第26話 デジャブ
「……最高!」
アラームなどに起こされることもなく、自分の好きな時に起きれる夏休みは、最高である。マジで神だ。
「夏祭りまでは宿題はいいか」
と、机にある宿題を無視し、俺は出かけることに。ちなみに夏祭りは8月前半にある。まぁ、それぐらいから始めるなら間に合うだろう。
「河原町。次は河原町です」
このアナウンスが流れているってことは……
「やっぱオタ活は最高だなぁ」
とボソッと呟き、ウキウキルンルンで改札口を出る。
すると、ある女の子が絡まれているのを発見した。他の人は、見ないふりをしている。何しろ、男たちはいかにもヤンキー集団っていう感じで人数も多い。
小鳥遊がいたらなぁ……と思いつつ、俺は見ないふりをしようとした。ただ、絡まれている女の子を見ると、夏休みと言うのに制服を着ている。しかも俺らの学校と同じ制服だ。
俺は気になって、その女の子がだれか確認する。あれっ、こんな事前にもあったような気がする。
その女の子は、よく知っている子だった。名前は、桜葉瑞希。学校のアイドル的存在かつ俺らの友達である。近頃は、祐樹とも仲良くやっているのだそう。
すると、瑞希と目が合った。2回目、ということもあり俺も少し冷静だ。
「あの~あそこで絡まれている人がいるんですけど」
と駅員さんに連絡し、そのヤンキー集団は捕まった。2回目だったので冷静に対処できたな。
「今度は助けたんだ」
と、嫌味そうに言う瑞希。
「うるせぇやい。俺も色々な女の子と出会って、変わろうとしてたんだよ。まだ全然だけど。そういや今度は、ヤンキーを撃退するものは持ってなかったのか?」
俺だって変わろうとしてるんだよ! なお現在。
「持ってたけど、斗真君が見えたからさ。使わなかったよ、えへへ」
いやどういう感情なんだよ。
「そりゃあ、有難いことで」
「ねぇ、ちょっと話さない?」
俺と瑞希は、駅の椅子に座り、ちょっと話すことにした。この頃、瑞希とこうして2人で話すこともなかったような気がする。
「そういや、祐樹とは結構遊んでるよな。順調か?」
近頃、瑞希と祐樹はよく一緒にいる気がする。
「まぁ、祐樹君も優しいし、楽しいよ。斗真君も今やモテモテ、になってしまったし。人生楽しそうで何よりだよ」
「そういうと語弊があるんだが……まぁ大変だけど、前よりは楽しめてるかな」
確かにモテていると言えばモテているのだが、それで調子に乗るっていうことはない。
自分が見合った男になる、そして一人を選ぶ。とても難しい問題だ。
「えっち、だね」
「それもう使うのやめなさい」
俺と瑞希も出会ってしばらく経ち、フランク、というかより親密な関係になった気がする。瑞希も結構ふざけるような絡み方もするようになった。
「それでさ、斗真君は誰を選ぶんだろうね。やっぱりタイプ、ってあると思うし」
「タイプねぇ。まぁ、皆可愛いし、性格も良いからなぁ。そっちこそ祐樹と付き合うことは考えないのか?」
「……祐樹君とは別にいいかなぁ、と言いますか、まだそこまでと言いますか」
祐樹、強く生きろよ。そして頑張れよ。
「てか、何で制服姿なんだ?」
ここで俺は、気になったことを質問する。
「いや、ちょっと塾に行くから」
そういえば、瑞希は塾に通っていたな。
「夏休みなんだし、私服でいいだろ」
「えっ、そうなの!? でも言われてみれば、そうね」
「そういや瑞希の私服とか見たことなかったな」
歓迎会とか色々あったけど、全て制服姿だったな。
「そういえば、そう? かな。夏祭りは辞めた方がいいのかな」
「夏祭りはやっぱり浴衣じゃないのか? まぁ俺は普通に半袖シャツで行くけど」
俺は浴衣なんてものは着ない。理由は単純だ。面倒かつ動きにくいからである。だから俺は見る専だ。
「そっか、皆浴衣着るのかぁ」
そういや瑞希は、あまりこういう知識には疎かったな、と思う。
「まぁ、瑞希の私服とかは気になるけどな」
「じゃあ今度遊ぼうよ。その時に見せようかな」
「そりゃ、楽しみだ」
どんな凄い服を着てくるんだろうな……
「さっ、話しすぎてもいけないしそろそろ行こうかな。斗真君はこれからどうするの?」
瑞希は、そういって立ち上がった。
「オタ活だよ」
「あっ、そっか! また斗真君のおすすめ教えてね。面白かったから」
「おう」
布教生活は、順調に進行している
「ねぇ、斗真君は人生楽しい?」
改めて瑞希が俺に問いかけてくる。
「まぁ、たまに理不尽なことに逃げ出しくなったり、叫びたくなることもあるけどね。でもさ、色々受け入れてくれる人がいて、好きになってくれる人がいて。人生ってしょうがない部分もあるしさ、前よりだいぶ楽しめてるよ」
人生に楽しさを感じるようになった。好きだと言ってくれる人もいた。
それに最近思うようになったこちがある。人生にはこの理不尽さがちょうどいいのだと。だからこそ、頑張って生きようとして楽しさを見つけようとするのではないか、と。
「よかった。じゃあ、またね!」
俺がそういうと、瑞希は笑顔で手を振って塾に向かっていった。
ふと、俺の中に新しく、今までで最悪な選択肢が思い浮かぶ。
それはダメだ、とその考えを封印し、俺は駅を出た――
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