なりすましの恋

神楽堂

第1話 携帯電話が落ちてきた

携帯電話が落ちてきた。


拾ってみると、傷はついているものの、ちゃんと動作しており、画面には「11」の文字が表示されている。


どこから落ちてきたんだろう?


見上げると、そこには木の枝がある。

携帯の成る木?

そんなはずはない。

きっと、もっと高いところから落ちてきて、一度枝にひっかかり、そして俺の前に落ちてきたのであろう。


二つ折り携帯であったため、折り曲げる部分で枝に引っ掛かり、落下の衝撃をいったんそこで受け止め、それから地面に落ちてきたのだと思われた。

開閉の動作は普通に行えた。

液晶も無事である。

いくつかのボタンを押してみたところ、問題なく動作していた。


どこから落ちてきたのか分からない携帯を拾った俺は、警察に届けよう、そう思った。


しかし、暇を持て余していた俺は、この携帯に保存されている中身を見てみよう、なんていたずら心が沸き上がってきた。

不用心なことに、この携帯にはロックがかけられていない。


俺は並木通の喫茶店に入り、警察に届ける前にこの携帯の中身を一通り見てみることにした。

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