第33話
話は現代に戻る。
『そうねぇー。そんな思い出があったー!』
「うわっびっくりしたー。て、由貴は寝てる!」
美佳子が話に加わっていた。由貴は机に突っ伏して寝ていた。
『誰に話してたのよー。由貴くん、寝てるわよ。あなたの相変わらず長いお喋りで』
「……自分だって長いくせに。はぁ」
互いに話は長い割には人の話は聞かないもの同士の美佳子とコウ。
コウはそっと寝てしまった由貴に毛布をかけてやる。それを見た美佳子は惚れ惚れと見る。
『なんて優しいこと……』
「そうかなぁー」
『もっと好きになっちゃうわー』
コウは苦笑い。すると
「やめとけよ、こんな男と」
と、由貴がむくっと起きた。自分の肩にかかった毛布を自分で巻いた。マフラーのように。
『こんな男って……コウクン、かっこいいもん、普通寝てる人にサラッと毛布かける人いる?』
「……いないなぁ」
『でしょでしょ!』
美佳子と由貴は盛り上がってる。コウは自分のしたことが恥ずかしくなった。顔を真っ赤にして由貴の巻いてある毛布をとってソファーに投げた。
『何するの! 私が褒めたこと台無しじなないー』
と、美佳子は台所に消えていく。
「さてベッドはどこに置く? 部屋もどっちが自分の部屋とか……」
「コウ、美佳子さんに気に入られちまったな、僕ら」
「まぁ嫌われるかよりはいいよな」
「んだんだ」
「料理は彼女にまかせて……と」
というコウの発言に由貴は目を丸くする。
「うわ、またお前幽霊こき使うのか?」
「こき使うわけないだろ。善意があるからそれに乗っからせてもらうだけでさー」
『誰が誰をこき使うって?』
消えたかと思った美佳子がまたやってきた。
「美佳子さん、こいつがあなたのことを!」
「やめろって」
『大丈夫、今はご飯のことは私に任せて。お仕事頑張ってちょうだい! ちなみに私は夜の数時間しか出ないからいつものように冷蔵庫に食材入れて、食器や道具はちゃんと洗っておいてね』
「美佳子さんー、優しい人ーっ! こんな人がコウのこと好きだなんて」
由貴は僻むと、美佳子が彼の頬にキスをした。
『ふふふ、私もイケメンにご飯を作ってあげられるだけで嬉しいわ』
「美佳子さん……」
『仲良くしましょうね、由貴くん!』
「はぁい!」
美佳子と由貴がわいわいと盛り上がっている姿を見てコウはふふっと笑った。数ヶ月前は死んだような顔をしてまさしく今すぐに飛んで死ぬ前だった由貴が笑っている。それだけでもコウは嬉しいのだ。
だがコウはふと何か異変を感じた。それは玄関近くの部屋から何かを感じとる。気のせい? いや気のせいでない、と1人部屋に進む。
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