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会場に入る順番は、第三王子の次であるようだ。やはり、身分順なんだな。というか、すれ違う人や、周りからの視線が痛い……。まぁ、注目を集めるよな。


辺りを見渡してみると、どうやら、第三王子はすでに会場入りしているようだ。






「サンドール公爵、サンドール公爵夫人、アース・サンドール様が参られました。」




係員の掛け声とともに、大きな扉が開く。


 





なるほど。キラキラ空間過ぎて目が痛い。これなら、クラブの方がましだな。


お、あの中央にいる方が第三王子か。金髪に、ブルーの瞳。うん、これは美少年の中の美少年だな。人当たりのよさそうな雰囲気が漂っている。あとは、なんというか、その、母性本能をくすぐりそうな感じだな。ニックネームは、マダムキラーに決定だな。






俺は父上の後を付いて行った。どうやら、第三王子の所へ行くようだ。挨拶をする感じかな?




すると案の定、父上は第三王子の正面まで行き、礼をした。



「お久しぶりでございます、ジルベルト殿下。本日は誠におめでとうございます。こちらにおりますのが、わたくしの息子のアースでございます。アース、殿下にご挨拶を。」




父上からの紹介を受け、俺は第三王子への挨拶を行った。



「空間と時の女神の祝福を受け、類いまれなるこの出会いに感謝をすることをお許しください。お初にお目にかかります。サンドール公爵家三男、アース・サンドールです。本日は、誠におめでとうございます。」






よし嚙まずに言えたな。すると、雰囲気をまとった声が返ってきた。





「許します。お初にお目にかかります。アーキウェル王国第三王子のジルベルト・アーキウェルです。本日は誠におめでとうございます。そして、サンドール公爵、サンドール公爵夫人、本当に久しぶりだな。」





本当に人当たりがよさそうだな。なんというか風格はあるけど、まったく偉そうではなく、鼻につかない。


というか、父上たちに対して親しげなような気がするな。親同士の仲がいいから、前から面識があるのかな?





「ありがとうございます。では、我々は下がらせていただきます。殿下へのあいさつが続くと思われますので。」



確かに、気づくと後ろにかなりの人数が並んでいる。これだけの人数とあいさつするのか、王族も大変だな。





俺たちは、あいさつの列から外れ、用意されていた席へと向かう。途中、例のドンターラ公爵家の双子が、俺を睨んでいるのが目に入ってきた。なんだろう……、同じ公爵家だからライバル視しているのかな。


うーんでも、睨むといっても、二人の感情はそれぞれ別々のような気もするけど……。


はー……、同じ公爵家同士、仲良くしたいけどな。





それから、しばらくして、挨拶待ちの長蛇の列が無くなった。ようやく、記念パーティーが始まるのか。挨拶だけで、一時間くらい経ってるぞ?





「オルトス・アーキウェル陛下のご入場!」




扉が勢いよく開き、陛下が入場してくる。これは、すごい貫禄。父上に引けを取らない、くらいの美形である。陛下が舞台の上の玉座の前まで歩いていくのを、そんなことを考えながら見ていた。





「本日はめでたい日だ。皆、存分に楽しんでいってくれ。」






陛下の声はよく通り、まるで人を引き付ける力を持つような感じだな。陛下の一言を皮切りに、記念パーティーが始まった。


 




ほどなくして、大人たちは大人同士で社交を始めた。子供だけどうするのだろうと考えたが、これは社交の勉強もしくはすでに本番なのかもしれないと思い至った。







いやー、視線が痛い。チラ見がすごい。俺よりも、この場には第三王子がいるのだから、そちらを見てほしいんだが……。


まぁおそらくは、親に俺とのつながりをつくって来いと云いつけられているか、単純に空間属性持ちへの興味を持っている、といったところだろうか。



今のところ、それほど悪意のようなものは感じられない。この能力がどれくらいのものなのか、わからないからかな。当の俺も、わからないしな(笑) というか、早くこの能力を試したい……。


 




うーんでも、チラ見してくるのは少し不快だな。話しかけて来ればいいのに……。


あ、そうか。こういう場では、下の身分の者が上の身分の者に安易に話しかけてはいけないのか。この場で俺に話しかけられるのは、公爵家の双子と第三王子だけだな。


 




ここは、第三王子の出方を窺うことにしよう。







すると、第三王子が話し始めた。



「私は今日という日が来るのを楽しみにしていたよ。魔法を早く、使ってみたかったからね。私の属性は、火光風の三属性だったよ。みんなは、どうだったかな?」





おー、流石王子さま。ここにいる全員共通の話題を提示し、全員に話を振ることで、全員が話をしやすい雰囲気をつくった。






「私も、早く魔法を使いたいと思っておりました。私は、闇属性でした。三属性持ちなんて、すごいですわ、第三王子殿下!」




一人のご令嬢の発言をきっかけに、周りの子供たちも談笑を始めた。







ふむふむ。周りの発言を聞いていると、ほとんどが一属性だな。俺や殿下が稀有な存在ってわけだな。


 





すると、公爵家の双子が殿下のもとへと近づき、話しかけた。





「三属性とは流石でございます、第三王子殿下。我々は、私、兄のオーサック・ドンターラが火属性を、そして。」



「私、弟のウォーザット・ドンターラが水属性を賜りました。」








と、双子が俺をチラ見しながら言った。


一属性ずつか、双子だから親の属性をシェアしたのかな? しかし、なぜ俺を意識する? 殿下と話しながら……。


あー、なるほど。双子は殿下の側近を狙っているから、俺を意識しているのかな? たしかに、同じ公爵家同士で跡取りではないところも同じだからな……。双子は、次男と三男だったな。俺は、第三王子殿下にこだわっていないんだけどな。






すると殿下が、こちらを向き、話しかけてきた。





「アース・サンドール様は、四属性を賜れたそうですね。しかも、そのうち一つが空間属性と聞きました。誠におめでとうおめでとうございます。」


 


殿下、人前でそれは……と思ったが、ここにいる全員が知っているであろうし、何より殿下もそれをわかっておっしゃたな。


周りの子供たちも会話を止め、待ってましたとばかりに聞き耳を立てている。


 




さて、どう返したものか。






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