もっと話たかったよ

ya_ne

寂しいよ

連絡がなくなって一ヶ月


嫌な事ばかり考えてしまう


忘れているだけならいい


気付かないだけならいい


連絡を返したくないだけならいい


嫌われたのならそれでいい


何もなければそれでいい


家にも連絡した


わからないと言われた


また嫌な事ばかり想像してしまう


無事ならそれでいい


ただ、無事でいてくれればそれでいい


何もなければそれでいいんだ


連絡も繋がらなくても


どこにいるかもわからなくても


無事ならそれでいい




しばらくしてから連絡がきた


ようやく家に帰ってきたと


見せられる顔じゃないから


会えないけど


ちゃんと帰ってきたと


連絡がきた


すぐに会いに向かった




最後に話した会話は


もうすぐ家が建つから遊びに来いよだった




新居に着き家の中に招かれた


引っ越しが終わっていなかった


荷物がそのままだった


ようやく会えた


何も話さない


話しかけても何も応えてくれない


姿すら見せてくれない


そこにあるのは


写真と小さな箱だけ


その写真に向かって話しかけてても


箱に向かって話しかけても


何も応えてくれない


返事が返って来ない


会話にもならない


聞いているのかもわからない


只々虚しくなった


涙も流れなかった


何があったかわからない


家族もみんなわからない


気付いてあげられなかった




真夏の暑い日だった


引っ越しの日


朝まではいたらしい


荷物を全部運んだ後からいなくなった


見つかった時には顔もわからなくなっていた


鑑定が出るまで時間がかかった


家族も信じたくなかったから


わからないと言って誤魔化していたようだ


あの時はちゃんと言えなくて


ごめんなさいと言われた


鑑定の結果が出たのと同時に


事件性もないとなってようやく帰ってきた


農薬を飲んだらしい




そんな素振りはなかった


いや


あったのかもしれない


気付かなかっただけかもしれない


気付いてあげられれば


今も笑っていたのかもしれない


だが


気付けない


気付ける人間の方がすごいと思う


変化を隠さないで欲しかった


辛いと言って欲しかった


悩んでいるなら言って欲しかった


話を聞けば良かった


なんでも話していると思ってた


でも違った


きっと無理して心配をかけないようにしていたんだ


気付かれないように必死だったんだ


そんなことにも気付けなかった


後悔ばかりだ


残された人間はずっと考えてしまう


変化に気づけるような


特別な人間じゃないことがよくわかった




葬儀の日


ようやく涙が出た


だが


悔し涙に近かった


残された家族も友人も


近しい人達はみんな後悔していた


きっとこれからも後悔するだろう


でも


時間は過ぎ日常に戻っていく


いつも通りの生活に戻っていく


心に穴が空いたまま


日常は過ぎていく


必死に何かで穴を埋めながら


残された人間はみんな必死に生きていく




止められる自信はない


でも


話して欲しかった


気付いてあげたかった


話を聞きたかった


ずっと後悔をしながら生きていく


癒えるかもわからない傷を抱えながら




特別な人間なんて一握りだ


話してくれないと気付けない


変化を隠されたらわからない


だから


怖がらずに話してほしい


言える人がいれば言ってほしい


一人で悩んでいい事なんてない


一人で解決できる人ばかりじゃない


解決出来なくても前向きになるかもしれないから


一人で悩むより前向きになるかもしれないから


余裕がないのはよくわかる


でも


みんなも同じで余裕がないんだ


みんな一緒だから安心して話して欲しい


愚痴って欲しい


笑い話になる日がいつか来るから


だから


一人でも多く


自分でいなくなることを


決断する人が減ってくれればと願う


残されて悲しむ人がいるんだと


わかっていてほしい




もっと話たかったな


飲みにも行きたかったな


一緒に厄祓いに行く約束してたんだけどな


一人で行くのが寂しいよ



























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