第41話

「今日はよろしくお願いします」

「ノール、よろしく」

 少し眠気を感じるが支障はないだろう、今日は実機によるノールの訓練に付き合うことになっている。

「一応シュミレーターで基本的な操作はレミーア殿から教えていただきました」

「了解、じゃあ基本的な移動訓練と少し戦闘もしてみようか」

「はい!」

 本日はワンツーマンで教えようという話になり俺がノール、レミィがエミリアの指導に入っている。これは二人の素養を考え戦闘スタイルの相性がいい人が教えようということになったからだ。

「お二人の補足、バックアップはワタシがしますのでご安心を」

 昨日はなんだったのというくらい普段通りのクーナも訓練のサポートに付き合ってくれているのでよっぽどのことが起きても対応できるだろう。

「基本は問題なし?」

「昨日のデータを見る限り問題ないかと」

 クーナが昨日のシュミレーターの結果を確認し答えてくれる。

「ノール、とりあえず少し感覚が違うかもしれないけど動かし方は一緒だから落ち着いてね」

「わかった」

「それじゃ、起動!」

 片膝をついた状態でスタンバイしていたレクティスを起動させる。機体は右手にアサルトライフル左手にシールドの基本装備で白を基調に胸部と肩部がオレンジに塗装された訓練機だ。

「起動する」

 二機はゆっくりと立ち上がる。ノールは感覚を確かめるように両腕を動かしたり軽く歩かせたりして試しているようだ。

「いけそう?」

「問題ない!」

「じゃあついてきて」

 機体を歩かせ始め、次第に早く、そして走らせて平地を駆けていく。ノールも問題なくついてこれているしこれなら大丈夫だろう。

「じゃあ銃で照準を俺に合わせながら円を書くように移動してみて」

「わかった」

 センサーがロックオンされたことをアラームで知らせる。それを聞いてから向かい合い円を書くように相手を見失わないよう走って行く。この技術は銃撃戦で敵の攻撃を回避しながらこちらも反撃するなどという場面で必要になる大事なことだ。

「大丈夫そうだね、クーナ、密林での走行訓練に移るからルートを」

「了解いたしました。ルートを転送いたします」

「ノール、足場の悪い環境での移動訓練開始するからついてきて」

 クーナの指定したルート通りに密林を駆け抜ける。人と同じ二足歩行を採用しているのはこういう足場の悪い環境でも安定した移動能力を維持させるためというのが大きいらしい。ちなみに更に環境に特化させた多脚型などのパーツも存在している。

「うおっ!? なんの!」

 走りながらだと足を取られて倒れそうになったりもするが、元々戦士であるノールは筋がいいらしくどうにか踏みとどまり器用に駆けていった。しばらく密林地帯を走って行くと砂浜へと到着した、ちなみに昨日ドラクスで吹き飛ばしたエリアとはまた別の演習場だ。

「走行訓練終了です。射撃訓練へと移行します」

「海に浮かんでいる的が見える?」

「見える、大丈夫だ」

「それを撃って射撃練習だよ」

 ノール機は銃を構えて発砲を開始した。元々剣や槍を使っていた戦士だったらしく近代兵器の扱いは苦手みたいだ、なかなか的を捉えることができていない。

「反動制御は機体がオートでしてくれるからよく狙って」

 ドロイドは射撃の反動制御や弾道予測などある程度の補助はシステム的にしてくれるが照準を合わせたりはパイロットの腕に丸投げされてしまうのだ。ちなみに敵から銃を奪ったりデータ登録の無い武器を使う場合はデータをインストールするか完全手動操作で対応しなければいけなくなる。

「結構当たるようになってきたね」

「これだけ当たれば及第点だと思われます」

 しばらく射撃訓練を繰り返していると命中精度も上がってきた。これなら実戦でも対応できるだろう。

「次は俺と近接戦の訓練でもやる?」

「望むところだ! 是非お願いしたい!!」

「訓練用ソードを用意します」

 砂浜からソードをマウントした機械ウェポンソケットが飛び出してくる。それを俺達は受け取り、対面に位置取り剣を構えた。

「訓練、開始してください」

「はぁ!」

 ノールは大きく振りかぶり突っ込んできた。俺はそれを少し横に反らすだけで躱し足を掛けて転ばせる。

「うわぁ!?」

「単純な大振りは通用しないよ」

「まだまだぁ!」

 突き、横払いと様々な剣技でノールは攻めてくる。流石戦士という感じだろうか、一般の兵隊よりいい動きをしている。

「いいね、じゃあこっちも行くよ!」

 回避に徹していたがここからは攻めても行く。ノールの振り抜いた瞬間にステップを踏み懐に一気に飛び込み蹴り飛ばす。

「くっそぅ……まだだ!!」

 この後もしばらく近接戦の訓練を続けた、ノールの飲み込みは早かったがやはり新人兵士のようなぎこちなさは残っている。もうしばらく慣熟には時間がかかるだろう。

「今日はここまでにしようか」

「ありがとう、ございます」

 息も絶え絶えになりつつくらいついてくるノールは流石のタフネスだ。

「本日の訓練終了。いいデータが取れました」

「じゃあ戻ろうか」

 そして俺達は格納庫へと戻って行った。

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