第12話 監視カメラのデータを奪取する手段

 北条さんが考えたのは『監視カメラのデータの奪取』。

 なぜ、そう考えたのか、それはあのSNSの文章に隠されている。


 監視カメラのデータを証拠として扱うにしろ、しないにしろ、まずはその監視カメラのデータが俺たちにとって証拠になるのかを確かめる必要がある。そのためにはどうしても、データの確認しなければならない。


 だが、コンビニ付近の監視カメラのデータを管理している管理人は学園長の許可がないかぎり、見せることができないと言った。なら、強固手段で確認するしかないと判断したわけだ。


 結局は、そのデータの重要性を確認しない限り、俺たちの重要な切り札にはなれないからだ。そもそも、監視カメラのデータをなぜ確認したがるのか、それはこのSNSで呟いた一言に関係してくる。



『なんか、昨日、二人が喧嘩してるところを見ちゃったんだ。本当に怖くて怖くて、一枚だけ写真を撮って逃げちゃった。明日からなるべく人気のないところには行かないようにしないと…』



 この一文のここ「人気のないところには行かないようにしないと」。

 この文を見れば、すぐにわかる。この文から考えられること、それはこの生徒が可能性。


 なぜなら、あの現場に行くにはコンビニを通る必要があるからだ。なら必ず映っているはずだ。コンビニの監視カメラに、このSNSのアカウントの持ち主が…。


 そのために俺たちは監視カメラのデータを奪取する。もし、本当に映っているのなら、それは俺たちに撮って重要な証拠であり、切り札だ。


 そして、俺たちCクラスの勝ち筋に繋がってくる。

 

「もうすぐ6時ね…」

「ああ…」


 監視カメラのデータが保存されているのはレジの裏側にある狭い部屋だ。その部屋の一番右下に一つパソコンが置いてある。そこにデータが入っているはずだ。


 問題はどうやって、そのレジの裏の部屋に入るかだ。


「確かあのコンビニの裏に扉があったわよね?」

「そういえば、確かにあるね」

「あの扉は裏の部屋に繋がっているはずよ」

「そうなの?」

「ええ、私の調べでは…」


 一体どこから、そんな情報が手に入るんだよ。むしろ俺はそっちの方が気になる。

 まぁ、そこら辺は後にしておいて、もし裏の扉が監視カメラのデータを保管している部屋につながっているなら、簡単だ。こっそり入ってデータだけコピーして出ればいいのだ、だが、そんな簡単には行かないのが現実。


「けど、問題があるわ。あの扉はロック式なの、だから基本、鍵がかかっているはずよ」


「それじゃあ、侵入するのは無理じゃないか?」


「そうね。けど一度だけ開く時があるわ。コンビニが閉まる7時ごろ、ゴミを廃棄するときよ。その時間帯、あの扉が開く。そしてほんの数分だけ、あの部屋は空きになる」


「そうか…」


 ここは学校が管理するコンビニ。バイトする人がいないから、基本一人でコンビニを回しているはずだ。例外があるとすれば、品出しの時だけ、生徒会が手伝ったりしていることがあるけど、基本は一人、そして閉まる時間は生徒会もいないから、絶対にコンビニを運営している人、一人だけになる。


「けど、ゴミを廃棄するのにそう時間はかからないはずだ。流石に数分じゃ、監視カメラのデータをコピーするのは不可能じゃないか?」


「ええ、そうね。だから私たちがいるんじゃない」


「え…」


「気づいていないの?今私たちは何人いるの?」


「二人だけど…」


「そうね、二人いるわ」


 俺は考える素振りし、少しだけ間をあける。


「あっ、そういうことか……って流石に、怪しまれないか?」

「それをなんとか、乗り切るのよ」


 そして夜7時まじか、生徒の姿もなく、残るは俺と北条だけになった。

 


「さぁ、始めるわよ」


「本当に俺がやるのか?」


「当たり前でしょ?それに赤木くんはよく舌が回るでじゃない?」


「それは誤解だよ」


「さて、時間がないわ。これは私たちの勝ち負けがかかっているんだから…」


 北条の作戦はこうだ。

 まず、7時ごろ、ゴミの廃棄をするために裏の部屋から出てくる管理人を待つ。出てきたところでタイミングを見計らい、廃棄途中で話しかける。うまく、その場から引き離し、その隙に北条がコンビニの裏の部屋に侵入する。俺は北条が監視カメラのデータをコピーするまでの間、時間稼ぎをし、北条がデータのコピーに専念する作戦だ。


「じゃあ、しっかり頼んだわよ」

「はいはい、頑張りますよ」


 せめて、もう少し可愛い笑顔で言われたら、やる気出るのにな。

 顔は少し硬いし、そういう愛想がないところが北条の弱点だと俺は思う。

 まぁ高望みは良くないという一説の考えがあるわけだし、北条に望むのはお門違いだったかな。


「さて、ひと頑張りしますか…」


 俺は管理人が出てくるのを待つ。

 相手は管理人だ。そう簡単に言いくるめるのは難しいはず、だって学校側が選んだ人材、もしかしたら、という場合がある。

 だから、絶対に話しかけるタイミングは考えなくてはいけない。違和感なく、そしてさりげなく、その場から引き離すんだ。少しでも遠ざけるんだ。


 ……いや、待てよ。根本的には管理人をコンビニから遠ざければ言い訳だよな。なら、別に話しかける必要はないんじゃないか?


 そしてコンビニの裏にある扉がゆっくりと開く。

 

「ふぅ、今日も多いな」


 たくさんの廃棄物を乗せたカゴがいくつも運び出される。今見ただけでも、5個のカゴが見え、その廃棄の数はとんでもないことがわかる。それをいくつも外に運び出され、全てが運び終えると、すぐ隣にあるゴミ箱へとカゴを捨てる。


「本当に、なんで俺がこんな作業を…」


 ぐちぐちと愚痴を口ずさんでいる時、突然、話しかけられる。


「す、すいません…」

「うん?」


 どこか、苦しそうな声、まるで今にも死にそうな声に管理人はすぐにコンビニの表へと出る。


 すると地面でうずくまる男子生徒が目に入る。


「うぅ…」

「おい、そこの生徒!!大丈夫か?」


 心配そうに生徒の体をゆっくりと起こす。すると苦しそうな顔が見える。


「君!!大丈夫か!!」

「ああ、腹が…」

「腹がどうした!!」

「腹が……いた、い」

「そうか、腹が痛いんだな。今すぐ、医療班を…ってもう7時か…」


 医療班は学校が用意した最高の医療チーム。だが、医療班が動けるのは7時までというルールがあり、それ以降は自身で対処しなくてはいけない。


 もちろん、俺はそれを知っている。


「くぅ…」

「と、と………れ…」

「と?れ?」

「と、い……れ」

「トイレか!!」


 管理人は周りを見渡し、何かを確認する。


「よし、トイレだな」


 倒れている生徒を管理人は優しく、揺れないように持ち上げ、そのままその場から急ぎながら離れていった。


 あとは頼んだぞ、北条。


その場から離れていく様子を見届けた北条はゆっくりとコンビニ裏へと足を踏み出す。


「よくやったわ。赤木くん、あとは任せなさい」



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『公開情報』

・この学校には医療班が存在する。

医療班は学校が用意した最高の医療チーム。

ただし、医療班が動けるのは7時まででそれ以降は自身で対処しなくてはいけない。


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