第27話 薔薇姫の誓い 後日祭

「あ〜! やっぱりここにいたっすね!?」


執務室で隣国の偵察用の地図や班構成などを書いていたセラスタのとこにカルエトが扉を勢いよく開けてセラスタのとこへ大股で歩いた


「ど、どうしたカルエト」

「なんで後日祭参加しないんすか!」


急にカルエトに問われて目を何度か瞬きして机に広げられてる隣国の資料を手に取りながら答えた


「そりゃ最近のジェシュギャットの動きが怪しいんだから……」

「早く行かないとキルトさんが拗ねますよ」


カルエトに言われて資料を床に落として思い出したように慌てて立ち上がった


「後日祭親父さんと行くって話忘れてた!」


カルエトが呆れたようにため息をついてセラスタに服を差し出した


「忘れてると思ったんで服とか用意したっすよ」

「助かる! 流石カルエト!」


カルエトから貰った服を着てすぐに執務室を出ようとしたセラスタの肩を掴んで椅子に座らせた


「その髪で行くつもりっすか?」


セラスタは寝起きで執務室に直行していたらしく髪は寝癖が酷かった

カルエトに言われて寝癖を抑えようと魔法で水を生成したがカルエトが止めた


「2人きりだからって魔法使うの止めてくださいっす せっかくの祭なんすから僕がカッコよくするっすよ」


そう言いながらカルエトが整髪料やくしを使ってセラスタの右側の髪を三つ編みを4本作って後ろに流した

後ろ髪は高くポニーテールにしてポニーテールに三つ編みを混ぜて結んだ


「はい! できたっすよ!」


手際良く髪を結んでカルエトに礼を言ってセラスタは走って執務室から出た

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「お、お待たせしました」


玄関にいたキルトとサミダレに挨拶をした


「おはようございますセラスタ様」

「おはようセラスタ君 私との約束忘れちゃったかと思ってたよ〜」


キルトから言われた言葉に少ししどろもどろになりながら会話をするセラスタが忘れていたと察したサミダレがセラスタの顔をじっと見つめていた


「ちょ、ちょっと服に悩んで……」

「髪もカッコよくしてもらったね〜誰にやってもらったの?」

「カルエトがやってくれました」

「やっぱりカルエト君すごい手先器用だね」


玄関で立ち話をしている2人にサミダレが声をかける


「そろそろ行きますよ」

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「美味しそうなもの沢山あるね〜」


色々な出店を見回しながら早速サンドイッチを買っていた


「このサンドイッチ美味しい!」


買ったサンドイッチをキルトが頬張って目を輝かせてセラスタとサミダレにもサンドイッチを3等分に千切って渡して3人でサンドイッチを食べながら他の出店を見て周った


武器が置いてある出店にあった暗器を見ようとしたら広場で人だかりが出来ていたから広場に向かった


「何の人だかりだ?」


付近にいる人に事情を聞いた

セラスタに話しかけられて驚きながらも知ってる内容を教えてくれた


「俺もあんまり詳しくないんですけど迷子になった庶民の子供が貴族にぶつかったらしくて貴族が怒ってるらしくて」


それを聞いてすぐに移動して人だかりの中心に向かった

中心に近づくほど子供の泣き声と大人の怒号が聞こえてきた


「この聖なる薔薇姫様への祭にお前のような庶民が参加することだけでこの祭が汚れてしまうというのに!」

「どうせこの祭で盗みを働いて自分の私腹を肥やすのでしょう? 卑しい庶民が考えそうなことね」


うずくまって泣きじゃくりながら『ごめんなさい』と言い続ける子供を挟んでいる様子が少し見えてきた


「分を弁えない無能が我々貴族に迷惑をかけるなど死んで償ったほうが良いな」


そう言いながら子供の首に向かって短剣を振り下ろした


「子供相手に何をしようとした」


セラスタが間に割り込んで子供を抱きよせて短剣を弾いた


急に現れたセラスタに驚いたがすぐに媚びるような笑顔を浮かべた


「こ、これはセラスタ様! いつもこの国を守ってくださるお方が……」

「世辞はいらんから答えろ」


話を遮って2人組を睨んだ


「この子供に身分の違いを教えていただけです!」

「私どもは何も悪くありませんわ!」


見苦しい言い訳をする2人の言葉を聞いてため息を付いて立ち上がって背を向けた


セラスタを慌てて引き留めようとした2人に背を向けたまま冷たい声色で言った


「貴族ならどんな者にでも寛大であれ」


セラスタの言葉に押し黙るかと思いきや女性がセラスタの腕を掴んで引き留めた


「何か他に用か?」


セラスタの冷たい視線を見て黙り込んでしまった

セラスタも追及することもなく黙っていたためお互い沈黙の時間が流れた


「少年を罰して欲しいと言うけれど無抵抗の少年に剣を向けた君達の方が罪は重くなると思うよ」


人混みを抜けてきたキルトが沈黙を破った


「それでも少年を罰して欲しいなら両方にそれ相応の罰を与えるよ」


キルトの言葉に口をつぐんで後ろ髪を引かれるように急ぎ足でその場を離れた


「はぁ……親父さんありがとうございます」


ため息をついてキルトに礼を言って少年を連れて広場から離れた

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広場から少し離れた喫茶店でそれぞれ注文をした

セラスタはコーヒーとザッハトルテ

キルトはヌワラエリヤとシフォンケーキ


「君も頼んでいいよ」


キルトに言われて遠慮気味にメニューを見て少年もショートケーキと水を注文した


テーブルに届けられたケーキを見て目を輝かせて一口一口を大事にするように食べた


セラスタ達も美味しそうに食べる少年を微笑ましく思いながらケーキを食べた


「そういえば少年の名前は?」

「レウレット!」


名前を聞いて頭を撫でた


「親が来るまではここでゆっくりしとくか」


しばらくしてサミダレがレウレットの母親を連れてきた


「お兄ちゃん達ばいば〜い!」

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「よし! サミダレもケーキ食べ終わったし後日祭楽しもっか」


キルトが会計を済ませてもう一度後日祭に向かった

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姫は騎士団を作る うるはる @urunto

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