第18話 恋の病
「…俺ちょっとショウコの様子見てくる」
「あっ…うん」
おっさんがショウコさんの部屋に向かった。私はセトとリビングに取り残された。なんとなくテレビを消す。
「大丈夫かな…」
「心配?」
「うん…」
私は、一人が怖い。一人になりたくない。
私は人を愛す。だけど人が私を愛してくれない。
父も母も私より先に死んだ。私のことなんて考えてくれないんだ。
「そんなに心配?顔色悪いよ」
『そんなに心配?』。私はショウコさんを、心配しているのか?
愛しているのか?
「あー俺腹いてぇわ。ちょい横になる」
先ほどまでやや前屈みになってテレビを観ていたセトが、いきなりお腹を抱えてソファーに仰向けになった。
「えっ!?大丈夫っっ!?」
足が長い。太もものあたりにまたがり、顔を覗き込む。顔色悪い?変わってないように見えるけど…
突然セトがふっと笑った。
「嘘」
「えっ?嘘…?」
緩んだ口元に目を奪われている隙に、大きな手が近づく。ごわっとした感覚が頬をつたう。髪がかきあげられる。そのまま頭を押さえ込まれる。
「どっちの方が心配?」
こつん。優しく、優しく、額がぶつかる。熱が伝わる。
「セト…」
まつ毛が重なり合ってしまう、目を、つむろう。
「俺はルナのこと愛してるよ」
手で、頭が、近づけられる。唇で、心が、重なる…
ごつん
「ルナ!!」
誰も私を愛することを許してはくれないのかな。
起き上がって、声の方に進む。ショウコさんの部屋の前、おっさんが扉を凝視しながら立っている。何があるの?私も扉を見る。
「何っこれっ!?」
部屋が内側から黒いものに押され、膨らんでいる…?
「おっさん、どういうこと!?」
おっさんが苦い顔をしている。
「ショウコの呪いが暴走した」
おっさんが握りこぶし震わせている。
「こうなってしまったら俺だけでは止められない。助けてくれ」
私は、ショウコさんを救いたいか?愛しているのか?
愛されたか?
私はショウコさんに愛されたか?
暖かいと思っていた時間は本当に愛だったのか?
ショウコさんにとっての私はただの暇つぶしの観察対象だったのではないか?
「私、戦いたくない」
ショウコさんのためにショウコさんと戦いたくない。愛している人と戦いたくない。
おっさんが扉を開けて中に入っていった。
中には黒いゼリーみたいなものに包まれたショウコさんがいた。
丸くなって子供みたい。
この人は子供だ。わがままな子供だ。
だから好きだったのかもしれない。首からぶら下げたロケットを服越しに確認する。
私の愛はきっと与えることしかできないのだろう。
もう疲れた。死んだんだ。もう私は自分を愛してくれる人しか愛さない。
愛がほしい。
家族がほしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます