ラブラブで甘々な昼休み

「祥雲さん、俺に何か用?」

「いや、ちょっと義妹さんを見てみたかっただけ。可愛いね。じゃ、教室で」


 笑顔で去っていく祥雲。

 なんだ、挨拶だけか。

 本当に夢香を見たかっただけなのか。う~ん……。

 腕を組んでいると、夢香が腕を引っ張ってきた。


「お兄ちゃん、あの人……誰」

「同じクラスの女子だよ。隣の席なんだ」

「えっ……そうなの。まさか、仲良いの?」


 不安気な……いや、今にも泣き出しそうな眼差しを向けられ、俺は焦った。まずい。


「そんなわけないだろ。隣の席ってだけだ」

「うぅ……あんな美女が隣の席って不安すぎる」


「大丈夫だって。ただのクラスメイトだから」

「本当に本当に……?」

「本当に本当に」


「う~ん……浮気したらイヤだからね」


 う、浮気って……。

 でも、そうだな。夢香を不安にさせるわけにもいかない。俺は夢香の頬に触れて優しく撫でた。


 気持ち良さそうに目を細め、受け入れてくれる夢香は元気を出した。


「これで信じてくれるか」

「……分かった。絶対だからね!」


 手を振って別れ、それぞれの教室へ。



 * * *



 教室内へ入り、いつもの席へ着席すると――同時に、祥雲が視線を送ってきた。



「平田くん」

「なんだい、祥雲さん」

「今日は全学年でマラソンがある日だよ~」

「え、そんなイベントあったっけ」


「うん、ウチの高校は一年に一度あるんだよね。忘れたの?」



 マジか。すっかり忘れていた。

 普段の生活プライベートが楽しすぎるせいだな。まあ、適当に走って最下位でも狙えばいいだろ。俺に上位を狙うメリットなんてないし。



「祥雲さんは一位でも狙うのかい?」

「まあね。陸上部だから」


「へえ、そうだったのか。がんばって、応援してる」

「うん、ありがと。午後からだから頑張ろうね」



 白い歯を見せて笑う祥雲は可愛かった。なんだろう、太陽のようにまぶしいな。



 ――時間は流れ、昼休憩。



 俺はいつものように夢香と合流を果たす。ふぅ……今日は小鳥遊の姿はなさそうだ。



「どうしたの、お兄ちゃん」

「いや、それより屋上は……やめておくか。たまには別の場所にしよう」

「そうだね、また小鳥遊って人が来るかもだし」



 俺の腕にしがみついてくる夢香を連れ、廊下の隅にある非常階段を目指した。あそこなら人なんてほとんどいないからな。


 扉を開け、非常階段に腰を下ろす。


 風が心地よい。

 夢香も隣に座って俺の首に腕を回してくる。


「お、おい。夢香……大胆すぎるって」

「だって寂しかったんだもん。お兄ちゃん、好きだよぉ」


「まったく、甘えん坊なんだから。……あぁ、そういえば午後から全学年でマラソンらしい」


「あー、あったね。お兄ちゃんと一緒に走ろうかな」

「いいね。最後尾でまったり走ろう」

「でも、三十位以内に入れると賞品が出るってさ」

「なぬ!?」


 詳細を聞くと、どうやら賞品としてアマドンギフト券が進呈されるらしい。貧乏人にとって、ありがたすぎる収入ではないか!


 てか、貰えるなんて知らなかったぞ。


 がんばるしか……ないかも。

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