33. 開拓スコア

 黒モグラを退治した次の日。


 モルットは石化毒の影響もなく元気に動き出した。ルドも安心したみたいで、朝から一緒にはしゃいでいる。


 ひぃすけたちがモルットを見る目も大きく変わった。今までは普通の同僚、もしくは先輩といった感じだったけど、今日は英雄扱いだ。実際、モルットがいなければ僕は死んでいたかもしれないからね。英雄的な働きだったことは間違いない。


 この扱いに、モルットも満更ではないみたい。開拓地のために働くと張り切っている。脱ペット計画も再び頑張る気になったようだね。まあ、今日の仕事はルドの遊び相手だけど。


 僕はというと、ブランの中身を再チェックしていた。

 青白く光ったり、黒い球体も出していないのに旧神ボールを吸収したりと、気になることが多かったからね。もしかしたら、何か異常が起きているかもしれないと思って。


「あ! ブラン、記述が増えてるよ!」

『そ、そうですか。ですが、恥ずかしさを堪えてるんです。この状態の時は話し掛けないでください!』


 ……恥ずかしいの?

 本なのに読まれると恥ずかしいって、存在としてどうなんだろうか。


 まあ、いいか。


 見ているのは最初の一ページ目。転移初日に確認したときには、一文しか記されていなかったけど、結構色々と加筆されている。僕の行動が、この開拓記のストーリーとして自動的に記されているみたいだ。


 黒モグラについても書いてあるね。“旧き神の暴走した力の一部を鎮め回収した”か。この一文だけで考えれば、悪いことではなさそうだ。まあ、詳しい情報はあいかわらず全然わからないけど。


「ん? こんなページがあったんだ!」


 ペラペラと捲ってたどり着いた最後のページ。そこには開拓進捗というタイトルで情報がまとめられている。どうやら、ゲームの情報画面のように自動的に更新されるみたい。現在のスコアや達成したミッション、次の推奨行動なんかが記載されている。


「うーん。開拓スコアが経験値で開拓ランクがレベルみたいなものかな? 今はスコアが20でランクが2なのか」


 開拓スコアは何らかの実績を達成すると得られる点数のようだ。実績は色々とあるみたいだけど、例を挙げるとこんな感じ。


・現地人と接触した(+1)

・拠点作成(+2)

・木材ポイント規定値(1000)突破(+1)


 プラス表記で書かれているのがスコアの加算値だ。ランクが上げるメリットは明確にはわかってないんだけど、おそらく作れる道具やユニットが増えるんじゃ無いかと見ている。ブランが建物を作れるようになったのはランクアップしたからじゃないかな。達成した実績から推測すると、ちょうど10を超えたくらいのタイミングだったと思う。同時期に作れるユニットも増えたそうだから、きっとそうだろう。となると、次のランクアップは25か30ってところかな。


 ブランの制限が外れるのなら、積極的に実績達成を目指したいよね。だけど、怠惰の神様の不親切設計によって、達成するまで実績の内容はわからないみたい。達成済みの実績からある程度推測はできるけど。


 おそらく、ヒントになっているのが『推奨行動』という項目だと思う。今だと、『資源ポイントを集める』、『人口を増やす』という内容になっている。


「ブラン、ありがとう。もういいよ」

『そ、そうですか。ふぅ……』


 ページを閉じてお礼を言うと、ブランは僕の手からふよふよと飛び立った。深呼吸するかのように、ページを開いたり閉じたりしている。


「人口を増やす、かぁ。どうすればいいかな」


 資源ポイントは継続的に集めているから、特に問題はない。たぶん、食料やマナが1000ポイント超えればスコアが加算されると思うので、そのラインが目標かな。


 問題となるのは、人口の方だ。考えられる手段としては、近くの村や町に行って移住を呼びかけることだけど……他国の住人を勝手に引き抜いたりしたら、怒られるかもしれない。それに、魔物が多い樹海に移住しようと考える人がいるだろうか?


『手段もそうですが、実現したとしても食料の問題がありますよ。ユニットよりも人間の方が、維持コストが高いですからね。無計画に増やすと大変です』

「維持コストって……」


 ブランの言いように思わず苦笑いがこぼれる。まあ、実際にその通りなんだけど。

 食料ポイントでいえば、僕やミアたちは一日に10ポイント弱を消費している。鼠人の維持コストが1、猫人が2、クマドンでさえ4であることを考えると消費量が多いのは間違いない。それに加えて衣服などで植物ポイントを使うので、人間の維持コストはかなり重い。


 開拓領域を維持するだけなら、ユニットを増員する方がはるかに効率がいいんだよね。とはいえ、ユニット保持数には制限がありそうだ。開拓進捗のページにはユニット数の記載もあって、その表記が39/50になっているからね。おそらく、ユニットを維持できる上限が50なんだと思う。スコアによって上限数も増えるんじゃないかと思ってるけど、それがいつになるかはわからない。ユニットも無計画に増やすわけにはいかないんだ。


 それに開拓の目的って、基本的には人が住める場所を増やすことだと思うんだよね。それなのに肝心の人がいないという状況は望ましくない……というか、実績に関して頭打ちになるんじゃないかと思っている。


「資源に関しては仕方がないよ。せっかく開拓しても人がいないんじゃ、もったいないと思うし」

『そうですね。少しずつ見極めながら増やす必要はあると思いますけど』


 ブランも反対ではないみたい。ただ、無計画に増やしては駄目だと忠告してくれているんだと思う。ユニットは一気に増やしたからね。同じ感覚で人を増やしたら、支えきれない可能性は高い。


 とはいえ、そんな心配は杞憂なんじゃ無いかな。むしろ、人が来ないことを心配した方がよさそうだ。結局、どうやって人を集めればいいのか、という問題にぶつかる。


「一度、近くの街に行ってみようか」

『それがいいかもしれませんね』


 ここであれこれ考えても名案は浮かんでこないだろうし、実際に行動した方がいいだろう。上手くいかなかったとしても、次の行動に繋がる手がかりは得られるかもしれないしね。


 街かぁ。転移してからずっと森の中だったから、ちょっとワクワクするね。

 といっても今すぐにとはいかないかな。僕が街に出かける間、拠点をどう維持していくか。考えて準備しておかないと。


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異世界二十一日目朝


食料pt:550

木材pt:22487.2

金属pt:11.6

土材pt:たくさん

石材pt:42.3

薬効pt:7.8

植物pt:824.2

動物pt:252

マナpt:535

旧神pt:2

住人:3

ユニット:39

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