第43話
「関節回りを強化いたしました、クーナちゃんが作ってくれたリミッターも搭載しましたのである程度問題点も解消されたと思います」
首脳会議について行くことが決まりザラタンへの機体の搭載が完了し、最終調整を行っていた。
「最高性能は制限されましたがパワーは据え置きのまま操作性は向上したと思われます」
「システム系への負荷はどうなってます?」
「バーストモード及びMAXモードの起動時にどうしてもダメージを受けますね。現行の機材ですとエーテル反応に対応しきれないというのが……」
「現在、エーテルに対応した素材を利用した新型装置の開発が進んでおります。そちらが完成するまでは改善不可能な問題です」
ドラクスエーテリオンは新たなエネルギーとして確認されたマナをエーテルとして変換、機体の出力を増大させて性能を大幅に向上させるというシステムが組み込まれている。しかし癖が強く操作性が悪化しパイロットを選ぶ欠陥機となってしまっているのが現状だった。
「アオイさんもすみません、こいつの調整に着き合わせちゃって」
ドラクスはじゃじゃ馬で整備長のアオイさんに付きっきりで面倒見てもらい、システム面もクーナのサポートを受けて構成しているのだ。
「ベオルクスの方はドラクスの実戦で見つかった欠陥を軽減するためにある程度の性能低下を引き換えに操作性を向上していますからね、この子ほどの手間はかからないんですよ」
「バラット様、そろそろ時間です」
「了解、アオイさんちょっとお願いしますね」
「お任せください!」
俺はドラクスのコックピットから飛び降り、下で待っていたクーナと共に会議室へと向かった。今日は例の総督様との顔合わせなのだ。
「お待たせ」
「いらっしゃい! 待ってたわよ」
会議室に着くとすでに皆揃っていて席に座っていた。俺とクーナが席に座るとレイカは周りを見渡して話し出した。
「ゲンジさんは今回お休みになります。足が結構な重傷でね、まだ繋がり切ってないの」
男一人とか勘弁してほしい。影虎のメンバーは話したことないし肩身が狭すぎる。
「これからザラタン・セカンドはオーストラリアに向かいます。会議の舞台がここになったのは魔獣被害が少ないというのが理由ですね」
「オーストラリア海洋連にはネームドがまだ確認されておりません」
クーナが補足説明をしてくれる。
「そう、もちろん会場警備は海洋連軍が受け持つから現場まで機体で護衛に行くとかは無理ね」
そりゃ各国のドロイドがごちゃごちゃに集まったら最悪大パニックに陥るだろう。
「警護については都合上隠密で影虎に周囲警戒、同行という形でノールちゃんとバラット君にお願いしたいの」
「ティアさんに同行してもらうのはダメなんですか?」
「私達はあくまで隠密任務がメインですので。それにお二人の方が護衛としてうってつけだと思いますよ?」
ゲーム時代一応歩兵でも遊べるように練習もしたしナノマシンのお陰で現実でもゲーム内同様に動けるらしいが実際どうなるかはわからない。
「そうかなぁ?」
「もしもの時、館内戦闘になった場合近接戦が得意な二人が適任なのよ」
「バラット殿、やりましょう!」
ノールはすごいやる気だ……役に立てると張り切っているのだろうか。
「わかりました、やりますよ」
「ありがと! じゃあ今回一緒に会議に向かう三大総督が一人、キクリ様を紹介するわね」
「やっとかね、まったく。レイカは話が長いんじゃ」
声が聞こえバッと全員が後ろを振り向く。そこには和風な着物を着た十二歳くらいだろうか? 小さな少女が座っていた。しかも気配も何も感じなかった、影虎のメンバーすら気づけていなかったのだからとんでもない。
「ご紹介にあずかりました、キクリでございます」
前に出てきた少女は礼儀正しくお辞儀してみせた。よくよくみると額には二本の角が生えている。
「鬼? ですか」
「左様、ワシは鬼族の頭目もしております」
「ちなみに、こう見えて五百歳越えのおばあちゃんよ」
「えっ!?」
全員がぎょっとして驚いた。
「余計なこと言うんじゃないよ小娘!」
「いったぁぁい!!」
キクリ様はそういうとレイカさんのお尻を思いっきりつねっているようだ。
「なにするんですかキクリ様!!」
「今回は世界がワシらのような亜種人族を受け入れられるかどうかを試すこともかねております。何が起こるかわかりませぬうえどうかよろしくお願いいたします」
再びキクリ様はお辞儀をして見せた。確かに魔獣にばかり目が行くがエルフや獣人を始めとした亜種人も今後、数多くやってきてしまうことだろう。それを受け入れて共存できるかどうかを確認したいということなのだろう。
「任せてください」
流石にここは空気を読んで全員敬礼してみせた。軍属じゃないけどその場のノリとかも大事だろうと思う!
「明日早朝には出発予定だから、皆よろしくね!」
そして俺達は全国のお偉いさんの集まるオーストラリアに向けて出港したのだった。
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