第17話 俺氏は魔力がないんやろうか?

 この世界に来てからの初めての旅行やん。

 そう思たらなんかワクワクするん。

 俺がコラプティオで体を失ってからしばらくは、ボニたんが釣りすんのを見ながらダラダラ暮らしとった。体が動かんくてもボニたんが運んでくれるからまぁ別に困らへん。でもだんだん、なんとなくニートっぽくなってきたような気ぃして、どないしよかなぁ思とった。

 何ぞお手伝いでもしよ思ても体ないしな。それで自分はなんかできんかなぁ思てスキル構成考えてみたんやけど。


 まずデュラハンのメインスキルというか必須スキル、というか一番強いのは鞭レベル。けど高うてもそもそも鞭持てんからさ、めっちゃ死にスキルになっとる。体ないし。

 その他でよう使うとったんはスピリッツ・アイ。生命力(笑)が見えるやつ。何かに使えんかなぁ思うて始終試しよったらレベルが上った。そうしたらなんていうか、ちょっと遠くまでとか、例えば水の底の深くまで見えるようになった。今ではボニたんが釣りするのの隣で「左60度5メートル先に大きな魚おるで」とか教えたる。ボニたんがそのへんに向かって針を投げるんやけど、釣れるかどうかは日によるな。正直ボニたんはあんま釣りが上手くはないんやないかと最近思う。

 逆に猟師さんに狩りにつれてってもろて同じように言うたら、ちゃんと獲物とってきてくれる。さすが本職。あと逆にイノシシとかゴブリンとか、そういうんがおるんもわかるから、接近してきたら教える。そんなわけで猟師さんには重宝されていた。えへん。


 まあそんなんで適当に暮らしよったら、ある日頭がようけ落ちてきた。ちょっと意味わからんやろうけど、よう考えたら俺も頭なわけで。

 聞いてみたらそいつらもデュラハンで、なんやほとんど日本人の転生者やった。この世界では日本人がデュラハン転生はテンプレなんかな?

 それでデュラハンの中には専門の人がようけおったから、村のチートが加速した。でもスピリッツ・アイはみんな常備しとるから、なんとなく相対的に俺の重要性が減ったような。ええと。

 それで他のみんなは何故か動けなんるんよな。ぴょんぴょん跳ねたりしとる。なんでか聞いてみたけど体の中の魔力で動かしているらしい。魔力ってなん

 魔力って何?

「なあ、みんなのそれ魔法なん?」

「どだろ? 魔法って詠唱とかいるんちゃうん?」

「魔法って言うより普通に動いてる感じ」

「ちょっと意味わからんのやけど」

「浮けと念じたら浮く、とかそんな感じ? 考えるな、感じろ」


 若干何を言っているのかわからない。

 よくよく聞くと体の中に燃料的なものが詰まってて、それを消費して飛んだり跳ねたりしているらしい。魔力やないかとかだれか言うてたけど、それの動きがあいつらには感じられるらしい。

 俺、自分の中にそんなもん感じたことないんやけど?

「あ、あれかな。スピリッツ・アイ使うときに頭の中でキュピーンいう感じする奴?」

「いや、あれこそ魔法じゃないのかな。『スピリッツ・アイ』って唱えるでしょ」

「え、あれはスキルじゃないの? 僕、練習して『起動』で使えるようになったよ」

「まじで? どうやってんの?」

 ようわからんのやけど、ぴょんぴょんするんはスピリッツ・アイとは違う作用らしい。それでその燃料的なものを消費したらその分食べて補うらしい。だから食べ物が食べれるらしい。減った分だけ。


「え、え、え、ちょ待って。待たれて。お前らめっちゃ我慢して食べよんと違うん?」

「なんで我慢して食べないといけないのさ」

「お腹が空いたらたべるのさぁ。寄り合いにいた時何日かに1回飯配られたじゃん。ぽそぽそしたまっずいパンと野菜と肉が入ってる塩だけスープ」

「そーそ、あれゲロまずかったけど体が無理矢理口に詰め込むからなぁ。ここまじ天国。ご飯おいしい」

「え。何それ? 俺そんなん知らんのやけど」

「まじか」

「まじで」

「ずるいずるい」


 俺は速攻家出したから知らんかったけど、飯が支給されとったんか。

 どうやらみんなその飯を食って最初は気持ち悪うなったけれど、2回目に食べる時は味はともかく食べれるようにはなってた言うから、デュラハンがこの世界で飯を食える何らかの作用がその食事にあったんかもな。

 黄泉平坂感。黄泉の世界のものを食べたら戻れなくなるみたいな。

 でもそれで体の中に燃料があるんがわかるようになたらしい?

 そうすると俺は死んどらんで生きてるん? あれ? いや首なんやけど。??


 でもやな、俺にとって重要なんはそんなんと違うんや。

 こいつらはな……。

 こいつらは……。

 抹茶パフェ食べられるんぞ!!!!

「え、抹茶パフェ?」

「この世界に抹茶あるん?」

「お茶があるんだからなくてもおかしくはない……のかな」

「誰か抹茶作れるやついる?」

「いなかったと思うが研究してみる?」

「イイっすね! やりましょう」

 俺は思わず頭の中で悲鳴を上げた。

 え、え、ひょっとしてこの流れ。

 みんな抹茶パフェ美味しう食べれるのに、俺だけ食べれんとかいう落ち?

 許せぬ。ただでさえ最近没個性気味やのん。


「動けないの不便だよねぇ」

「うーん、どうやって動いてるとか考えたことなかったな。最初はうまく動けなかったけど、動かし方に慣れてないだけの気がしてたし。練習あるのみ的な」

「デュラは体どこに落っことしてきたのさ。自由に動かせたんだろ? 魔力で動かしてたんじゃないの?」

「あれは無うなってしもたんや……。でも魔力で動かしてたんかな? それこそ自分の体みたいに普通に動いたんやけど」

「ずりぃ。でもデュラはんの頭って体とくっついてないじゃん? 体と離れてるもんを動かすんだったら魔力じゃないの? 筋肉とか神経繋がってないじゃん」

「無くなったら作ればいんじゃね? 北の方に機械の国があるって聞いたぞ」

「「はぁ?」」

 そんな話をしていると、そいつらの一人が妙なことをいい始めた。

 よくよく聞いてみれば、そこでは元いた世界でいうところのアンドロイドとか機械化人間みたいなのがおるらしい。なにここナーロッパとちゃうんか?

 聴くとどうやら場所によっては、文化とか文明が全然違うという話。

 機械化か! ひょっとしたらご飯食べれるようになれるかもしれん! ついでに体も!


「頑張って作ってき。デュラができたら俺も体欲しい」

「あ、僕も」

「なんや俺は人柱なんか」

「デュラが帰ってくるまでに抹茶パフェ作っとくから、多分」

「え、え、ちょっと待って待たれて。俺が帰るまで食べんといて」

「それはどうかなー?」

 やばい、早よいかな。

 ええとその、カレルギア帝国に?

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