第20話
「ん? 連絡か」
俺はシャワーを浴び、髪をタオルで拭きながら部屋を歩いているとモニターの隅が点滅していた。これは電話も兼ねていて要は留守電が入っているような状態だった。
「バラット君、もうすぐ基地に到着するんだけどいろいろ説明あるしいつも使ってる会議室に集まってちょうだい。よろしくね!」
留守電を確認するとレイカさんからのこのような内容の連絡が入っていた。俺は服を着替え部屋を後にした。
「バラット君待ってたわよ~ささ! 座って座って!」
会議室に入るとどうやら俺が最後だったらしい、皆席に座って待っていた。
「なんか規制とかあるんです?」
俺は席に座りながら質問をする。
「ここに居る皆は一応所属の傭兵登録済んでるから問題ないわよ」
いつの間にか登録されていた。
「話というのは島に基地の他に異世界の方たちの居住エリアがあってね、一応そこまでの護衛をお願いしたいの」
「いいですけど私有地ですよね? そんな護衛なんて必要なんですか?」
「一応よ、前に拉致されてるしゲートだっていつどこに出るか予想できないしね」
そういうことならと俺達は護衛を引き受けることにした、レイカさんはニコッと笑うと話を続ける。
「まずザラタンを港に入港させて民間人を降ろして居住区にウォンバットで向かいますその際にウォンバットの運転手と護衛にレクティスを二機という構成でお願いします」
「誰がどれを担当するか決めといてね! じゃ後はよろしく~」
レイカさんはそう言うと会議室を後にしてしばらく経ちそのまま港へ入港したとアナウンスが流れた。
「バラットさんの機体なんですがMAXモード使用からコアユニットの出力が不安定になることがありますのであまり無茶はしないでくださいね」
民間人と物資輸送のウォンバット3台、それぞれミコ、ゲンジさん、道案内もかねてティアが担当し護衛に俺とレミィがレクティスで出撃することになり今機体の状況をアオイさんに確認しているところだった。
「修理の方は大丈夫ですか?」
ちなみに今回は戦闘も起きないだろうということでパイロットスーツも着用していない。
「関節部が完全にいってたので四肢は全取り換えしましたし先程言いましたコアユニット以外問題なしです」
「了解です」
機体の四肢は換装したということだったが丁寧に前進濃紺色に塗装しなおされていた。アオイさん曰く専用機って感じで目立つしカッコイイじゃないですか! とのことだった。
「レミィ機、準備完了しました」
索敵特化の装備に加え今回はアサルトライフルも装備したレミィ機が港に降り立った、両腕に装備していたドローンコンテナは腰部へと変更し両腕は自由に動かせるようにしてある。
「こっちも準備完了、バラット機出ます」
濃紺のレクティスがザラタンから降りてくる。周りにも警護などのために数機配備されているのだが一機だけ色違いなだけありやはり周囲の視線を感じる。
「では、出発しますね!」
ティアの掛け声を合図にウォンバット三台が並んで走り出す、それを追うように俺とレミィのレクティスが追いかけていくという隊列で出発した。
「とりあえず安定してるし大丈夫そうかな……」
俺は機体の状況を確認しながら追尾していく。今回はスタンダードにアサルトライフル、腰のサイドアーマーにナイフを一本ずつ背部右側に格闘戦用長剣アイゼンシュナイダーを一本、左側には予備弾倉を複数積んだカートリッジコンテナを装備している。これは下部からアームが稼働し左手の元へマガジンを運んでくれる便利ユニットだ。
「センサーにも何もひっかからないですし平和ですね」
「いい天気ですしいいことですな」
「世界が大荒れなんて嘘みたい」
「ここはどこの国にも所属していませんし地図にも載っていない本来存在しないことになってる島ですから外界がどうなっていても影響ないんですよ」
レミィの索敵は信頼できるし雑談しながら進む余裕があった。
「この島結構広いですね、多分東京より大きいです」
「そんな島よく地図から抹消できましたね」
「いろいろあるんです」
こんなに不穏ないろいろを聞いたのは初めてかもしれない。
「そろそろ着きますよ、第一居住区です」
