第1.2話 境へ

僕は二人で歩いていた。

空へ、空へ。

おじさんは優しい人なんだな。

なのに…

「もうここでお別れだ。真っ直ぐ行け、振り返るなよ」

結局一緒にいてくれない。僕を分かってくれない。

おじさんはどんどん走り去っていく。どんどん見えなくなっていく。

「お父さん!!」

えっ?今僕なんて言ったの?

もう思い出せない。

僕はまた一人うずくまる。

「おい」

「お父さん!!」

行かないで。

「一緒に来ないか?」

なんか違う。

もう思い出したくない。

お父さんの手を掴む。離さない離さない。

お父さんが何かつぶやいた。

「これでねずみは継承された。助かったよ、新入り君」

僕は二人で歩いている。

おじさんと歩いた道を戻っている。

こうして帰るのが好きなんだよ。

ずっと素直に言えなくてごめん。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る