第25話 二人の傷痕

「なにをする!?」


 あやかし仮面たちのリーダーが、わたしを責める。


「コイツらは、もう傷ついてるんだよ! お前らのしていることは、傷に塩を塗るような行為だ!」


「では、どうしろというのだ!?」


「二人に任せろ。といっても、もう決着は付いているが……」


「なんだと? それはまことか?」


「おそらくは」


 多分、わたしの予想通りだろう。


 なぜ、キテラが復活したのか。


 リクくんが魔女になってしまった原因も、苺谷いちごだにくんがこの街にきた本当の理由も、すべて辻褄が合う。


「苺谷くん、ひょっとして、リクくんから告白されたんじゃないか?」


 できれば、考えたくなかった。


 しかし、そうとしか思えない。


「ミサキ先輩!? 知ってらしたんですか?」


「いや。どう考えてもタイミングがよすぎてな」


 魔女が生まれた時期と、あんたがこの街に来た時期が近かった。もしかして、と思ったのだ。


「でも、本人から直接聞きたくてな。黙っていた」


 しかし、周辺はそういっていられない状況まで追い詰められていた。どこかで話し合わねば、と思ったのである。


「けれど、あんたは断ったんだな?」


 性別が問題なのではない。


「わたしの、せいだよな……」


「そんな! ミサキ先輩が悪いんじゃない! 悪いのは、リクくんの思いに応えてあげられなかったボクの」


「わたしのせいなんだよ!」


 リクくんは、わたしが傷つけてしまった。教師としてではなく、女として。


 だから、これはわたしが決着を付けないといけない。


「いつまで死んだフリしてやがる? ケリをつけるぞ、魔女!」


 魔女キテラの腕を軽く蹴って、起こす。


「なんなの? リクの心を踏みにじった挙げ句、肉体にまでダメージを与えるつもり?」


「ああ。でも、お前を倒すのはわたしじゃない。リクだ」


 わたしが宣言すると、魔女キテラは大笑いした。


「呆れた! リクはもうアタシが取り込んだわ! もうあんたの言葉なんて届かない! もはやアンタはリクの敵よ!」


「それでいい!」


「なんですって?」


「リクは、わたしが相手になる。大好きな人を手にしたいなら、強くなるしかないんだ! リク! そんな魔女のガワになんかに頼るな!」


 リクくんには、自身の手で、欲しい物を掴んでほしい。


「この子を魔女にしてしまったアンタが、それを言うわけ? ブーメランもいいところだわ!」


「わたしにしか言えない! リクから大事なものを取り上げてしまったわたしだから、言うんだ。あんたなら、できる! だから、わたしに髪留めをくれたんだろ?」


 そうだ。わたしはリクくんから、大切なものをもらっていたのである。魔法少女になる髪留めを。


「わたしに助けてほしかったんだよな? わかるよ。でも、本当に助かりたいなら、わたしだけの力じゃダメなんだよ! アンタ自身が立って、魔女を追い出すんだ! できる! リクになら!」


「うるさいババアだね! 死んじゃえよ!」


 わたしとキテラの、最後の戦いが始まった。

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