第27話
ピピピと音を立ててカプセルが開き意識が回復する。
「ん~……」
体を伸ばしながら感覚を確かめる、特に変わった感じはなかった。
「メンテナンスついでに新型のナノマシンを投入いたしました」
「なんか違うんですか?」
「対抗術式が増えております、今後激しくなる戦闘を想定しての調整となっております」
「わかりました」
俺は服を着てメディカルセンターを後にするといつの間にかお昼を過ぎていた。
「アオイさん」
「あ、バラットさんいらっしゃい。また暇つぶしですか?」
「そんなとこです」
俺はまたザラタンの格納庫にやってきていた。
「ガルーディアこっちに持ってきたんですね」
「はい、完成してるのはいいんですけどOSがバラットさんベースの急造品なんで例のAIちゃんとバラットさんだけなんですよ」
「それでここに配備されたんですね」
「そういうことです、今後空戦機として量産ラインに載せなければいけないのでデータ収集とOSの最適化が目的ですね」
「でも空戦機って使いどころ選びますからね」
実際陸戦をするならレクティスの方がいいだろうし、状況に合わせて乗り換える感じになりそうだ。
「あ、あと例のAIですけどクーナって呼んであげてください、喜びますから」
「わかりました」
アオイさんはそう言うとにこっと微笑んでくれた。
「ところで、いろいろ積み込んでるみたいですけどなにかありました?」
「出撃準備の伝令がきたんですよ、そちらにも近いうちに召集かかるんじゃないですか?」
噂をすればなんとやらと言うが、話しているとDギアにメールが入ってきた。
「この後会議室に集合だそうです」
「いってらっしゃい!」
俺は格納庫を後に集合場所の会議室へと向かった。
「バラット君いらっしゃい! あなたが最後よ」
会議室に着くとすでに全員揃っていて俺が最後だった。
「早速で悪いんだけど依頼よ」
俺が席に着くとレイカさんは早々に話し始めた。
「南米西部の街が大量のバジリスクに制圧されてしまったの。今は現地の南米連合軍が生存者を集めてどうにか抵抗してるけど全滅は時間の問題となっています」
核が消え、魔獣が現れてから国の在り方がだいぶ変わってきている。今までのように独立した国としてやっていける状況ではなくなり止むおえず連合や同盟など纏まって来ていたのだ。
「バジリスクの群れ? それって戦えてるの?」
「南米にはレクティスを提供してたからどうにか戦えてるみたいよ」
バジリスクはトカゲのような姿をした大型の魔獣で高い耐久力と熱耐性のある鱗に身を覆われている。つまりミサイルや絨毯爆撃を行っても倒せないのだ。
「爆撃を実施したせいで街は廃墟同然、バジリスクも健在。最悪そこを繁殖地としてバジリスクが大陸を支配する可能性すらあるわ」
「それで俺達に行けと?」
「南米連合からの正式な依頼よ、受けるかどうかはあなたたち次第だけど」
「石化対策はできているんですか?」
バジリスクの最も厄介な能力、石化の視線だ。これは頭部中央にある呪いの魔眼で見つめた生物を石化させるという超厄介な能力を持っているのだ。
「石化した人を元に戻す魔術薬も完成してるし、配備機体には対呪術フィルターを装備しているから対策は万全よ」
「どうする?」
「バジリスクはめんどくさい相手ですが素材は優秀ですし利益的には倒したい魔獣ではあるんでしょうね」
「ご明察、バジリスクの素材が欲しいのもあるわね」
「ちなみに武器はどうなってます?」
「近接装備から貫通力重視の弾丸を用意しているわ」
武器的にも問題なさそうだ。
「あれは繁殖力が強いから放置するとあっという間に広がっちゃう」
「作戦としては現地軍と協力してバジリスクの殲滅と市街地の確保が目的で、倒した死骸とお金が報酬ね」
「バラットさん、ワタシは助けてあげたいです」
Dギアから突然声が聞こえてきた。
「クーナ? でも今回の場所は俺達には関係ないと言えばないんだけど、それでも?」
「はい、人同士協力し合うべきですし、ワタシは笑顔の人々が見たいのです」
周りの皆をみやる、もうどうするか決めているようだった。
「わかったよ、レイカさんその依頼受けます」
「ありがと! 頼りにしてるわよ!!」
「ワタシも全力で支援します」
「じゃあ皆、装備構成とかもろもろ決めちゃおうか」
「了解ですぞ」
「うん」
「はい!」
「ザラタンはこのまま南米に向けて出港するから、よろしくね!」
断られないと踏んでいたようで出航までがスムーズだ。考えてみれば機体の調整とかもしてたしあらかじめ準備していたんだろう。
「レイカさん、ニードルレインは使うの?」
ニードルレイン、ミサイルの一種で高高度から目標地点に向けてスパイクの雨を降らす広範囲の生物殺傷にもってこいの兵器である。
「一応使う予定だけど、場所が市街地なのもあって遮蔽物も多いしあまり効果機体できないわよ」
「少しでも減らしたいしお願いします」
「了解よ」
「じゃあ皆、機体の準備をしてしまおう」
こうして俺達は自分たちの機体の準備を開始するのであった。
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