第7話 夏だ!海だ!『ジョーズ』が来たぞ!

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 こんにちは。ようこそお越しいただきました。

 ここはダラダラと映画のイメージを述べていくエッセイです。大抵映画の感想ですらない。


 さて、だらだら映画エッセイ流れ第7弾は『ジョーズ』です。なお、書いてるのは冬です(どうでもいい情報)。

リクエスト募集したら「サメ?」と言われたので。フカヒレ大好きです!

ええと、ジョーズってホラーなのかな、ううん、ホラーだよね。なんだか最近ホラー一辺倒になっちゃってるけど書きやすい。サメ。


 みんなが知ってる『ジョーズ』ですが、これは1975年にスティーヴン・スピルバーグ監督が撮影した映画。あんまり認識されてないけど原作アリ作品。

 ところでスピルバーグ監督が最初に撮ったのは『刑事コロンボ』で、その次は『激突!』っていうこれもまた面白い映画もあるんだけど、『ジョーズ』は劇場版としては2作目。その次が『未知との遭遇』なわけだから、やっぱり多彩だな。

 とはいえ当時、監督は『ジョーズ』の撮影は乗り気じゃなかったらしい。

 だって「暴走トラックと鮫」監督ってどうみてもB級一直線じゃん!

 でも当時配給会社に『ジョーズ』撮ったらすきなもん何本でも撮っていいからさ、と口説かれてこの名作が出来上がった、らしい。

 それで今日は僕がジョーズを敬愛する2点と、そこから生まれた派生をご紹介します。


1.ジョーズ革命

 さて、『ジョーズ』の凄い所は何だろう。

 アカデミーの作品賞にノミネートされて作曲賞・録音賞・編集賞を取った。音響については後で少し描くけど、確かにこれはこれですごい。それから史上最高の興行収入記録を打ち立てた? それも凄い。

 でも『ジョーズ』の凄さってのはそんなちゃちなもんじゃねえ。

 『ジョーズ』は世界を変えたんだ。


 夏といえば『ジョーズ』!


 どうだ! このインパクト。

 そう、夏のホラー映画ときたら『ジョーズ』だ。その認識を全世界に刷り込んだ。

 それまで『この季節はこれ!』っていう映画はなかった、と思う。

 こういうパターンは多分現在も他にないんじゃないかな。例えば冬になると雪山遭難する作品はでるけど、それは雪は冬にしか降らないからだろ?

 でも本来、夏と鮫は関係ない。鮫なんて一年中いるもんな。サーファーは冬でも海に入るし、カリフォルニアなら冬でも泳げることがある。

 この無関係のものを強烈に結びつける凄さ。

 これが自分が『ジョーズ』を敬愛する第1点。


 ロメロがゾンビ概念をスプラッシュしたように、『ジョーズ』の影響は絶大だった。


2.ジョーズ・マーケティング

 2つ目の敬愛ポイントは『ジョーズ』を売ることにかけた執念。その影響力を裏打ちする営業戦略。

 スピルバーグ監督っていうのは本当にすごい商業監督だ。

 メジャー路線でも受けより趣味を優先するデヴィット・クローネンバーグとは違う。あ、クローネンバーグは好きだから例示してるんですよ! 念の為。

 スピルバーグ監督は『売る』ことを強烈に意識している。配慮が細かい。


 ところでさ、鮫、って英語でなんていうか知ってる?

 ジョーズ? 違うんだ。シャークだよ。

 じゃあジョーズってなんだっていうと顎。つまりあのホオジロ鮫の巨大な顎。だから熊のジョーズもあり。けれどもなんかもう無意識にジョーズ=鮫のことだとみんな勘違いしちゃてるよね。

 『ジョーズ』は原作もタイトルは『ジョーズ』なんだけど、スピルバーグはこれを最大限活用した。


 初代『ジョーズ』のポスターを見てほしい。ご存知なければ是非検索してほしい。このポスターは実に凄いのだ。

 まずポスター上部に配置された水面で何も気づかず人間がのんきに泳いでいて、その下から鮫の顎が迫っている。あのポスター自体もインパクトがでかいけど、目を惹くのは鮫全体ではなく恐ろしい乱杭歯が並ぶ歯。

