第27話 これからの予定

 予定表によると、俺達は明後日の朝にはここルリーユの街を魔車で出発するそうだ。そして王都には約二週間の道中を経て到着する。到着したら王都で一日は疲れを癒すための休養日が与えられ、それが終わったらさっそく謁見らしい。

 この国の王様に会いに行くなんて……改めてマジで怖いな。日本で言ったら総理大臣に突然呼び出されるようなものだ。いや、この国の王の方がもっと権力は強いだろうから、それよりも怖いかもしれない。


「紙を見て貰えば分かると思うが、明後日の朝には王都に向けて出発してもらう。魔車はこちらで準備するので心配はいらない。道中の食事も同様だ」

「途中で野営をする日はありますか?」

「いや、基本的に街か村に泊まるので野営はないはずだ。何かトラブルがある時以外は考えなくて良い。また広い魔車に乗るのは二人だけなので、たとえ野営になったとしても魔車の中で休めるだろう」


 街や村に泊まれるのなら良かった。冒険者は野営もすることがあると聞きながらも、まだ一度も経験してないからな。ただ一応野営となっても大丈夫なように、最低限の荷物だけは持っている。まだ使ったことはないけど。


「御者の手配もしてもらえるのでしょうか?」

「それはもちろんだ。さらに護衛として数名の兵士が同行する」


 護衛か……そう言いつつ、護衛というよりも俺達の監視の役割を担うんだろう。変なことをしなければ大丈夫だと思うけど、誤解を招くような行動は避けよう。


「王都についてからの滞在場所をもこちらで手配するので心配はいらない。謁見の際の服装も冒険者なのでそのままで構わないとのことだ。他には何か気になることがあるか?」


 ギヨームさんが俺逹にそう聞いたところで、俺はリラに視線を向けた。気になることと言われても、この世界の常識が分からなすぎて質問も思いつかないのだ。

 するとリラはそんな俺の状況が分かったのか、一度頷いてからギヨームさんの方に視線を戻した。


「ではいくつか質問させてください。まずリョータはこの国の礼儀を知りません。私も生まれは孤児院なので、謁見の作法などは全く分かりません。それでも大丈夫なのでしょうか?」

「ああ、それは問題ない。陛下も分かっているからな。ただ一部の貴族は、礼儀がなってない態度を見て憤ることもあるだろう。したがって今回の謁見は略式となる予定だ。略式の謁見は貴族の立ち合いがなしになるので、そこまで礼儀を気にする必要はない」


 略式の謁見なんてあるのか。陛下と会うのは胃が痛いけど、そこに貴族がいないのはありがたい。貴族までいて監視されてる中での謁見とか、想像だけで緊張しすぎて倒れそうだ。


「ありがとうございます。それなら少しは安心です。ではもう一つお聞きしたいのですが、私達のことはどのように陛下に伝わっているのでしょうか? やはり主にはリョータのことですか?」

「ああ、そうだな。リョータのスキルとそれによる冒険者としての活躍、そしてもちろん今回のドラゴン討伐についての情報が陛下には届けられている。リラについてはそのリョータのパーティーメンバーで、将来有望な冒険者という認識だろう」


 予想はしてたけどやっぱり俺のことなのか……魅了のパッシブでさらにレベル十っていうのは、国に目をつけられるものなんだな。

 ここが正念場な気がしてきた。ここで国に好印象を持ってもらえれば、これから先が動きやすくなる気がする。


「あの、俺はスキル封じを掛けてもらわないといけないのですが、三十分で効果が切れてしまうという問題があります。謁見って三十分以内に終わるでしょうか?」


 ふと不安になってギヨームさんに聞いてみると、ギヨームさんは難しい表情で考え込んだ。もしかしたら、そこの部分は考慮されてなかったのかもしれない。


「……上に報告しておくので、その部分についてはまた後で話し合おう。もしかしたら陛下が、魅了スキルの力を実際に目にしたいと仰られるかもしれない。その場合はスキルを封じない可能性もある」

「分かりました。よろしくお願いします。……もし不可抗力や何かしらのミスで魅了が発動してしまった場合、私に近づいてきた人に命令するのは避けるべきですか?」

「ああ、それは絶対に避けてくれ。攻撃したと見なされても仕方がない」

「分かりました。教えてくださってありがとうございます」


 俺は聞きたいことは聞けたのでリラに話の主導権を戻すため、体を少し後ろに引いた。

 それにしても命令はダメなのか……絶対にスキル封じが解除されないように気をつけよう。


「他には何かあるか?」

「いえ、とりあえず大丈夫です」

「ありがとう。では明後日から予定通りにお願いする。そうだ、ドラゴンについてはどうする? 一応なんとか街中までは運んだのだが、兵士団所有の倉庫にそのまま保管している」

「そうですね……解体してもらうことができるのなら、解体して王都に素材を運びたいです。それがあればドラゴン討伐の信憑性が上がるでしょうし、王家の皆様に素材を献上することもできるかと」


 リラが答えたその言葉にギヨームさんは満足そうに頷き、兵士団で解体を行うことを提案してくれた。


「ありがとうございます。ドラゴン素材の所有権は全て私達が主張しても良いのでしょうか? 兵士団で保管してくださったのならば、一部は兵士団の所有となりますか?」

「いや、倒したのはリラとリョータなのだから、所有権は二人が有するのが当然だろう」

「そうなのですね。ありがとうございます。では一部の素材は献上するために王都へ持っていき、他の素材は売ってお金にしてしまいたいです」


 確かにそれが一番だよな。ドラゴンの素材なんて使い道が分からないし、何より持ち運ぶ術がない。


「分かった。ではそのように手配しておこう。解体料や保管料などは少しもらうが構わないか?」

「それはもちろんです。よろしくお願いします」


 そうしてギヨームさんとの話し合いは終わりとなり、ギヨームさんは最後に頭を下げて応接室を出ていった。部屋の中に残ったのは俺とリラ、アンドレさんとナタリアさんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る