかから情報を手に入れていた様だ。無害そうな顔をしている癖に中身は腹黒かったらしい。というか感謝、だと?


「む?何についての感謝だ?特段領主にされる覚えは無いのだが……。」


「無論、都市の住民を助けてくれたことへの感謝だ。<旅立ちの朝>のパーティメンバーにそこのウル・アシュレット。どちらもこの都市の市民だ。それに有数の強者でもあるからな。もし亡くしていたら結構な痛手を負っていた所だ。何分ここは”迷宮”都市であるが故に迷宮によって経済が回されており、その大部分を担っている迷宮探索者は必要不可欠な存在であるからだ。」


「ふむふむ。」


「その中でも三百階層を超えている者はほんのひと握り。先程言った<旅立ちの朝>のパーティとウル・アシュレットもそのひと握りの強者であり、この都市の経済について大きく貢献している為亡くなられでもしたら政治的観点から見ても非常に惜しいからな。」


「成程。」


 ふむ、領主として市民を大事にしつつも迷宮都市ならではの政治的な考えも持っているからこその感謝という訳か。それにしてもさっきから勝手にウロチョロしているこのケモ耳幼女がそこまで凄いやつだとは、人は見かけによらないな…。


「納得した様で何よりだ。それで次に報酬についてだが、ここではなく迷宮組合にて受け取って欲しい。」


「迷宮組合?」


「そうだ。迷宮組合は迷宮についての諸々を取り扱っている組織で、そこで君が仕留めたヘルベアーの報酬を受け取れる筈だ。場所はここから北に歩いて二十分くらいの所にある。ついでに迷宮探索者の登録もして来るといい。」


 ふむ、どうやらそこで迷宮のアレコレを教えて貰えるらしい。これはすぐにでも登録して迷宮に行かねば。


「分かった。要件はそれだけか?なければ俺はすぐにでも登録しに行くが。」


「そうだな……それじゃあ最後に忠告を一つ。君が迷宮探索者になるならば覚えておけ。”迷宮を攻略しようとするな”、と。」


「は?それはどういう……。」


「それは組合に行ったら分かる。これにて要件は終わりだ。退室して良し。」


「いや、今聞きたいのだが…。」


 何やら謎の忠告をしてきたので詳細を聞こうとしたら、話が終わったのが分かったのかいきなりウルに腕を引っ張られ、


「ししょー、はやくくみあいにいく!」


「あっ、ちょっ、お前…!」


 そのままなし崩し的にその場から立ち去ることになったのだった。






「……行ったか。」


 誰もいなくなり一人になった途端、その男は虚空に向けて視線を動かした。


「あの時は見ることを忘れていたが、改めて見てみたらやはりとんでもない化け物だったか……。」


 傍から見ると虚空を見つめ黄昏ている人にしか見えないが、その男の視線の先には見慣れたモニター画面が映し出されていた。


《名前:道影 真斗 6000歳 性別:男


 種族:人間[破壊と再生の権化]


 位階値:8658


 体力:???????/???????

 筋力:???????

 精神力:???????

 俊敏性:???????

 魔力:???????

 幸運値:3000


 固有スキル

 ・【再生】


 スキル

 ・貫通 ・酸無効 ・精神障害無効 ・状態異常無効・痛覚無効 ・溺死無効 ・即死無効 ・斬撃無効

 ・圧耐性 ・魔法耐性 ・刺突無効 ・衝撃無効

 ・魔力操作 ・空歩 ・道影流 ・身体強化

 ・気配感知 ・震脚


 称号

 ・転生者 ・森の天敵 ・鏖殺者 ・一騎当千

 ・狂人 ・破壊と再生の権化 ・無謀者 ・逅?カ願?

 ・不死身 ・化け物 ・技職人 ・初代道影流

 ・荳サ繧呈遠蛟偵○縺苓?・螟ァ譽ョ譫励?荳サ (逵?

 ・理不尽の塊 ・脳筋 ・魔を扱いし者》


「まさかだとは思わなかったが、一体何をどうしたらこんなステータスになるのか。しかも差があり過ぎるのか表示がバグるなんて初めてだ。」


 とんでもないステータスを見たことにより、男は顔には出さなかったが話している最中内心ずっと緊張しっぱなしだった。それでも領主としての立場があったのでなんとかボロを出さずに済んでいた。


「道影 真斗、か。迷宮目当てに来たと言っていたがこんな頭おかしいステータスを持ってるんだ、絶対になにか仕出かす筈……。これは対策が必要だな。」


 ではあるが、最悪の場合を想定して男は密かに動き出すのだった。

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