 そして想起される飛散な結末。1秒後に泳いでいる人間はわけも分からず突然食われ、悲劇に見舞われる、その予測。そしてそれはいつ誰の身に起こるかわからない。

 その結末を映画館まで見に来いよ! という強烈なアプローチ。

 こんな胸アツなポスターはそんなにない。行くよ、そりゃぁ行くよ。

 『シャーク』だったらこの視点がぼやける。一方『ジョーズ』でも例えば普通に映すのじゃ駄目なんだ。歯が強調されるこのアングルじゃなければ。ポスターを見ても鮫全体を見ちゃって、ふーん、鮫かぁ、という感想に落ち着いてしまう。

 『ジョーズ』というタイトルは凶器であり恐怖の根源である鮫の歯を焼き付けるパワーワードだ。この点で『グリズリー』と『アナコンダ』はどうやっても『ジョーズ』に及ばない。このへんは本当にセンスの問題なんだと思う。

 作中でも歯は結構強調されている。

 

 それからスピルバーグ監督とユニバーサル・スタジオは本当に商業的だ。

 『ジョーズ』を公開する前に70万ドルかけてあの特徴ある音響、ダーダンッを散々TVでCMやった。ゴールデンには毎日ダーダンッが流れる。何かしら何かしらドキドキと思う。

 それから映画公開前にトーク番組に出て、今で言う番宣をしたんだ。様々な企業とタイアップして鮫Tシャツとか鮫おもちゃとか鮫水鉄砲とか、ありとあらゆる製品を作って売った。

 これらは『ジョーズ』以前は大規模には行われていなかった試みだ。今のハリウッド的手法の魁だな。マーケティングの成果。


 映画が公開されたのは当然夏。

 当初も464館、最終的には950館以上の映画館で公開された。収益も凄い。初週で700万ドル、初年度で1億2310万ドルに達した。制作費は900万ドルのようだから、投資金はあっという間に回収され、最終的な興行収入は4億7200万ドルだそうだ。凄い。

 そして次の夏にも当然『ジョーズ』は帰ってくるのだ!

 監督は違えども今でも毎年鮫は帰ってくる。


3.ジョーズ・サマー

 さて、随分映画外のところで勝手にもりあがったけど、ようやく映画の中身に入ります。マーケティングだけバンバンんやっても駄目なやつは駄目なわけで、映画自体も優れている。ほらこの間書いたやつとは違うの。


 あらすじ

 鮫が来る!


 これ以上でもこれ以下でもないな、うむ。

 スピルバーグ監督は原作をかなり変えたらしいとは聞いているけど、原作を読んでないからその違いはよくわからない。けれども映画を見ると、徹頭徹尾鮫に寄せているのはわかる。


 『ジョーズ』で1番印象に残るのはやっぱあの音かな。

 ダーダンッ!

 うん、あの音はすごい。ダーダンッっていう不協和音。あれは鮫の心音を表現したっていう説もあるけどそんなことはさておき心臓がびくつく。

 あれが聞こえるとヤツも来る。少なくとも近くにいる。しかも音はすれども姿は見えないという展開が序盤ずっと続いて海全体が恐怖フィールドと化す。ヤツはいつどこからくるかわからない。海際にいる限りは。

 その怖いもの見たさの誘導としての強烈な刷り込み。どんぶらこが桃が流れるときしか使われないように、ダーダンッは『ジョーズ』の来訪を知らせる時の鐘。


 エモい。


 それから『ジョーズ』の主人公は鮫だ。

 何を今更感はあるかもしれないが、これは凄いことなのだ。最終的に『ジョーズ』は倒されるけど、この映画にヒーローはいない。登場人物のキャラクター造形は『鮫を倒す』以外の人生に割かれている。

 本音が理解できる市長、海に入ろうとしないブロディ、ヒョロい海洋学者、老いた漁師。どいつもこいつも絵面的にも全然パッとしない。どうでもいい日常会話から深堀りされていく人間ドラマ。

 キャラクターの個性を印象づけるドラマを描くにもかかわらず『鮫を圧倒するヒーロー』という目を引くアクションものの王道を置かない結果、あらゆる存在感の1番前に出てくるのが『ジョーズ』、次点で感情移入できるどこかモブい登場人物たち。この映画の主役はどこまでも無名の鮫である。


