切磋琢磨

見て欲しい

日課としてアシスタントさんの時間は決めている。


それは払うお金が増えてしまうというよりは時間内で決めて出来なかった所は碧波自身でやるようにしている。


その方がメリハリが付くから時間を過ぎたら延長して残ってもらうことは一切しない主義。


いつもなら終わって6人揃って仲良く帰る。


だがある日、河合さんが帰り際に話があるからと少し話をしたいと言ってくる。


見ると目が据わっていて何か大事な話があるのだとみんなが帰った後に椅子に座るように促す。


話の内容は描いてきたマンガを渡される。


読んでみると戦隊モノでザ少年マンガの王道をいくなとおもっていたが人とは違うところがある。


それは主人公の戦隊に出てくるのが女の子。全て読み終えると河合さんに尋ねる。


戦隊モノが全て女の子なのは何か理由があるのかと。

兄の影響で見るようになったものの出てくるのは全て男の子。


女の子は出てきてもサブキャラクターでしかないからメイン、サブキャラクターともに女の子のキャラクターでやったら面白いのではないか。


その時、碧波は戦隊モノは男の子が観るものだからカッコよくなくてはならないという固定概念かある。女の子の戦隊モノって斬新で面白いという印象。


由依ちゃん。あ、河合さんの方がいいかな?この作品にタイトルを付けて読み切りや賞レースに参加してみたらいいと思う。


賛否両論あると思うけど碧波はいいと思うしこの発想はなかったよと笑顔で答えた。


河合さんじゃなくて由依で大丈夫なので。試行錯誤して描きあげたけど自信がなくてこの程度の駄作で応募するって……。碧波さんどうしたら自信が付くのか教えてもらえないですか?


「自信?碧波だって欲しいよ。マンガ家を始めた当初は順位はただの数字だから気にしないと思っていたけれどやっていて商業としてお金をもらっている以上期待に応えなくてはならない。常に上を目指さないといけないと思うようになったよ。この作品誰かに駄作って言われたの?出してもないのに駄作っていうのは勿体ないよ。出さないなら碧波が読み切りで出すよ。作品のことやタイトルを一緒に考えるから頑張ろう」


その後、作品とタイトル決めと仕事が終わったあとに一緒に考えたりラインでやり取りをしていた。


「美少女戦隊・エンジェルクイーン」


この作品は読み切りを提出すると佳作に選ばれた。碧波は結果をラインで聞いてこう送る。


駄作か佳作を決めるのは自分じゃなくて編集社や雑誌を買ってくれるお客さんだよ。碧波もそうだけどひと節でもひとつのセリフだけでも覚えてもらえるようにしようね。


対談

傍からみたらマンガ家として成功したと見られる碧波、それは速報や発売号での目に見る順位だけでなく学祭や講演会の依頼が来るようになって自分でも肌感覚として知名度が上がっている。


いつものようにアシスタントさんとともにネームを描いている時、知らない番号から電話がかかってくる。


電話はテレビ局の人からで異業種対談でマンガ家さんとして出演して欲しいとのこと。日時を聞いて保留にする。


来週の土曜日、テレビの収録があるみたい。だから土曜日休みで日曜日来てもらう形でもみんな大丈夫?難しいなら河島さんに手伝ってもらうからさ……。


休みをもらえるなら、短期アルバイトでまだシフト大丈夫との答え。保留を解除して引き受けることを決めた。


異業種対談って誰となのか、聞く前に電話が切れてしまって聞けずに当日までの楽しみとなる。


当日、司会者の紹介で登場する。


彗星すいせいごとく現れた天才マンガ家赤松碧波。筑波の高速スプリンターの陸上選手、みちのくが産んだ頭脳電卓の数学教授、琉球のダンプカーの力士、永遠の駆け出し声優川越晴香と読み上げられる。その紹介には語弊があると感じていた。


晴香ちゃんは数年芽が出ずにいくつものオーディションを受けていたが石岡杏子役をやって以降、色々なアニメ声優として、主題歌や表題曲を歌ってアニメ雑誌にも多く取り上げられるほどになっていた。


まずは芸術部門として碧波と晴香ちゃんから。


まずは司会者が同じ質問を両者に投げかけて答える。この2人を結びつける接点とも言えるのが「石岡杏子と子グマのリナちゃん物語」と自他ともに認めている。


声優オーディションに自ら参加して起用した碧波、主役の石岡杏子役に選ばれてスター声優の仲間入りを果たした晴香。アニメでの逸話、映画化になった時の心境などお互いに質疑応答していた。


碧波としては新連載してもらうだけでも有難いのに単行本、アニメ、グッズ。そして映画にまでしてもらうことになるとは考えてもいなかった。


これもひとえにいつも作品を待ってくれている人、楽しみにしてくれる人がいるからこそ常に喜ばれるものにするのが仕事だとしている。


晴香はプライベートで語ったことと重複するがあのオーディションでダメなら声優を辞めて別の道に進もうと考えていたからこそ碧波さんに救われ、他の作品にも出演することが恩返しになると話す。


対談を終えて他の人たちの対談を近くで見ていた。


どういった心境なのか気になる碧波。マンガ家以外の仕事を直で聞ける機会は中々ないと耳を傾けている。

だが隣にいる晴香が構って欲しいからなのかつんつんしたりしてちょっかい出してくる。


あまり騒ぎすぎない程度に喋っている。途中、アクシデントで停電になると怖いと碧波に抱きつく晴香。


収録を終えて近くのカフェに立ち寄って店員さんに写真を見せて子グマのリナちゃんのラテアートをお願いしたり、最寄駅で寂しい顔をして女子力が高い。


また別の現場やプライベートで会った時に碧波さんと笑顔で手を振って笑顔で迎えてくれる。年齢は碧波が歳下で晴香ちゃんが歳上なのにそれを感じさせない。

幸せそうなかわいい笑顔なら関係と感じていた。

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