正解を提示されても本能が拒否していた

!~よたみてい書

お日様とスマートフォンはにこにこ笑っているけど

「ようし、今日はあのお店に行ってみようかな!」


 わたしはスマートフォンを片手に、歩道を歩いていった。


 ちなみに、今日は行ったことのない店に行ってみようということで、スマートフォンの地図アプリに備わっている道案内機能を使っている。


 まさに、「異世界はスマートフォンとともに」。


 途中、もっと近道ができるのではないかと、道案内に反抗して自分の勘を頼りにルートから外れた道を歩いてみた。


 結果は目的地までの道が無く、遠回りになってしまった。


「こんな予定じゃなかったんだけどなぁ……」


 実は、ここら辺の地理には詳しくない。

 そもそも初めて来たのだ。


 遭難するかもしれない不安を抱きながら再びスマートフォンの画面をのぞき込む。


 機械はとても優秀だ。

 既に軌道修正された目的地までの道案内が用意されていた。


「テクノロジーは進化していて、便利になってるなぁ」


 視線を画面と前方、交互に向け続けながら歩いていく。


 すると、眼前には車橋くるまばしがあり、路上を何台もの車が通っていた。


 ちなみに、これが車橋という名前なのかは知らない。

 正確な名前は分からないけど、歩道橋の車版みたいなやつ。


 それで車橋には歩道は備わっていない。


「これ、生身の人間が通っていいのかなぁ?」


 地図アプリは目の前の車橋を渡って行けと指示している。


 また、幸運にも車橋の端を老人の男性が歩いていて、一応渡れることは証明していた。


 それでも車との接触の可能性が高く、そもそもこんな狭そうな場所に歩行者が居たら運転手に迷惑だろう。


 BAD-BADの関係だ。


「万が一の事があったらイヤだし、辿ってきた道を戻ろう……」 


 踵を返し、目的地を自宅に変更する。


「今日は、運動の日になっちゃった」


 確かにあの車橋を渡ったら最速で目的のお店につくのだろう。


 だけど、安全性が低いところを通る勇気はわたしには無い。


 せめて、「大丈夫だよ」と言ってくれる誰かと一緒に居れば。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

正解を提示されても本能が拒否していた !~よたみてい書 @kaitemitayo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