最終話 三十路魔法少女 キューティーチャーミサキの幸福

 今わたしは、アヤコから化粧をしてもらっている。


「まさか、ミサキが結婚とはねえ」


 アヤコが、わたしの口にリップを塗ってくれた。




 登山ピクニックの帰り。

 苺谷いちごだにが、わたしにプロポーズしてくれた。


 リクくんのこともあって考えを躊躇していたが、リクくんすら関係なく、わたしは受けることにしたのである。


 それが、自分にとってベストな答えだと思ったから。

 


「わたし、幸せになっていいのかな?」


「まだリクのこと、気にしているの?」


 未だにわたしは、リクくんが苦しんでいるのではないかと感じている。


 わたしが、彼の初恋の相手を奪ってしまったから。


「大丈夫よ。あの子は、自分で乗り越えたの。苺谷さんとの別れがあったから、彼は魔女を祓うことができたのよ」


 リクくんは割り切って、今日の式にも来てくれている。


 ならば、わたしは自分が大丈夫だと示そう。


「それにねえ。不思議なのよ。キテラを追い出したら、リクったら、苺谷さんのことを全然興味がなくなったの」


 性格が女性だから『上書き保存』になったのか、あるいは他の要素があるのかは、わからないらしい。


「ささ、お父様がお待ちよ」


 アヤコにつれられて、わたしはバージンロードで待つ父と腕を組む。


 ロードの先には、タキシード姿の苺谷くんが待つ。


「き、きれいです。ミサキさん」


「ありがとう、勇作ゆうさくさん」


 ようやく、わたしは夫を下の名前で呼ぶことに慣れてきた。


 でも、ついこの間まで後輩だった子と結婚なんて。


 年下キラーになったつもりはないんだけどなぁ。


 神父様から、指輪の交換を指示されて、従う。



 誓いの口づけ……という矢先、外が騒がしくなった。




 何事かと思って、外へ出ると。


「世界征服とかはもういいから、あんただけは幸せにしてやらない! 結婚式なんて、ぶち壊してやるわ!」


 どうやって復活したのか、魔女キテラが現れた。


「キテラ! また性懲りもなく!」

「いいじゃない! 旦那様候補を取られたんだからーっ!」


 なるほど。惚れていたのはリクくんじゃなくてキテラだったのか!


「さあ、決着をつけようじゃない! あんたとあたし、どっちが苺谷勇作にふさわしいか!」

 

 結……局、こうなるのかよーっ!



「ゆ る さ ん!」



 わたしは、髪留めに手をかけた。 

 

(完!)

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教え子じゃなくて、わたしが魔法少女なの!? ~三十路魔法少女教師 トキメキューティーチャー・ミサキの受難~ 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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