第3話

私の職場で一番仲のいい三枝先輩と要は、大学の先輩と後輩だ。三枝先輩の企画した合コンで、私と要は知り合ったのだ。


「もうすぐ結婚するって聞いたけど」

「ああ、そうそう。婚約してる人がいるの。三枝先輩が結婚しちゃったら、寂しいな」


三枝先輩の寝巻きが私の家に置いてあるくらい仲良くさせてもらっている。


「何言ってんだよ。嬉しいことだろ?喜んでやれよ。それに結婚しても退職しないんだろ?だったら寂しくないだろ」

「それはそうだけど……」


三枝先輩が結婚しちゃったら今までみたいに二人で休日に遊んだり、会社帰りに飲みに行ったりなんてことは、できなくなる。三枝先輩と同期で一番仲の良い大島先輩も、四月にご結婚されてからほとんど遊べなくなった。今でも三人で仲良くしているけれど、それまで三人で遊んでいたのが、二人で遊ぶのが多くなった。


元々、大島先輩はご主人とご結婚前に同棲されていたから、会社終わりに遊べるのは少なかったけど、それでも独身の時より少なくなった。


「男の人と女の人って、やっぱり違うよね」

「まあ、性別が違うっていうのは、大きな違いだな」


要は理論的だからなのか、感情論がうまく伝わらないことがある。


「あ、やべ」


そんな話をしているところで、要の仕事用の携帯が鳴った。ポケットに入っていた携帯を取り出してそれを耳に当てるのを見ながら、私はお口をチャックする。


「もしもし」


呼び出し、かな。


「はい、分かりました。すぐに向かいます」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る