 この構成は滾る。そのうち殺人鬼ホラーで小説書くときに使おう、うん。

 肝心の『ジョーズ』自体の特撮造形は今からみるとチャチくはあるのだけど、そこは仕方なくて、でもそれを有り余る迫力があるからOKOKと思っています。船より少しだけでかいという縮尺も結構絶妙なところをついていると思う。

 現場では撮影に伴い色々と撮影トラブルがあったらしいです。やっぱり自然は大変だ。

 さて、あまり細かく書いてもつまらないので、『ジョーズ』については是非見ていただきたい、ということで終了。


4.ジョーズ・チルドレン

 こっからは『ジョーズ』の子孫たち。


 夏は鮫!


 これがもたらした強烈なインパクトは当然他の映画監督を刺激した。

 そして雨後の筍のように大量のサメ映画が発生する。サメ映画は「恐怖」にふるパターンと「笑い」にふるパターンで両極端だな。その中でいくつか紹介してみます。


【本編の正当続編】

 本編のジョーズは2以降は別の監督作品になっていて、4作目の’87復讐編で終了してる。最後のはブロディが亡くなった後に鮫がバハマまで追いかけてくる話で、なんとなく哀愁漂う。でもブロディ一家以外襲わないから出来は微妙だけど。


【多頭シリーズ】

 初出は『ダブルヘッド・ジョーズ』というやつなんだけど、今は確か4作目で頭が6つになっているそうです。自分は2頭と3頭しか見てないな。

 基本的にタイトル落ちでそれ以上でもそれ以外でもないのだけど、バンバン人が死ぬのでB級サメ映画としてはそれなりに面白い。6頭は見てないけどなんとなく造形が鍋敷きみたいな形状になっている。

 これ以上増やせるのかな。そのうち見よう。


【空とぶ鮫シリーズ】

 『シャークネード』っていうシリーズなんだけど、竜巻で吹き上げられた鮫が降ってくるっていうトンデモ悪ノリ映画。鮫はもう海を捨てたのだ。

 5まであって1,2,5を見た。3は宇宙に行くらしいからちょっと見たい。

 これは正直ギャグに振り切ってる映画。笑える。空から降ってくる鮫をチェーンソーで切りとばす。もう何を言っているかわからない気もするけど、B級好きにはわりにおすすめできる気がする。

 『フライング・ジョーズ』っていう映画もあるけどこれはあんまり飛ばない。


【融合したシリーズ】

 鮫は色々なものと融合します。見た中では『シャークトパス』のシリーズがイチオシです。前半分が鮫で後ろ半分は蛸なの。地上で稼働可能。エラ呼吸ってなんだっけ? 動きが猫っぽくて可愛い。しかも寸詰まりでバランスが悪い。

 基本的にサメ映画好きってストーリーを気にしないよなっていう作品。

 巨大サメが色んなものと戦う『メガ・シャーク』というシリーズも結構好き。鮫の幽霊に襲われる『ゴーストシャーク』は発想は嫌いじゃない。でもポスターなんかを見ても分かる通り、この融合系は正直鮫なのか? という疑問が出てくる。『ディノシャーク』とかは顔がティラノサウルス(モササウルスに見えるけど)とかよくわからないことになっている。微妙。

 どこまで原型を保てば鮫と言い続けられるのか、案外哲学的な話なのかもしれない。


【その他のオススメ】

 『鮫』がついてないけど『パニック・マーケット』というのがあって、津波に襲われて水浸しになったスーパーの中で鮫が泳いでる。これは日常感があって結構好きかった。

 他にも『オープン・ウォーター』とか『ディープ・ブルー』とかは恐怖に振ってる感じ。全然書ききれないけど、サメ映画というのはものすごくたくさんあるんだ。


 なお、上記に上げたのは比較的オススメだが、駄作の量も無尽蔵だ。寧ろ面白いサメ映画なんて氷山の一角に過ぎなくて、まあ、サメといえばたいていは駄作なのだよ。

 ということで夏は鮫だ!

 来年の夏もきっとサメ映画がやってくる!

 それを心待ちにしよう。


 当エッセイは常にリクエストを募集しております(見てなければリクエストに添えないすみません。)。お気軽にどうぞ!

 See You Again★

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