前を向くとそこにはまさに村という雰囲気の場所が広がっていた、ひと昔前の日本に近い木造メインの家が立ち並んでいる。
「ウォンバットの行き来を考慮して広さが確保されているので移動は問題ないと思います、さぁ皆さんを降ろしましょう」
俺達が村に到着すると人々が集まってきた。もちろん皆獣の尻尾や耳を持つ獣人と呼べる人々だ、ただ個体差があるらしく直立歩行する狼のようなほぼ獣の人からティアのように耳や尻尾だけであとは人と変わらない人、どうやら個体差が結構あるらしい。
「獣人の皆さんはここで大丈夫でしょうが、新しいダークエルフの皆様はいかがいたします?」
確かに獣人の方々はここでの生活に解けこめるだろうが文化の違うダークエルフ達は難しい様に感じる。
「ダークエルフの皆さんは第二居住区に移住していただこうという予定です。この奥の密林地帯に場所は確保してあります」
周りは抱き合ったりして喜んでる人たちも居る、拉致された家族だろうか? 無事に戻ってこれてよかった。
「それでは皆さん補給物資をお分けしますので運ぶの手伝ってください」
ティアがそう叫ぶと村の男性陣がやってきて物資を運び始めた。よくよく見ると村に何台かウォンバットがあった、どれもコンテナが開き工房だったり倉庫として利用されているようだった。
「車とかじゃなくて馬や牛なんだな」
ウォンバットはあるが荷物を運んだりするのには台車や牛、馬が使われていて文明の力は動いてる気配がなかった。
「ティアさん、荷物降ろすの手伝いますよ」
俺はライフルを腰にマウントさせ近くに歩いて行き機体を立膝の状態でしゃがませた。
「あ、それでしたらこの荷物を彼らの馬車や牛車に載せてあげてください」
「了解」
俺は荷物を掴み上げ壊さないように順番に載せていく、機体を見るのは初めての人も多いみたいで興味津々で見られていた。
「ターロスみたいデスヨね」
エミリアが呟いた、彼女もミコの隣に乗って一緒に来ていたのだ。
「ターロス?」
「岩の巨人デス、魔法デ操るとても頼りニナルんですヨ」
「ちょっと見てみたいかも」
「条件が揃エバ作れます! 今度機会がアッタラやりまショウ!」
「うん!」
「これで最後です!」
二人が話しているうちにこっちは荷物を降ろす作業を完了した。
「それでは次の目的地へ向かいましょう、急がないと日が暮れてしまいます」
そして俺達は第二居住区を目指して出発した。
「と言っても隣の森になります、ダークエルフの皆様は木を利用して生活をしていたそうなので似た環境をご用意いたしました」
第二居住区へやってきた。そこにはレクティスよりも背が高く太い木が何本も立っていた。
「デカっ……」
「マナの影響とちょっとした魔術で現代の木々より強く育っています」
魔法というのはホント何でもありらしい。
「ではダークエルフの皆様が気に入るか確認してもらいましょう」
そう言うと保護したダークエルフ達を降ろした。彼らは木を見るなり嬉しそうに語りだしている、もちろんなんて言ってるかはわからない。
「大丈夫みたいです、ウォンバットも二台ここに置いて帰ります。いざという時の脱出用兼倉庫として利用できますしね」
「運転大丈夫なんですか?」
「一応希望者に運転は教えてありますので問題ないかと、必要物資だけ降ろしたいのでお願いしてもいいですか?」
「了解」
ティアの指示に従い必要な物資を降ろし、後のことは彼らに任せて基地へ帰ることになった。
「すごいですね、もうこの島だけ地球じゃないみたいでした」
「野生生物も居るんですけどそれも異世界の生物メインになってきてますね」
完全に侵食された島だった。でも草木の成長が異常に早い気がする、これも魔法の効果なのだろうか?
「草木や生物が異常発達成長しているのも魔法の影響です!」
考えてることが完全に読まれた!!
「とりあえず戻りましょ、基地の方も気になるし」
「了解です」
ダークエルフ達の見送りを受けながら俺達は基地へと帰っていくのだった。
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